表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/375

真夜中の姉 1

車を走らせ、俺たちはとある焼き鳥屋に来ていた。

カウンター席になっていて、理子姉、俺、マネージャーさんの順に座る。

「かわたれ10本ください」

「あいよ」

店の奥からは力強い女の人の声が聞こえてきた。

理子姉は待ち時間の間、マネージャーさんに話しかける。

「なぎさ。この子が私の弟の将君だよ」

「将さんですか? 結構カッコイイ方で」

「そうなんだー。私の自慢の弟なの」

今まで石像の様に動かなかったマネージャーさんが理子姉と会話を始めた。

それも、すごく軽い感じに。あれ、マネージャーさんって前に理子姉のライブに行った時、かなり真面目な方じゃなかった?

「かっこいい弟でうらやましい限りです」

「みんなからブラコンって言われても仕方ないんだよね」

奥から赤髪長髪の女性が現れた。

さっきマネージャーさんが頼んだかわたれと、ビールの中ジョッキを一本。

「持って来たよ。……あれ、お客さん会うの初めてだね」

「あ、どうも。姉がいつも世話になっているようで」

「理子の弟かぁ。かわ好きかい?」

「はい」

俺がそう答えると、赤髪のお姉さんは何か理解したかのように笑う。

「じゃあうちのアレもきっと好きだろうね。理子、出すかい?」

「お願いしておくね」

「あいよ」

そう言ってお姉さんは店の奥へとまた引き返していった。

理子姉は俺の左ひじを小突いてくる。

「えへへ……そんなにあの店員さんが可愛かったんだ」

理子姉、顔が真っ赤に。てかもう酔ってるし。

い、いや、別にその、可愛いわけじゃないんだけど……ないんだけどね。

赤髪がふと脳裏に蘇り、ついぼーっとしてしまう。

「ほら、うちの特製チーズにぎりだよ」

「あ、ありがとうございます!」

右隣でマネージャーさんも受け取り、一緒ににぎりを一口食べる。

口の中にご飯のうまみとチーズの濃厚さが広がった。

「おぉ、うまい」

「どうやって作ってるんですか?」

マネージャーさんの問いに店員さんは胸を張って答えた。

「特製のたれおにぎりの周りにチーズを巻くんだ。その後焼けばいい」

「勉強になりました」

左隣で理子姉は、既にぐったりと潰れていた。疲れているのだろう。

かわたれを一口食べながら、俺はマネージャーさんたちと会話をする。

「ところで、お名前は?」

「私は上村なぎさ。理子のマネージャーをやってるの」

真面目で固い人かと思っていたら、意外にそうでもなかったな。

それを察知したのか、なぎささんは俺に言う。

「この店はよく来るの。いつもはピリピリしてるけど、ここならゆっくり出来るから」

「そう言ってもらえて嬉しいよ」

店員さんはなぎささんにそう言った後、俺のほうを向いて言った。

「私の名前は本堂千秋。ここで焼き鳥屋をやってるんだ」

「焼き鳥屋って珍しいんですね」

「ああ。仕事帰りのサラリーマンはよく来るけどな」

千秋さんってなんか男勝りの所があるかもな。カッコイイし頼りになる。

つい、彼女の赤髪にも惹かれてしまう。

「……どうした? ぼーっとしているが」

「あ、すいません」

右隣のなぎささんは、そんな俺の様子を見てくすくすを笑っている。

相変わらず左の理子姉は潰れたままだが。

「将さん。姉は大切にしてやってくださいね」

「は、はい」

「理子はうちのお得意様だからな。何かあったら来るといい」

「わかりました」

かわたれは全部なくなり、なぎささんがお金を支払って俺たちは出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ