『温泉街の休息と、見えない刺客』
読んでいただきありがとうございます!
前回、ルールの暴走によって心身ともにボロボロになったアルス一行。
今回は、一行が辿り着いた「霧の温泉街」での休息回です。
筋肉を癒やすアルス、相変わらずの猫舌クライ、そして女子陣の意外な交流。
束の間の平和を楽しむ彼らに、忍び寄る「透明な殺意」とは……。
[ 舞台:湯煙が立ち込める露天風呂。男湯ではアルスとクライが浸かっている ]
(アルス)
「……ふぅ。……生き返るな」
(クライ)
「ですねぇ……。ルールの実験で全身バキバキでしたが、このお湯、筋肉痛によく効きます。……あ、あちっ! アルス殿、このお湯の温度、私には殺人的ですっ!」
(アルス)
「……ただの適温だ。いいから肩まで浸かれ」
[ 湯船の隅で、クライが氷魔法で自分の周囲だけ温度を下げようとして、アルスに怒られている。一方、壁を隔てた女湯では―― ]
(ルール)
(「ほほう……シール、あなたのその腹筋、素晴らしい密度ですわ。やはり実戦で鍛えられた肉体は、理論値以上の美しさがありますわね」)
(シール)
「……やめろよ、ジロジロ見るなって。あんたこそ、意外と……その、出るとこ出てるじゃないか」
(ルール)
(「おーっほっほ! 知識も栄養も、蓄えるべき場所には蓄えてありますのよ!」)
[ 賑やかな声を聞きながら、アルスは湯船の縁に頭を預けた。孤独だったはずの旅が、今ではこの騒がしさが心地よく感じられる。……だが、その静寂は一瞬で切り裂かれた ]
(アルス)
「……っ!? クライ、出ろ!!」
[ アルスがクライの首根っこを掴んで湯船から飛び出す。直後、彼らがいた場所の湯面が、何者かの斬撃によって真っ二つに割れた ]
(クライ)
「ひゃあぁっ!? な、何ですか今の!?」
(アルス)
「姿は見えないが……殺気がある。……ルール、シール! 警戒しろ、敵だ!!」
[ 湯煙の中から、空気の歪みだけが高速で移動してくる。姿なき暗殺者――魔王軍幹部が放った「透明な刺客」だった ]
(シール)
「――させないよ!!」
[ 湯浴み着のまま飛び出してきたシールが、空中を舞う。彼女の勘が、姿なき敵の「風の動き」を読み取った。投げナイフが空中の何もない場所で火花を散らす ]
(ルール)
(「姿が見えないなら、見えるようにすればいいだけのことですわ! アルス、霧を媒体に私の魔力を拡散させなさいな!」)
(アルス)
「……ああ! 踊らなくていいなら、いくらでも貸してやる!」
[ アルスの筋肉から放たれた微弱な天雷が、ルールの魔法で温泉の霧に伝播する。霧全体が青白く帯電し、そこに「人型の空白」がくっきりと浮かび上がった ]
(クライ)
「見えました! ……そこですね! 『絶対零度の氷牢』!!」
[ 逃げ場を失った刺客の足元が瞬時に凍りつく。姿を現したのは、魔王軍の斥候隊長だった ]
(アルス)
「……俺たちの休息を邪魔した罪、高くつくぞ」
[ 聖剣の柄を叩きつけ、刺客を気絶させるアルス。騒動が収まった後、彼らは確信した。魔王軍が、本格的に自分たちを「脅威」として認識し始めたことを ]
第9話、サービス回と見せかけての襲撃回でした!
女湯でのシールとルールのやり取り、そして男湯での「掴み出し」など、仲が良いからこその連携が描けたかなと思います。
姿なき敵を「雷と霧」で暴く連携は、このパーティーならではの戦い方ですね。
次回、第10話「魔王軍四天王、影の支配者ゼノ」。
いよいよ物語は中盤戦へ! 最初の巨大な壁が、彼らの前に立ち塞がります。
PVも順調に伸びていて嬉しいです!
この4人の珍道中を、ぜひ最後まで見届けてください!




