『シールの傷、過去から届く毒』
読んでいただきありがとうございます!
前回、クライの意外な実力でピンチを脱した一行。
今回は、一行の「影」として道を切り開いてきた盗賊シールの物語です。
彼女がひた隠しにしてきた「体の傷」の正体、
そして彼女を縛り付ける過去の亡霊が姿を現します。
[ 舞台:月明かりに照らされた、崩れかけの孤児院の裏庭 ]
シールは一人、古びた石碑の前に立っていた。
その背中は、いつもの鋭さを欠き、どこか小さく見えた。
(アルス)
「……こんなところで何をしている」
(シール)
「っ!? ……なんだ、アルスか。驚かせないでよ」
シールは慌てて、捲り上がっていた袖を下げた。
だが、俺の目は誤魔化せない。月光に晒された彼女の細い腕には、赤黒く腫れ上がった「呪印」のような傷跡が脈打っていた。
(アルス)
「その傷……ただの切り傷じゃないな。魔王軍の『腐食毒』か?」
(シール)
「……気づいてたんだ。流石は脳筋、観察力だけはあるね。……そうだよ。アタシが昔いた盗賊団を抜ける時、裏切りの代償として植え付けられた『呪い』さ」
シールは自嘲気味に笑った。
彼女が毒を操り、毒に詳しいのは、自分自身が毒に蝕まれ続けているからだった。
(シール)
「この毒が回れば、アタシの心臓は止まる。……だからさ、あんたたちと馴れ合うつもりなんてなかったんだ。どうせ、いつか置いていくことになるんだから」
(???)
「――その通りだ。死に損ないのドブネズミが、随分と楽しそうじゃないか」
[ 木々の隙間から、黒い装束に身を包んだ暗殺者たちが現れる ]
(暗殺者)
「シール、お前の心臓に植えた毒を、今ここで起動させてやる。それが組織を抜けた報いだ」
暗殺者が複雑な印を組むと、シールの腕の傷が激しく発光し、彼女はその場に崩れ落ちた。
(シール)
「がっ……あ、あああああっ!!」
(アルス)
「シール!!」
(ルール)
「待ちなさい、アルス! 下手に触れてはダメですわ! その毒は、触れた者の魔力さえも吸収して増殖する、魔導式の猛毒ですのよ!」
ルールの警告に、俺は足を止めた。
だが、俺の背後から、静かな、しかし確固たる足音が響いた。
(クライ)
「……魔導式、ですか。なら、私の出番ですね」
(シール)
「ク、クライ……逃げろ……あんたの魔法じゃ、この毒は……」
(クライ)
「言ったはずですよ、シールさん。熱いのは苦手なんです。……あなたのその苦しみ(熱)も、私が全て凍らせてみせます」
[ クライがシールの腕に、素手で触れる ]
(クライ)
(『極北の静寂よ、荒ぶる命動を鎮めたまえ。――絶対零度の鎮魂歌』!!)
光が溢れる。
シールの腕から吹き出そうとしていた黒い毒が、クライの冷却魔法によって一瞬で「結晶」へと変わり、砕け散った。
(暗殺者)
「な……バカな! 組織秘伝の呪毒を、ただの冷却魔法で無効化しただと!?」
(アルス)
「……悪いな。うちの神官は、冷ますことに関しては世界一なんだ」
俺は聖剣を引き抜いた。
右腕に宿る青い雷が、怒りに応えて激しく爆ぜる。
(アルス)
「シールの過去を、これ以上汚させはしない。――消えろ」
[ アルスが地を蹴り、一瞬で暗殺者たちの群れを雷光が飲み込む ]
戦いが終わった後、シールは腕の傷が消えた場所を、信じられない様子で見つめていた。
(シール)
「……消えた。アタシをずっと縛ってた、あの痛みが……」
(クライ)
「あ、あの、シールさん。ちょっと冷やしすぎたかもしれません。今度はスープでも飲んで、温まってくださいね。……もちろん、私の分はフーフーしてからですけど!」
(シール)
「……ぷっ。あはは! あんた、本当に変な奴」
シールが初めて、心から笑った。
孤独を強がっていた少女の心に、新しい「居場所」が刻まれた瞬間だった。
第7話、シールのトラウマ克服回でした!
アルスの圧倒的な力と、クライの「冷ます」技術の合わせ技。
少しずつ、四人が「なくてはならない存在」になっていくのを感じていただければ幸いです。
ちなみにシール、呪いが解けた反動で、実はちょっとだけ「アルスに甘えたい」欲求が出始めていたりいなかったり……。
次回、第8話「ルール、禁断の魔導実験」。
ついにルールの「魔法バカ」っぷりが限界を突破し、一行はとんでもない騒動に巻き込まれます!
PV数がどこまで伸びるか、ワクワクが止まりません。
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