『猫舌神官の聖域(ヒール)』
読んでいただきありがとうございます!
前回、アルスが「天雷」の力を手に入れましたが、今回はパーティーの癒やし手・クライの物語です。
「ただの弱気な猫舌男じゃないのか?」
そんな読者の皆様の予想を、いい意味で裏切るクライの勇姿をぜひご覧ください!
[ 舞台:遺跡の崩落現場。大量のガーディアンの残骸と、立ち込める土煙 ]
(シール)
「くっ、多すぎる! 倒しても倒してもキリがないよ!」
(アルス)
「……ハァ、ハァ……。天雷を使いすぎた。腕の感覚が……」
遺跡の防衛機能は、アルスの放った天雷に反応し、さらなる「排除」を開始していた。
アルスは右腕の筋肉を酷使しすぎて剣が握れず、シールも投げナイフを使い果たしている。
(ルール)
(計算外ですわ……! 私の魔力も、この空間の干渉で霧散させられて……!)
絶体絶命。
魔石の光を宿した無機質な石像たちが、動けないアルスたちへと迫る。
その時、震える足で一歩前に出たのは、これまで最後尾に隠れていたクライだった。
(クライ)
「……皆さん、下がってください。ここからは、私の仕事です」
(シール)
「馬鹿言え、クライ! あんたなんかが前に出たら、一瞬で粉々にされるぞ!」
(クライ)
「……確かに、私は怖がりです。スープの熱さにさえ怯える臆病者です。ですが……」
クライが古びた杖を掲げる。
その瞬間、彼の周囲に、これまで見たこともないほど濃密で清浄な光が溢れ出した。
(クライ)
(『天の御許に集いし光よ。熱を厭い、冷たさを慈しみ、等しく平穏を与えたまえ。――冷厳なる聖域』!!)
[ クライを中心に、青白いドーム状の結界が展開される ]
襲いかかった石像たちが結界に触れた瞬間、その動きがピタリと止まる。
いや、石像内部の魔力供給源が「冷却」され、強制的に停止させられたのだ。
(ルール)
(……まさか! あらゆる事象の『熱』を奪い、沈黙させる最上位の封印結界!? クライ、あなたほどの魔力操作をどこで……!)
(クライ)
「……ハァ、ハァ……。熱いのは、苦手なんです。だから、敵も、空気も、魔力も……全部冷えてもらいました」
(アルス)
「……ふん。徹底してるな」
(クライ)
「アルス殿……。さあ、今です。私の結界が敵を止めている間に、その腕を癒やします!」
クライの放つヒールは、驚くほど冷たく、そして心地よかった。
酷使されたアルスの筋肉がみるみるうちに再生し、聖剣が再び青い火花を散らし始める。
(シール)
「……あんた、意外とやるじゃない」
(クライ)
「えへへ。でも、冷たいスープくらいしか作れない神官ですから。……あ、アルス殿、早く倒しちゃってください! 結界を維持するの、結構疲れるんですっ!」
(アルス)
「ああ。……待たせたな」
勇者の雷と、神官の冷徹な聖域。
正反対の二つの力が重なり、遺跡に溜まった闇を一気に吹き飛ばした。
第6話、クライの意外な実力が明らかになりました!
「猫舌だから熱いのが嫌い」という設定が、まさかの「冷却・封印系魔法のスペシャリスト」に繋がるというギャップ、いかがだったでしょうか。
これでパーティーの安定感は抜群になりましたね。
次回、第7話「シールの傷、過去から届く毒」。
いよいよ盗賊シールの「体に刻まれた傷」の謎と、彼女を追う暗殺組織が姿を現します。
多数のPV、本当に励みになっています。
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