表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/26

『盗賊は、毒と愛を天秤にかける』

読んでいただきありがとうございます!


前回、無理やり(?)旅の仲間に加わった猫舌神官・クライ。

今回は、魔王軍の検問所を舞台に、影のように鋭い「あの子」が牙を剥きます。

不器用な彼女が抱える「孤独」とは……。


「……おい、クライ。いつまで熱がっている。出発するぞ」


(クライ)

「あうぅ、待ってくださいアルス殿。先ほどの朝食のスープが、まだ舌の奥で暴れていまして……」


クライが半泣きで舌をパタパタさせている間に、俺たちは『鉄の城壁街』の検問所に差し掛かっていた。

ここを抜けなければ魔王の城へは近づけない。だが、門を固めるのは重装歩兵の小隊だ。


(アルス)

「真正面から斬り伏せるのは手間だな……」


(クライ)

「アルス殿、無茶はいけません。何か、音を立てずに潜り込む方法は……」


その時だった。

俺たちの頭上、検問所の屋根を「影」が走った。

風さえ切らぬ密やかな動き。その影は、警備の兵士が欠伸をした一瞬の隙を突き、腰に下げられた鍵束を魔法のような手捌きで抜き取った。


(アルス)

「……! あの動き、ただの人間じゃないな」


俺たちは吸い寄せられるように、その影を追って路地裏へと足を踏み入れた。

そこで見たのは、数人の兵士に囲まれ、袋を背負って短剣を構える一人の女だった。


(兵士)

「観念しろ、ドブネズミめ。盗んだ食料を返せば、楽に殺してやる」


(???)

「……けっ。誰が返すかよ。これは、あんたらが民衆から巻き上げたもんだろうが」


女の声は低く、そして鋭かった。

しかめっ面で、身体中には戦い抜いてきた証のような細かな傷跡が刻まれている。

兵士が槍を突き出した瞬間、俺は聖剣を引き抜いた。


(アルス)

「――そこまでだ」


一閃。槍の穂先を叩き折り、俺は女の前に立った。

慌てふためく兵士たちをクライの神聖魔法(目眩まし)が包み込み、俺たちはその隙に女の手を引いて暗がりに逃げ込んだ。


(???)

「……離せよ! 恩に着せようってんなら、お門違いだ!」


安全な場所まで逃げ延びると、女は俺の手を振り払い、鋭い眼光を向けてきた。


(クライ)

「そんな、私たちはただ助けたくて……。あ、お怪我はありませんか?」


(???)

「……フン、お節介な神官様だね。アタシはシール。見ての通り、闇を歩く盗賊さ」


シールと名乗った女は、背負っていた袋の中身――わずかな干し肉とパン――を愛おしそうに整えた。

それが、孤児院の子供たちのためのものだと気づくのに、時間はかからなかった。


(アルス)

「その傷、魔王軍とやり合ったのか?」


(シール)

「……ああ。誰にも頼らず生きていくには、これくらいの代償は必要だろう? あんたみたいな、立派な聖剣を持った『勇者様』には分からないだろうけどさ」


シールの言葉には、棘があった。

だが、その瞳の奥には、クライと同じ「守りたいもの」への執着が見えた。


(アルス)

「……シール、と言ったか。俺たちと一緒に来い。お前の『闇を歩く技術』と、その覚悟が必要だ」


(シール)

「はあ!? なんでアタシが、こんな暑苦しい筋肉ダルマと、スープもまともに飲めないヘタレ神官と組まなきゃならないんだよ!」


(クライ)

「ヘ、ヘタレ!? ……否定はできませんが、シールさん。あなたの毒の知識や、街の裏路地を知る力があれば、救える命がもっと増えるはずです」


(シール)

「……チッ。勝手なこと言いやがって」


シールはそっぽを向いたが、その耳はわずかに赤くなっていた。

これまで、奪い奪われる世界で生きてきた彼女にとって、「必要だ」と言われることは、何よりも甘い毒のような誘惑だったのかもしれない。


(シール)

「……いいだろう。アンタらがアタシを裏切らない限りは、その背中を守ってやるよ。その代わり、報酬は高いからね!」


(アルス)

「ああ。……よろしく、シール」


こうして、俺の旅は三人になった。

筋肉と、猫舌と、毒舌。

一歩進むたびに騒がしくなるこの旅が、俺の「孤独」を少しずつ削り取っていく。


三人目の仲間、シールが加入しました!

しかめっ面で不器用な彼女ですが、これからクライとの「スープ冷まし攻防戦」が始まります(笑)


ちなみにシール、実は腹筋が綺麗に割れているのが自慢だったりします。

アルスの筋肉とはまた違う、しなやかな「戦う肉体」にご注目ください!


次回、第4話「常人を超越した探求者、魔法使いルール」。

いよいよ最後の仲間、自称「魔法バカ」の少女が登場です。

少しでも面白いと思って頂けたら、評価やブックマークを頂けると嬉しいです!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ