【孤独な筋肉と、古びた聖剣】
数ある作品の中から目にとめていただき、ありがとうございます!
この物語は、過去に絶望し「一人で強くなること」だけを信じてきた脳筋勇者が、
驚くほど個性的な仲間たちと出会い、
「誰かを愛する強さ」を知っていく物語です。
王道だけど新しい、熱いファンタジーをお届けします!
世界が闇に沈んで、どれほどの時が流れたのだろうか。
魔王ガデムの支配下にあるこの世界では、空は常に煤けた色をし、人々は希望という言葉を忘れていた。
[ 舞台:霧に包まれた辺境の村・フィニス。燃え盛る家々を背景に、十五歳のアルスが剣を握りしめている ]
「……力が、足りなかった」
十五の春。俺の視界は、真っ赤な炎と、もっと赤い両親の血で染まっていた。
目の前に立ちふさがる魔物の咆哮。握った剣は震え、俺はただ立ち尽くすことしかできなかった。
守りたかった。
父さんの笑顔も、母さんの温もりも。
だが、俺には何もなかった。魔物を打ち倒す力も、奇跡を起こす魔法も。
[ 場面転換:数年後。朝靄の中、丸太のような大剣を振るうアルスの背中。隆々とした筋肉が汗で光る ]
(アルス)
「九百……九十八。九百……九十九。……千!」
振り抜いた大剣の風圧だけで、周囲の木々がザワリと揺れる。
俺の肉体は、あの日以来、鋼のように鍛え上げられた。身長178cm、体重86kg。余分な脂肪など一切ない、戦うためだけに練り上げられた筋肉の塊だ。
(ゼノン老師)
「……まだやるか、アルス。お前の剣は、もう村を守るには十分すぎるほどだ」
片腕の老剣士、ゼノンが呆れたように声をかけてくる。かつて王国騎士団にいたという、俺の師匠だ。
(アルス)
「足りないんだ、老師。村を守るだけじゃ、世界は変わらない。魔王ガデムがいる限り、どこかでまた、俺のような子供が生まれる」
(ゼノン老師)
「……お前の剣は硬い。だが、硬すぎる。折れぬためには、しなやかさも必要なのだがな。……おまけに、お前は魔法がさっぱりだ。少しは魔力操作の訓練もせんか」
(アルス)
「魔法なんて関係ない。この筋肉と、剣一本あれば十分だ」
そう、俺には致命的な欠点がある。魔法への適性がゼロ……いや、マイナスだ。
魔力回路を動かそうとするだけで、全身が拒絶反応を起こして激痛が走る。
人々が「勇者」に期待するような派手な光の魔法なんて、俺には一生縁がない。
[ アルス、村の奥に祀られていた「古びた聖剣」を手に取る ]
(ゼノン老師)
「その剣を持っていくか。……伝説の勇者が使ったと言われているが、今は魔力も通わぬ、ただの重い鉄塊だぞ」
(アルス)
「重い方が、俺には合ってる」
鞘に収めた聖剣を背負う。ずしりとした重みが、今の俺には心地よかった。
[ その夜、アルスは誰にも告げず、村の門に立つ ]
(アルス)
「……行くか」
孤独。
それが俺の武器だ。守るべきものがなければ、失う恐怖もない。
あの日、心に負った傷は、誰にも触れさせない。
俺は一人で魔王を討つ。
仲間の助けなんていらない。愛なんて、剣筋を鈍らせるだけだ。
――この時の俺は、まだ知らなかった。
この「重すぎる聖剣」が、ある『猫舌の神官』と出会うことで、とんでもない熱を帯び始めることを。
[ 荒野へと続く一本道を、アルスが一人歩き出す ]
最後まで読んでいただきありがとうございます!
孤独な勇者アルスの旅が始まりました。
彼は「愛なんていらない」なんて言っていますが、果たしてどうなることか……(笑)
次回、第2話「最強の神官は、驚くほどの猫舌でした」。
いよいよ一人目の仲間が登場します!
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