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13 徹夜

「国立図書館の正式な開館日までに、このリストの、ここからここにある本を城内に全て運びこむように。緊急で」

「本を?」

 侍従達が首を傾げつつも、それでもいつものように足早に立ち去っていく。

「政務がぎりぎりで滞らないようにせねばなりませんが、つまりは徹夜ということです」

「懐かしい。学生だった時以来か」

 王と宰相が顔を見合わせる。

「開館までには、本を返却してやらねば」

「目録を作っておいて正解でしたな」

 二人が同時に、長いリストを見て息を吐く。

「私は、海の国には何かしらの答えがあるのではと見ている」

「なるほど」

「そして、海の国へ行くのなら、挨拶をせねばならぬ。末の姫を妃に迎え入れる故にな。海にも王がいるとは言うが………」

 ハミシエのこれまでの言動の節々から察するに、

「しかしながら、友好的かどうかはわからない」

 アルバートが大きく息を吐いた。

「200年の間、末の娘であるハミシエを王宮にも呼ばなかったという」

 ガエターノが少し首を傾げて何やら考え込む。

「理由は?」

「よくはわからないが……黒い鱗に黒い髪の人魚は珍しい。呪わしい、と形容されるほどに。ハミシエを生んだとき母后も亡くなったという。ゆえに、200年もの間、彼女は孤独だった。誰からも、顧みられることもなかったという」

 あれほどまでに美しいのに、幸せになるのを何故か躊躇する、どこか自信のなさげな素振りは、本心でしかなかったわけだ、とガエターノが息を吐く。

「200年、ですか。人魚はやはり長命ですな。100人もの子をもうけた王となれば、もはや人の倫理など通用しない相手かもしれません」

 本が次々と運び込まれ、ガエターノがその1冊を手にしながら呟く。

「しかし、人魚のままでは妃にはできません。残念ながらそれも事実」

「………然り。わかっている」

「私に真っ先に相談してくれたことを感謝していますよ。あなたは心に一度決めた女性の他には妾や恋人など持てぬ性格なのは我々とて重々承知しておりますゆえ」

「そうだな。………色々考えたが、どれも駄目だった。彼女で、なければ」

 嘘偽りを何よりも不得手とする実直な王が、息を吐いた。

「国民は、己の国王が人ならぬ存在にこうも懸想してることなど、知らぬほうがよかろう」

「懸想、ですか。羨ましい。私もそろそろ嫁取りに本腰を上げましょうかね………」

「早く孫の顔を見せてくれ」

「それはこっちの台詞ですよ。ああ、ですが、いまのうちに城内に託児所を設けませんか」

「良い案だ。後ほど速やかに稟議書を出すように」

 運びこまれてくる本に二人でそれぞれ目を落とし、ほぼ同時に手元のランプに火を灯す。日が傾き、鐘が鳴る。アルバートが窓の外に視線を投げた。

「今日は会いに行ってやれなかった」

「毎日会えるように、今こうしているのです。マリーが代わりに色々取り計らってくれていますよ」

「有難いことだ。今夜は頑張るとしよう」

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