表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

『魔王封印の秘密』~その後~

 

 封魔祭の日が再び訪れた。かつての英雄たちの子孫が、荷馬車に揺られながら封印の地へと向かっていた。


「まったく、俺たちがいなければ世界は終わると言うのに」


 賢者の子孫が尊大に言い放つ。その横では、肥満体の魔法使いの子孫が汗を拭きながら頷き、高飛車な態度の僧侶の子孫が鏡で化粧を直していた。


 彼らを取り巻く従者たちは、まるで王族の行列のように威厳に満ちていた。しかし、その実態は...


 封印の地に到着すると、三人は儀式の準備を始めた。


「三人の名のもとに」


 彼らは声を揃えて唱え、微量の魔力を祭壇に注いだ。周囲の人々は、その姿に畏敬の念を抱いているようだった。


 儀式が終わると、街は祭りの雰囲気に包まれた。


「そこのあなた、賢者の護符はいかが」


 商人が怪しげな紙切れを売っている。人々は争うようにそれを買い求めていた。


 世界は平和だった。少なくとも、表面上は。


 しかし、封印の奥深くでは、何かが蠢いていた。


 魔王の力は、確かに弱まっていた。しかし、長い年月の間に少しずつ外へと漏れ出していた。


 そして、その力は知らず知らずのうちに、人々の心の中に潜り込んでいた。


 かつての英雄たちが予想していなかったことが、静かに、しかし確実に現実となりつつあった。


 人々は平和を謳歌していた。だが、その平和の陰で、新たな闇が芽生えつつあったのだ。


 魔王は封印されたままだった。しかし、その魔力は世界中に広がり、人々の心の中で静かに成長を続けていた。


 真の脅威は、もはや封印の中にはなかった。それは、平和を享受する人々の心の中に潜んでいたのである。


 人類史上最大の欺瞞は、こうして次の段階へと突入していった。


  そして、ある日—


 魔王の封印は破られた。しかし、それは外からではなく、内側から。人々の心の中に潜んでいた闇が、ついに形となって現れたのだ。


 世界は、かつてない混沌へと突入していく。


 欺瞞の上に築かれた平和は、もろくも崩れ去った。


 人類は、自らの過ちと向き合う時を迎えたのである。


 だれかの夢の中で、一つの声が響いた。


「愚かな者どもよ。お前たちの虚栄と欺瞞が、この世界を滅ぼすのだ」


 世界に奇妙な病が蔓延し始めた。人々の体に不可解な異常が現れ、医者たちも原因を特定できずにいた。


 王や貴族たちは、伝説の英雄の子孫たちに助けを求めた。しかし...


「医者に言え!」


 肥満体の魔法使いの子孫が、いらだちを隠さずに言い放った。


「そうよ。私たちは魔王を封じる者であって、医者じゃないわ」


 高飛車な僧侶の子孫が、鼻で笑いながら続けた。


「我々にはもっと重要な仕事がある。病人の世話などしている暇はない」


 高圧的な賢者の子孫が、最後に釘を刺した。


 彼らは、自分たちの無力さを隠すために、尊大な態度を取り続けた。しかし、その目には不安の色が宿っていた。


 真実を知る者は誰もいなかった。この病が、長年にわたって少しずつ漏れ出ていた魔王の力によるものだとは。


 人々の体内に蓄積された魔力が、今になって異常をもたらし始めていたのだ。


 街では、魔王封印の儀式を疑問視する声も上がり始めていた。


「本当に魔王は封印されているのか?」

「あの三人は本当に我々を守っているのか?」


 不安と不信が渦巻く中、魔王の力は着実に強まっていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ