『魔王封印の秘密』
暗い地下室に、魔王の封印が完了した瞬間の重苦しい静寂が満ちていた。
魔法使いの俺は、安堵の溜息をつきながら言った。
「これで平和が訪れるな」
僧侶は静かに頷いた。
「そうね」
しかし、賢者は沈黙を貫いていた。その表情には、何か言い難いものが浮かんでいた。
「どうした?」俺は不安を感じ始めた。
「もしかしてこの封印はあと何年かすれば破られる...」
賢者は首を横に振った。
「これは魔王の魔力で維持してるから大丈夫」
僧侶が付け加えた。
「私と魔法使いはただ発動する魔力をあなたに与えただけ。あなたがこの封印を一番よく知っている」
俺は混乱した。
「なら、どうして?」
賢者の目に、決意の色が宿った。
「魔王の封印は定期的に我々の魔力を注ぎ込まないといけないってことにするのはどうだろう」
その言葉に、俺と僧侶は凍りついた。
賢者は続けた。
「平和な世界...それは幻想だ。人々は常に脅威を必要としている。魔王という共通の敵がいなくなれば、彼らは互いを敵とし始めるだろう」
俺は怒りに震えた。
「冗談じゃない!俺たちが戦ってきたのは、そんなことのためじゃない!」
賢者の目は悲しみに満ちていた。
「わかっている。だが、これが世界を守る唯一の方法なんだ」
僧侶は涙を堪えながら言った。
「私たちは...英雄から詐欺師になるのね」
賢者は静かに頷いた。
「そうだ。世界の平和のために、我々は闇に堕ちる」
俺たちは互いを見つめ合った。そこには苦悩と決意が交錯していた。
魔王は封印された。しかし、その代償は予想以上に重かった。世界の平和を守るため、俺たちは永遠に罪を背負う運命となったのだ。
地下室を出る時、俺たちの足取りは重かった。
これが最後の任務。あるいは、終わりなき任務の始まり。
世界は平和を得た。だが、その真実を知る者たちの心に、平安はなかった。