『 転生したらテイマーじゃなくて?ライマー!? ~ライムフローディスのコンビネーションで半端ないパンチライン~』
第一章 川崎から異世界へ
俺の名前は野上達哉。川崎に住む高校二年生で、MCバトルが人生の全てだった。
「よっしゃ、今日は高ラの予選だ!」
電車に揺られながら、俺は今日披露する予定のライムを頭の中で反復していた。高校生ラップ選手権――通称「高ラ」は俺にとって夢の舞台。ここで勝ち上がれば、全国に名前が知れ渡る。
駅から会場へ向かう途中、路地裏で異様な光景を目にした。同じ学校の後輩が数人の男に囲まれている。完全にヤバい状況だった。
「おい、やめろよ!」
俺は迷わず割って入った。しかし、相手の一人が隠し持っていたナイフが俺の腹に――
気がつくと、俺は見知らぬ天井を見上げていた。
「お目覚めですね、勇者様」
振り返ると、いかにもな魔法使いの格好をした老人が立っていた。典型的な異世界転生シチュエーション。説明によると、この世界では「テイマー」という職業が重宝されるらしい。魔物を従える能力者のことだ。
「それでは、貴方様の職業を決定いたします」
老人が差し出したのは古い羊皮紙。そこには「TAMER」の文字が書かれていた。しかし、俺の目にはどうしても「RHYMER」に見えてしまう。HIPHOPの血が騒いだ。
「ライマーで」
「は?」
「だからライマーです」
老人は困惑した表情を浮かべたが、結局俺の職業は「ライマー」として登録された。
第二章 謎の職業
それから三ヶ月。俺は王都のアンダーグラウンドで細々と生活していた。
ライマーとかいう謎の職業のせいで、まともな仕事にありつけない。スキル欄を見ても「ライムフロー」「パンチライン生成」「韻律操作」など、意味不明な能力ばかり。
「どうすればいいんだよ、この職業」
そんなある日、街角で騒ぎが起こった。
俺の数少ない友人であるエルフの少年アレンが、貴族の男に詰め寄られている。アレンは街で一番優しい奴で、いつも貧しい子供たちにパンを分けてやっているような男だった。
「貧民風情が生意気な真似を!税を減らせだと?笑わせるな!」
貴族――後で聞いた話では男爵クラインという名前らしい――は高慢ちきな態度でアレンを睨みつけていた。
「でも、皆さん食べるものもなくて...」
「黙れ!」
男爵がアレンを突き飛ばそうとした瞬間、俺は割って入った。
「おい、やめろよ」
「何だ貴様は?この貧民の仲間か?」
男爵は俺を見下すような目つきで言った。周りに人だかりができ始める。
「減税?おぬしのように同じことしか言えない。それをトートロジー(同語反復)というのだぞ。わかるか?ワシと違ってお前らは何も生み出せない。ゼロの人間なのだ」
男爵がドヤ顔で言ってくる。確かに教養はありそうだが、その慢心した態度が気に食わない。
観衆がざわめき始めた。俺の中で何かが燃え上がる。川崎で培ったMCバトルの血が騒ぐ。
「トートロジー?」
俺は一歩前に出た。
「口を開けばマイナスしか生み出せない
トントン拍子に出世した暴走老人
お前の頭をロボトミーで弄って
トートロジーにしてやるよ
トウシロ凡人」
韻を踏みながら、俺のパンチラインが炸裂した。観衆が「おおっ!」と湧き上がる。
男爵は一瞬、言葉を失った。その時だった。
【スキル発動:支配韻律】
【対象をパンチライン通りの状態に変化させます】
頭の中に文字が浮かんだ。同時に、男爵の目がうつろになる。
「口を開けば...マイナスしか...生み出せない...」
男爵が俺の言葉をぼそぼそと反復し始めた。完全にロボトミー状態だ。
「え?」
俺自身が一番驚いた。まさか本当に相手が俺のパンチライン通りになるなんて。
第三章 ライマーの真の力
アレンが駆け寄ってくる。
「達哉!すごいじゃないか!君の力、本当にすごいんだね!」
「いや、俺も今初めて知ったんだけど...」
観衆の中から老人が現れた。見覚えがある――俺を転生させた奴だ。
「なるほど、ようやく理解しました。貴方様の職業『ライマー』は伝説の支配系職業だったのですね」
「支配系?」
「韻と言葉の力で相手の精神を操る、古代に封印された危険な職業です。しかし、使い方次第では世界を救うことも可能でしょう」
俺は改めて自分のスキル欄を確認した。
【職業:ライマー】
【スキル:支配韻律(相手を韻で支配)】
【スキル:真実韻律(嘘を韻で暴く)】
【スキル:治癒韻律(韻で傷を癒す)】
「マジかよ...」
それから俺は、ライマーとして異世界で生きていくことになった。悪徳貴族を韻で懲らしめ、困っている人々を助ける。時には魔王軍の幹部とMCバトルで決着をつけることもあった。
川崎で培ったラップスキルが、まさか異世界で世界を救う力になるなんて誰が想像できただろうか。
俺の異世界ライフは、今日も韻と共に続いていく。
「よし、今日もパンチラインで世界を変えてやるぜ!」
エピローグ
数ヶ月後、俺は「韻の勇者」として王国に認められていた。アレンは俺の一番弟子として立派なライマーに成長し、元男爵クラインは...
「口を開けば...マイナスしか...」
今日も同じことを呟きながら街を徘徊している。まあ、前よりはマシな人間になったかもしれない。
異世界転生って、案外悪くないものだ。特に、自分の好きなことが世界を救う力になるなら。
俺は今日も街角に立ち、韻と共に新しい冒険を待っている。




