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『ある異世界の話』②~偽りの書簡~

 

 辺境伯レオンの執務室に、夕暮れの光が差し込んでいた。彼の顔には年月の刻みが深く刻まれ、かつての勇猛さは影を潜めていた。


 その日、一通の書簡が届いた。


「レオン様、お久しぶりです。昔仕えていたバレンタインです」


 レオンは懐かしさと共に手紙を読み進めた。昔の従者バレンタインからの、娘の結婚式の費用を工面できないという嘆願だった。


「うむ、筆跡はたしかにバレンタインのものだ」


 躊躇なく、レオンは金貨を送った。長年の忠義に報いる良い機会だと思ったのだ。


 しかし、その善意は裏切られることになる。


 数週間後、騎士団からの使者が訪れた。


「申し訳ございません、辺境伯様。あの手紙は偽造されたものでした」


 レオンの顔から血の気が引いた。騙されたという事実よりも、昔の部下を疑ってしまった自分に対する後悔の方が大きかった。


 一方、この詐欺事件の黒幕、針損(はりそん)山中山は、すでに次の獲物を狙っていた。


「次は誰だ?」山中山は冷たい目で部下たちを見回した。


「はい、隣国の男爵が良さそうです」部下の一人が答えた。


「よし、早速手紙を書かせろ」


 山中山は満足げに頷いた。しかし、彼の野心はそれだけでは収まらなかった。


「さて、いよいよ大仕事だ」


 彼は机に広げられた地図を見つめた。そこには王家の避暑地が記されていた。


「王家の文書を偽造し、この土地を金持ちの商人に売る。これで一気に大金が手に入る」


 山中山の目は野望に燃えていた。彼の計画は着々と進んでいった。


 しかし、彼は知らなかった。レオンの事件をきっかけに、騎士団が動き出していたことを。真実の追及と正義の実現に向けて、新たな戦いの幕が上がろうとしていた。


 闇の中で(うごめ)く欲望と、それに立ち向かう正義。その狭間で、この国の命運が揺れ動いていた。

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