あたまのなかの15
ピンポーン
ピンポーン
ドンドンドン
受信料を払ってください
家に帰るとパラボラアンテナ頭が激しく玄関をたたいていた。
こちらは気がついたが、気がつくことなくヒステリックに玄関を叩き続けている。
次第にたたく手が弱くなり、ぐったりと膝から崩れ落ちた。
なんででてくれないんですかーーーー。
居留守なんてひどいじゃないですか!!!
そんな、三文芝居をしばらく眺めていると、パラボラアンテナ頭は立ち上がり、舌打ちをしてこっちに向かってきた。
しかし、こっちには気がつかずぶつぶつと何かを呟きながら通り過ぎる。
昔、あんな仕事が合ったんだと文化をなくさないために旧世界を模して動かされるそれの後ろ姿を見送りながら、大変な仕事だったんだろうなぁと思いを馳せた。
今時テレビなんかを見てる人は居ないし、そもそも他人がどこにいるかだって誰も知らない。いまあんな事をやろうとしたらたどり着けずに野垂れ死ぬのが落ちだ。
見渡す限り、ココはなにもない。他人なんかどこにも居ない。生まれたときからこうなのだから、なぜこんな世界なのか全くわからない。
本から知識を得て自死を試みても、いつもココで目が覚める。