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01-08.元連隊長、推理する

その日、また一人が死んだ。


怪物との戦いで失われたわけではない。駐屯地内で殺害されたのだ。


連続殺人事件とみて警務隊は必死に捜査を続けていたが、犯人の目星はつかなかった。


このところ駐屯地内で毎日一件ずつのペースで殺人事件が発生しており、隊員たちは言い知れぬ疑心暗鬼に包まれていた。


この駐屯地内には、自衛官以外の人間は一人もいない。


目に見える外敵の侵入を許してもいない。


第一に疑われたのは、身内による犯行の線である。


この駐屯地の中に裏切者が潜んでいる?


しかも、誰かが毎日ひとりずつが惨たらしく殺されていくのだ。


怪物との戦いによって人員が失われていくのとは異質の、背筋の凍るような恐怖が駐屯地中を満たしていた。


「ようタモツ。例のイベント、今日のターゲットはお前かもな」

「悪趣味な冗談はやめてくれよハジメ」


親子ほどの年の差がある二人だったが、同期生として、野望の共有者として通じ合ってきた。


「警務隊は犯人像を全く絞れていないようだな」

「身内の犯行説、外敵の潜伏説、土地神の呪い説、死んだ自衛官の祟り説……」


タモツは数えあげた。


「僕のきいた限りでも、これだけの異説が唱えられているようだよ」

「決定的な証拠となるのは凶器に使われた道具だろうが……」

「うん。その線からも絞れそうにないね」


すでに十件近く行われてきた殺人の、その殺され方は毎回全部違っていた。


殺された隊員の所属、年齢、兵科、外見の傾向、性別、すべてがバラバラである。


駐屯地内でそりの合わない部隊同士というのは無いでもないのだが、殺人に発展するほどのいがみあいでもなく、せいぜい贔屓の地元球団が対立するファン同士のいざこざ、程度のものであった。


「外部から送り込まれた刺客が、駐屯地内に潜んでいるんだろうか?」

「さあな。わからん」

ハジメはぶっきらぼうに答えた。

「だが、だとしたらそいつは駐屯地内の建物の構造などを熟知している奴だろうな」


少なくとも3件の殺人については、この世界の魔法が関係しているとみられていた。


燃焼系、呪詛系、爆発系。


「複数の人間の犯行、何らかの遠隔操作。可能性を考え出せばきりがないけど……」


1件については「殺人」と言えるのかやや見解が分かれていた。


というのも、少なくとも表面的には拳銃を使った自殺であったからだ。


現場に残された「遺書?」には、


「死にたくない。助けて」


とだけ書かれていた。


「精神に訴えかけて肉体のコントロールを奪う、そういう魔法があるのかもしれない」

「えげつねえな。そういうの俺は苦手だ。吐き気がする」

「君にとっては特に恐ろしいやり口かもしれないね」


確信は、まだなかった。

いや、信じたくないというのが本音だったかもしれない。


タモツの中には、ひとつの推理が浮かびあがっていた。

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