02-19.元不良、竜と戦う2
機関銃の弾を数百発腹に食らってドラゴンの出血はおびただしかった。
だがしかし、息絶えるということがない。
酸を吐きながらしっぽを振り、吠え声を荒げてなおも突進してくる。
「後退だ! 機関銃は捨てろ!」
ハジメが叫び、岡崎と吉田は起き上がって逃げ出した。
(ここで仕留められないとなると、もうあれしかない――)
洞窟の入り口が見えてきた。岡崎と吉田を先に行かせて最後にハジメが洞窟を抜け出た。
洞窟の入り口付近には金井が無反動砲を構えていた。
「かませ! 鉄さんっ!」
タイミングを見計らってハジメは叫び、金井は対戦車砲をドラゴンの腹めがけて打ち込んだ。
それから続いてハジメは叫んだ。
「森っ!」
ズドォオン!
――洞窟の天井に仕掛けていた炸薬が破裂し、岩盤がドラゴンの頭上に崩れ落ちた。
特務隊が最後の手段として考えていたのは、入り口付近の岩盤を崩落させてドラゴンを下敷きにする、という作戦であった。
岩の下敷きになった黒竜はなおも抵抗しようと身体をうごめかせていたが、おそらく内臓は破裂しているものと思われ、岩盤を押しかえすほどの力はもう残されていなかった。
「あとはもう、ほうっておけば死ぬんじゃないですか?」
無反動砲を抱えたまま金井が言ったが、ハジメは首を振った。
「いや。完全に死んだのを確認しないとダメだ」
万が一、息を吹き返して暴れるかもしれない。
「数人で前腕を押さえつけて手首を切り落とせ! 失血死させろ!」
ハジメは隊に指示した。
「口から吐く酸に気をつけろよ」
それからはもう戦いとは言えず、ただのなぶり殺しでしかなかった。
とうてい後味がいいとは言えないが、戦いが優勢に進んだ後で魔獣の生命力が強いとままこういう展開になることもあった。
(それでも味方に死傷者が出るような戦いよりははるかにいい)
特務隊創設当時の戦闘を思い返して、ハジメはそうひとりごちた。
ドラゴンの生命力は驚くべきもので、真昼に始まった戦闘は夕暮れになってようやく決着した。
もう黒竜はぴくりとも動かず、酸も吐かず、ただの屍になり果てた。
「意外とあっけなかったっすね。弱かったすよね」
足立がぽつんと言った。
「現代兵器を駆使してこれだぞ。剣だの槍だので勝てる相手じゃねえだろ」
吉田が異議ありげに言った。
「機関銃だって2門ダメにしちまったし結構ギリギリだっただろ。誰も死ななかったけどさ」
「機関銃、2連隊から怒られるかなあ」
岡崎が洞窟の奥のほうを見て言った。
「ま、とりあえず倒したからいいんじゃねえか?」
とハジメは言った。




