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"シータ"の日常そのほかいっぱい。  作者: シータ・ジャッジ
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カーラ養成日記:1

スタートテープ。



なんやかんやで彼女を引き取ることになったわけだが、正直どう接すればいいのかわからない。

衛生的な面からさっさと風呂にいれたいわけなのだが、急に「風呂入ってこい」なんて言ったら1200%引かれるし、「風呂一緒に入るか?」なんぞ言ったら二度とまともに話せなくなる。

だが、声をかけないと何も変わらないのでさっさと風呂に入れるよう勧める。

「あー…えっと、風呂、入るか?」

「…わたしなんかが、いいの?」

「どうぞ」

「…あ、ありがとう…?」

多分引かれたわこれ。

まぁ、ともかく彼女を風呂に輸送できたので、今後の動向を考える。

一番に必要なのは衣服。

あんな布切れみたいなの見にまとって風邪引かれても困るし、まず私が目のやり場に困る。

よって、私が選んだ結論は…

「…服屋行くか」


庭に置いてある自転車を引っ張り出し、マップアプリを開いたスマホを片手に服屋へと向かう。

そういえば、私の住んでいる都市を説明してなかったな。

私の住んでいる都市は「カナルウィド」。

現状、国の中じゃかなりの大都会になる。

広告はホログラムが当たり前。街の商業地では中高生のはしゃぐ声と宣伝の掛け声が後を絶たない。

ゲーセンに入ってくる筐体はすべて最新型。電化製品店では欲しい家電がすぐ手に入る。

もちろん、裏路地のスラム化も酷いがな。


服屋についた。

「いらっしゃいませー、どのようなものをお探しでしょーかー?」

ファッションセンスがない俺にはグチャグチャにしか見えない服装を着た店員が気の抜ける声で話しかけてくる。

美的センスがない俺が考える、少女らしいファッションといえば思い浮かべるのは単純なTシャツに短パン。

でも、そんなこと言っては彼女が可哀想なので店員に任せてみることにした。

「Hmmm…10歳くらいの女の子に似合う服装ってあります?」

「なるほどー、娘さんに服買ってあげるんですねー?理想のお父さんですねー…それにしてもちょっと若い気がするけど」

最後に余計なことをこっそり(という割にはデカイ声で)言うと、店の奥まで滑るように入っていき、数分後にはとんでもない量の服を持ってきた。

「えーっとー、それっぽいの全部持ってきたんすけどー、どうですかねー?」

多い。

多いんだよチミ。

まぁ、しゃーないか…

とりあえず、座りながら服を見ていく。

「これはー、一般的なTシャツっすねー。この茶色の短パンと合いますよー」

と言って見せてきたのは、黄緑がベースで真ん中に黄色のストライプが入った、どこかで見たことのあるような気がするTシャツ。

「…いいですね、これはちょっとキープで」

「ありがとうございまーす。んでー、これがいわゆるフリフリのついた女の子らしい服でー…」

そんなことが小一時間ほど続いた。

最終的に選んだ服と下着等は、総額で20万円にも及ぶくらい高額になった。

「あのー、流石に高すぎると思うんすけどー…」

「さーせん…センスないもんで。なんか合いそうだなーくらいでしか選べないんすよ…」

「奥さんに選んでもらえばいいのに…」

「奥さんいないっす」

「え?」

「いないっすよ」

「…てことは、シングルファザーってやつっすかー…」

「そうですよ、それが何か?」

「…じゃあ、その子ってもしかして養子で?」

「はい」

「へー…大変っすねー…」

「そっすね」

「あー…私ー、フリーなんすけどー…興味ありますー?」

「そういうの興味ないんで」

「あっ、そっすか…」

「じゃ、クレジットで」

「はい…」

なんか誘われた気もしたし割とひどい方法で振った気がして申し訳ない気持ちになった…が、俺なんぞと結婚してもメリットなんて金くらいなので正解だと信じたい。

クレジットで一括払いをし、かなり重い袋を自転車にかけて漕ぎ出す。

何分かして自宅の玄関を開け、リビングにつくと、そこには…


「あっ」

「あっ」


タオル一枚の少女がいた。

「あ…えっと…これは失礼…服置いとくから着替えてね…」

足早に自分の部屋に入ろうとする。

「あっ、ちょっとまって…」

「着替えといてください!!!!」

バタリとドアを閉める。

「ふーっ…はぁ…ビビったー…」

帰ってそうそう冷や汗をかいたことに驚きだが、それ以前に慣れない。

彼女が風呂に入っていたということを考慮してなかった。

これでもし全裸だったら、多分発狂してた。

危ない。

これは非常に危ない。

…とにかく、ゲームでもして落ち着くとする。


「よっしゃGG〜!これで100連勝目〜!」

FPSで地味にすごいことを成し遂げた時、ドアがノックされた。

「…あいつか、どうぞ」

ガチャ、という音と共に現れたのは、裏路地にいた時とはうってかわってとても綺麗で可愛い少女だった。

「あ、あの…」

「どうした?…あ、飯か」

「い、いえ…そういうことでは…」

「いいよ、遠慮しなくて。コンビニ飯ばっかだったけど一応自炊もできるから」

「ち、ちが(腹の鳴る音)」

「…よし決まり。カルボナーラ作るぞ」

「…いただけるのなら…」


今が午後7時前後ということを忘れていた。

なので、一般的な自炊能力を利用してカルボナーラを作ることにした。

なんとなく自炊がしたくなる時がこれまでもあったので、とにかく自分のレパートリーの分は作れるような材料はある。

まずパスタを2人分茹で、その間にソースを作ってしまう。

ボウルに粉チーズ適量(大量)と牛乳2パック(小さいタイプ)、卵黄を入れてできるだけダマのできないように混ぜる。

パスタが柔らかくなってきたので、ソースの作業を中断して鍋をかき混ぜていく。

完全に茹で切ったら、ザルに移してお湯を切り、皿に盛り付ける。

ソースを加熱しつつ、フライパンでベーコンを焼く。

ベーコンがいい感じに焼けたら加熱しているソースに入れ、混ぜる。

できたソースを均等にかける。

完成。

適当だが、これこそが男の料理というものだ。

「…あ、もしかしたらしょっぱいかも」

よくよく考えたら子供にはしょっぱすぎるかもしれない。

適量という言葉を覚えなければ。

「…おいしい、です」

「え、マジ?しょっぱくない?」

「…これよりしょっぱいもの、たくさんくちにいれましたから」

「…そっか。どんどん食えよ。おかわり食べたければ作るから」

そんな、普通のような普通じゃないような会話を繰り広げられていることが驚きだ。

俺みたいなコミュ障がこんな人情溢れる言葉を口から出せるとは…


食べ終わって皿を片付ける。

皿を洗ってる途中、こんなことを言われた。

「…やっぱり、このあとはするんですよね…」

推理は当たっていたみたいだ。

「いいや。そんな気持ちも劣情も微塵もない」

「じゃあ、なんでこんなしんせつにしてくれるんですか…?わたしのこと、どうぐとしてつかうからこんなことしてくれるんですよね…?」

「不正解。俺は自分のエゴに沿って生きるクズだから、助けたい人は助けるし殺したい人は殺すんだよ。お前を助けたい気持ちがあるからそれに沿ってお前を助けてるだけ」

「…なんで」

「え?」

「なんで、わたしなんかに…えぐっ、ぐすっ」

泣いてしまった。

泣かせてしまった。

「えっ、ちょ、待って待って!泣かないでほら!特に深い意味ないから、なんとなく助けたくなっただけだから、そんなに泣かないで!」

「…ほんと?わたしのこと、どうぐにしないの…?」

「しないって!なんなら助けた意図もないから!」

「…やったぁ…やったーーーっ!!!」

「え?」

そんなことを言うと、突然飛び込んできた。

ただ、職業柄からか後ろに避けてしまった。

「…いでっ」

「び、ビックリした…って、ごめん!大丈夫か!?」

「…えへへ、大丈夫」

微笑みながら向けたその顔は、もはやあの時とは別人のようだった。

とても、可愛い。

無邪気で、健気で、何より生気がある。

一般的な少女だ。

それ故に、可愛い。

「…そーか。よし!明日はなんか買いに行くか!」

「ほんと!?!?わーーいっ!」

これが、幸せ。

私の幸せ。

この時、私は誓った。

"二度とこのような幸せを逃しはしない"と。

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