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"シータ"の日常そのほかいっぱい。  作者: シータ・ジャッジ
3/4

彼女との出会い。

スタートテープ。


21歳くらいのころ。

俺がまだ駆け出しあたりだったころだ。

俺は依頼に従い、とある都市の裏路地でチンピラどもを殲滅していた。

命乞いをするやつもいれば、必死に最期まで抵抗してきたやつもいたな。

そんなやつがたむろする迷宮のような裏路地を散策していると、ある光景が目についた。

場違いのように可愛い顔をする10歳くらいの女子がいた。

薄汚れて、もはや機能すらしていない布切れを身にまとい、生気を失った顔でそこに佇んでいた。

裏路地じゃあ餓死寸前の子供なんてしょっちゅう見るが、彼女はそうではなかった。

しっかり肉はついてるし、飯はちゃんとしたのを食ってるみたいだった。

だが、そんなことを気にしてる場合ではない。

ここら一帯のチンピラどもを全て殲滅するという依頼があるため、その場を足早に去った。


弾丸をおよそ128発撃ち、首を58回斬り、35人の体を縄に吊し上げたころには、チンピラの姿は見えなくなった。

とりあえず事務所で依頼主に完了の知らせを伝えるため帰る途中、なんとなく薄汚れた彼女のことが気になった。

記憶を辿り、何分かをかけてその子に会いにいった。

彼女はまだ生気を失った顔をしている。

しばらくの間、彼女のことを観察していた。

何個かの唾棄すべきともいえる事実と、二つだけの結論が手に入った。

彼女はおそらく、あのチンピラどもに利用されていた。

少なくともこの小説は全年齢対象なので、細かい描写は省くが…

そして、もう一つ。

彼女は、見る限りじゃ親を持っていないような子には見えなかった。

しっかり普通の家庭で過ごし、しっかり普通の友達と遊んでいたのだろう。

おそらく誘拐的なものでもされたのだろう。


最悪の事実だった。

今でもゲロを吐きそうになる。

そして、この瞬間二つの結論が頭に思い浮かんだ。

1、彼女を家まで送り届ける。

2、私が保護をする。

この二つの結論は、一つの質疑応答で簡単にどちらか決めることができるほど単純明快だった。

なのに、悩んだ。

これまでまともにコミュニュケーションもとってなかった俺が彼女を保護できるのか?

家まで送り届けたとしても、そのあとも彼女はこのトラウマを克服できるのか?

頭をモーター並みにフル回転させてると、急にある声でその回転が止まった。

「…にげて」

彼女が声を発した。

その声は「逃げろ」という一つの言葉のみ。

だが、すぐ分かった。


やつらが近い。


「…やっべ」

なんとなくナイフのような気がしたので、前に転がって避けた。

なんとか攻撃は回避できたみたいだ。

慌てて後ろを振り返り、状況を確認する。

敵の数は10〜15人。

多すぎる。

囲まれてないだけマシだが、それでもめんどくさい。

それに加え、今の私には彼女を助けるという役目がある。

俺だけの時なら一人一人確実に殺して、数を減らせる。

だが、彼女がいるとそんな悠長なことをしてる間に何が起こるかわからない。

よって導き出した答えは…


「…逃げるんだよクソッタレが!!」


殺す前に彼女の保護。

俵を持つみたいに彼女を持ち上げ、走る。

敵の反対方向に逃げるとターンしてる間に追いつかれそうだ。

だから、突っ切る。

この際、仕方がない。

依頼なんてどうでもいい。

彼女を助けなければ。


そんな一心で突っ切った。

幸いにも、何人かは斬り殺せたので隙間から逃げることができた。

空いた左手にリボルバーを持って後ろに威嚇射撃をし、とにかくまっすぐ逃げる。

とにかく開けた場所へと逃げる。



気づけば、家についていた。

肺が焼けるように痛い。

喉がカラカラになっている。

階段を登ってリビングについたときには、疲労で倒れ込んでしまった。

しっかりと彼女を離してから。

「…なんで、わたしをたすけて…」

「ぜぇ…ぜぇ…悪い…が…話…あとで…」

ガクガクでうまく動かない足になんとか言い聞かせて、キッチンに行きコップに水道水を汲んで飲む。

「………はぁぁぁ…生き返るわ…」

頭が水で洗い流されてスッキリした時、とんでもないことに気がついた。

…よくよく考えたら、子供(ほぼ全裸)を担いで死ぬ気で走る俺、通報されてるんじゃね?

おいおいおい、死んだわ俺。社会的に。

…いいやまだだ、弁解すれば許してもらえる…

いや、どっちにしろ殺人でお縄だな…依頼とはいえ…

終わった…

ピンポーン

「開けろ!市警だ!」

ほら来た。

絶望の心を抱えながら玄関に行く。

「はい…」

「市街地を少女を抱えながら走っていた男というのは貴様で間違いないな?」

「そうです…」

「貴様…」

はいはい、"署までついてこい"でしょ、分かってるって…

「…貴様は少女1人の命を救い、さらにあのギャング組織の一部分を壊滅させた"断罪者"ということだな」

「え?」

「近頃、暗殺などの依頼は受けずギャングや悪質な企業の破壊の依頼のみを遂行する駆け出しフリーターの話が話題になっているんだ」

「は、はぁ…」

え、まって、予想外なんだが?

絶対お縄ついて処刑場で首吊りENDだと思ってたんだが。

犯罪者どころか英雄扱いって…

「巷じゃ、その能力や殺し方もあって"断罪者"なんて呼ばれてるらしいな」

「…そーなんすか…」

「そこでだ、君に一つ頼みがある」

「な、なんでしょう?」

「あの少女を育ててやってくれ」

「は?」

「いきなりですまない…だが彼女の母親、最近クスリで逮捕されてな。父親はそれなりの地位についてたみたいだが、ある日にフリーターによって暗殺。彼女の親はどちらももういないんだ」

「だからといって、保護施設なりなんなりに預けてトラウマが治るとも言えないから俺が育てろと…」

「あぁ、そうだ…頼む!君のような人間にしか、このようなことは頼めないんだ!」

「…えっと、まぁ、いいっすけど…」

「…!本当か!?」

「マジっすよ」

「ありがたい…誠に感謝する」

「ま、最近依頼とゲームくらいしか刺激ないですし仕事してる時以外暇ですし。彼女に危害は加えないと約束しますよ」

「では、頼むぞ。断罪者どの」


人生の中で、あんな柄悪そうな怖い警察に頭下げられる場面今ぐらいじゃなかろうか…

だが、とにかく結論が一つに決まったという点では朗報だ。

しばらく大変だな…




というのが、彼女と出会った経緯だ。

育てる経緯は次回説明するとしよう。

エンドテープ。

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