使い切られ役 No.1 消しゴム
俺の名はツカイ・キルゾ
ある物を決め、それを使い切り、役目を終えさせる
それが俺の使命であり、この世に生まれた意味
そして今日、新しく使い切られ役となる物を連れてきた
それはこいつだ!
\\ 消しゴム //
俺はこれから消しゴムを使い切ることに全力をかけ
消しゴムに生まれた意味を持たせる!
そしてこの消しゴムの人生に終止符を打つ!!
それが今回の目標である
よーし!まずは… 宿題をしよう!
カキカキカキカキカキカキカキカキ…
あっ… ミスった… ふふっ…
さあ今だ! お前の力を見せてやれ! 消しゴム!
おりゃー!! おりゃー!! おりゃー!!!!!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
フゥ… さぁーて… どれくらい減ったかな?
おー!! けっこう減ってる! やったー!!
よーし! まだまだ! 宿題の続きを… って
嘘だろ… おい… まさか… 俺の宿題のプリントが… そんな…
ビリビリの… クッシャクシャに… なってやがる…
コンコンコン… !
「お菓子もってきたわよー 宿題は進んでる?」
ヤバい… ママだ… 宿題がビリビリのクッシャクシャに
なってるのを見られたらお菓子を貰えないどころか
俺がギッタギタのメッタメタにされてしまう…
「入るわよー… 」
ヤバい… ヤバい… ヤバい… 入ってきた…
「あら… あんた… 」
終わった…
「折り紙で遊んでたのねー! 可愛いところあるじゃない!
でも、宿題もちゃんとしなきゃダメよ! お菓子ここ置いとくわね!」
バタンッ!
あははははは… 助かった…
宿題があまりにビリビリのクッシャクシャだったから
折り紙と勘違いしたのか… よかった…
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「えーということで… こういうわけだ。
ちゃんとノートにメモしろよ、ここテストに出るからな」
俺は今、授業を受けている
ただし先生の話は全くもっても聞いていない
なぜなら俺には消しゴムを使い切るという使命があるからだ
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
フゥ… けっこう疲れるぜ!
え? そんなに疲れて一体、なにをしているのかって?
そんなのひとつしかないだろ!
そう俺は今、ねりけしを作っているんだよ!!
そしてねりけしを作るには幾つかの素材が必要となる
その素材とは… 消しカス、消しカス、消しカス、消しカス
つまり俺が今、やらなければいけない事…
それは… とにかく消しゴムを使いまくる事だー!!!
おりゃー!! おりゃー!! おりゃー!!!!
机とものすごい速さでこすれる… 摩擦で煙がたってやがる!
ははは… もっとだ! もっと! おりゃー!!!!
「ん? なんか焦げ臭くない?」
「ほんとだ… もしかして火事じゃない?」
ザワザワザワザワザワザワザワザワ…
「み、みんな落ち着け! 大丈夫だ! 先生が確認してくる!」
バタン!スタスタスタスタ!
何だか周りが騒がしい、だが俺には関係ない
とにかく消しゴムを使いまくる事だけに集中しろ!
「みんな! 火元は確認できなかったが念の為、避難するぞ!」
ドタドタドタドタドタドタドタドタ… !!
「おい! ツカイ! お前も速く!」
ねりけしを作るんだ!! ねりけしを作るんだ!!
「お、おい! 聞いてるのか! 」
消しゴムを使いまくれ!! 消しゴムを使いまくれ!!
「お前はさっきから何をしてるだ! 速く避難を… 」
フゥ… やったぞ… とうとう完成した… 俺のねりけし…
机は摩擦で焦げてしまったが
あと少しのところまで消しゴムを消費できた!
そういえば… 他の生徒がいなくなってる
そして… 先生が俺の机の前に立っている
どうしたんですか? 先生? ていうかみんなはどこへ?
「お、お前… その机の焦げ跡はいったいなんだ?」
これですか? これはですねぇ… 消しゴムの努力の結晶です…
「じゃあ、その散らばったゴミはなんだ?」
ゴ、ゴミ… ふざけるな! こ、これは… 消しゴムの生きた証だ!
「そうか… 」
ザァー… ザァー… ザァー…
せ、先生? ねりけしを手に集めて… 何するつもりですか?
「捨てるに決まっているだろ… こんなゴミ!」
トコトコトコ… ポイッ
あー!! 消しゴムの生きた証がー!!!!
「放課後、職員室に来るように」
バタンッ!!
お、終わった… チーン…
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今日は部屋の掃除をすることなっている
壁や机に着いた汚れを、消しゴムで落とし
部屋を隅から隅まで綺麗にするのだ!
そして消しゴムは残り少し…
つまり今日で消しゴムを使い切れる!
ついに目標を達成できるんだ… !
と決まればさっそく…
まずは机についた鉛筆のあとを消す!
行くぞー! おりゃー!!!!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
まだまだ!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
あともう少し!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
フゥ… こんなところだろう…
さて… 机は綺麗になったかな?
\\ ピカーン //
うおー!! これは凄い!!
ツルツルのピッカピカだ!!
よーし! 次だ次!
壁に着いた黒ずみを消しゴムで完璧に落とす!
行くぞー! おりゃー!!!!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
いいぞ!いいぞ!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
あともうちょっと!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
フゥ… さすがにくたびれたな…
さて… 壁は綺麗になったかな?
\\ ピカーン //
おー!! これまた凄い!
白く光り輝いている!!
そしてついに消しゴムもあとほんのわずか
次がラストになるだろう…
最後… なにを掃除するか…
んー… やっぱり消しゴムを使い切った時に
達成感を味わいたいから難易度が高いところがいいな…
どこかないか… さっき壁をやったわけだから…
それより難易度の高いところ… んー…
あ、そーだ! 天井! 天井があった!
天井はどう考えてもこの部屋の最高難易度だ…
よし! 今すぐ掃除にとりかかろう!
と言いたいところだが… 身長的に届かない…
ちくしょう… どうすれば…
そうだ! 脚立を使えばいいんだ!
えっと… ここに… 脚立を立ててっと… よし!
ふふふ… これで… 天井の汚れを落とすことができる!
そして今、この瞬間… 消しゴムの人生に終止符を打つ!
行くぞー!!!!!
おりゃー!! おりゃー!! おりゃー!!!!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
とうとう… この時が…
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
あと数回こすれば消しゴムを…
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
使い切れる!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
ラストォォォォオオオオ!!!!!
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ!!!!
ガタンガタンガタンガタン…
使い切っ… あっ…
うわぁぁぁぁああああ!!!!!
ドスン…!
い、痛い… まさか… 脚立から落ちるなんて…
消しゴムを使い切ることに集中していて
脚立が揺れていることに気づかなかった…
でも大丈夫… 俺はやり遂げた…
そう… ついに… 消しゴムを使い切ったのだ!
やったぞ! やったぞ!! 目標達成だ!!!
ものすごい達成感と、ものすごい快感が俺を襲う!
バンザーイ!! バンザーイ!! バンザーイ!!!!
バンザーイ!! バンザーイ!! バンザーイ!!!!
バンザーイ!! バンザーイ!! バンザーイ!!!!
「うるさぁぁぁい!! 静かにしなさぁぁぁい!!」
は、は〜い… チーン…
消しゴムってなかなか減らないのよね。