化け物と化け物
調子戻って来たかも
クランに戻った僕はアルを探して、まだ会議室にいると聞いて、会議室に向かい扉を開けて数人の幹部と談笑するアルにこう言った。
「アル、ベルドラで求人を出すならどこが1番効果的になる?」
「求人なら、商業ギルド、後は冒険者ギルドと、宿で一から育てるなら近辺の村とかですかね。」
「そっか。やっぱりそこら辺だよな。アル悪いんだけど、求人を出しておいてくれない?」
「求人なら戦闘職、非戦闘職合わせてだしてありますよ。給金は他のオールインと、同じようにベルドラの平均賃金より少し高く。マスターが出て行った後、使いを出していくつかの村の村長には、クランに来るようにお願いに行かせたので、明日か明後日には来るかと。後は何か見落としありますか?」
「あ、あぁ。それで頼む」
思わず口が開いてしまった。他の幹部も不安そうな顔をしている。
それはそうだ。初動が早すぎる。アルという男はやはり化け物だと思う。
「おいおい。ほんとに当たったよ。アルとはそれなりに付き合い長いけど、クラマスが、絡むと化け物度が増すな」
「勘弁してくれよムサシ、僕は脳が焼き切れるギリギリだよ。この人みたいなホンモノの化け物と一緒にしないでくれよ。あ、マスター、求人の数については大量雇用とだけ言ってあります。有望なやつは余ったら竜の息吹でも雇用しますので」
「それは有難いけどアル、竜の息吹の求人は、来月じゃ無かったのかい?」
「どっかの誰かが、冒険者ギルドで騒ぎを起こしたらしいんですよ。このタイミングで竜の息吹が求人をしたら、クランのイメージも上がりますから」
うぐっ、あれは僕のせいじゃ無いだろう? という言葉を飲み込んで、アルにただ頭を下げる。
数日後、件の処罰の無かった受付嬢が、迷惑をかけた私の為に求人を? と、勘違いして、魔の森付近の宿に希望異動届けを出すのだが、それはまた別の話。
「それじゃあ、手が空いてしまったな。街中に出す方のオールインの、場所でも不動産屋に行って……」
「タツヤさんは村長達の相手以外もう仕事禁止です1週間ゆっくりして帰って下さい。はいこれどうぞ。土地のリストアップは済んでます。条件に合わなければまた言って下さい。候補地も集めて来ますから」
「え? 仕事禁止ってなんでぇ?」
「ララさんから手紙が来てます。普段来れないからって、全部やろうとしたら止めてと。読まれてますね。人を使う事ももっと覚えて下さいね」
「うっ! そ、それなら、お言葉に甘えるよ」
「お待ちください」
少し気まずい気持ちで、何をやろうかと考えながら、部屋から出ようとすると不意に引き止められる。
「どうせならクランパーティでもしませんか? 赤き翼の皆様から聞きましたが、マスターの料理は絶品だとか? 庭も、ほら」
「いいね、会計は僕のクランマスターとしての来月の給料から引いておいてよ。派手に飲もうか。僕の故郷の料理も作ろう」
「すでに、その様に。クラン予算からも半分出してますがそこは譲りませんよ」
庭にはバーベキューの準備をするクランメンバーの姿が見えて、なんだか笑えた。
マヨネーズを作って、唐揚げでも作ろうかな。
今日は楽しくなりそうだ。
ーとある幹部の証言
『私も文官として幹部になった身なので、それなりに自信はありました。事実今日まで竜の息吹の一端を支えて来た自負もありましたし。でも勘違いでした。マスターとアル…アルさんの、会話、一つもいまが無いんですよ。なんか2人だけちょっと未来の時間軸の中で話してるみたいで怖かったですよ。いるもんですね。ホンモノの天才ってやつは』
バーベキューは大変に賑わった……
「だからぁ、私はほんとにタツヤが好きなのぉ! もう冒険者やめて、ずーーーっとタツヤといるぅぅ! でもそれが出来ないのは、わかってるのよ。わかってるのぉ」
「アル、アルって、なんでも僕に言って、現場での危険や責任の無い雑務で高待遇って言うから、入団したのに、なんだよこれーーー!!!! タツヤのバカやろぉ!!」
アメリアの酒癖を初めて見たメンバーには箝口令がひかれ、ひたすら仕事の僕の愚痴を言っていた、アルの給料を上げた。レオとアルには、今迄無かった、サブクランマスター制度を作り、地位(責任)もプレゼントした。
嫌がらせ? そんな事はないよ。レオには悪かったと思うけどね。
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