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それぞれのざまぁ(前)

短いので(後)が短ければくっつけます。

少しでもかけたら投稿していくスタイルで今は行きます。

次回はヤツヤナさんです。

「ここは? ん? なぜ私が縛られているのだ? 私はバリー家のゴウツクだぞ。ほどけ、狼藉者どもめ!」


「目を覚ましてすぐに良くそこまで喚けるものだ。よく貴族であるだけで、そんなに偉いと思えるものだね」


「アルフォート公爵……するとここは?」


 うっすらと意識を手放す前の事を思い出して青ざめる。

 自分がしでかした事は、もはや取り返しがつかないと悟った男爵は死刑台に登ったかのような気分で、公爵の判決を待つ。


「一族郎党皆殺し……通例ならそうだね」


 ビクリと、男爵の肩が上がる。当然だ。それだけの罪を犯したのだから。通例ならとは?

 口には出さないが言いたくもなる事もある。この程度の事をしている貴族は他にも山ほどいる。何故私だけがと。


「命だけは! 命だけはお助け下さい。公爵様には寄付金もございます。帳簿にも載っていない金なので、公爵様の懐に入れていただいて問題のない、お金でございます」


「ほう、裏金か? 魅力的な提案だな。ちなみにいくらだ?」


「白金貨で50枚は用意がございます。時間を頂けましたら更に‥‥」


「馬鹿者! 貴様それだけの額を毟り取るほどに、ヤドランの星を売ったか! それだけではあるまい。他にも後ろ暗いところがありそうだな」


 一度提案に乗りかけた公爵にニヤリとしたのも束の間、すぐに梯子を外されたような気分になり、絶望し直す。


「バリー家は取り壊しだな。全くただでさえ貴族の数は足りていないというのに」


「そっ、そんな! うちの息子は優秀なんです! 私とは違って清廉な男です。これから清濁を教え込む所だったのです。お願いします。息子や家族には罪は無いではありませんか!」


 ここに来てやっと、もうどうにもならないという事をようやく実感して、心からの助けを乞い始めたゴウツク、しかしあまりにも遅く、彼の罪は重すぎた。


「先程も言った通り貴族の、特に領地を持つ貴族の数は足りていない。だが、お前のようなものを、貴族の末席に据えるなら取り潰した方がマシだ」


「……」


「選べ、此処から自分の馬車に乗り換えて、谷底に落ちるか、一族郎党皆殺しか。本来なら選択肢など与えないが、貴様の懇願に免じて選ばせてやる」



 それは二択に見せかけた一択。事故死して家を守るか、みんなで死ぬか。

 罪の重さからすれば選択肢など無い。むしろ選択肢を与えてもらったことが奇跡的な事だ。

 実際に男爵の息子が優秀である事は調べが付いていている。まぁ一つの貴族家を取り潰す可能性があったのだから、当然だ。


「アルフォート公爵。温情に感謝いたします。馬車の準備をお願いします」


「貴殿も、ヤドランの審査員に選ばれる程の公明正大な男だったのに何故……貴族の闇というものか」


「………」


 男爵を乗せた馬車は公爵の影の手に押され谷底へと落ちていった。


「ふー、大貴族の役目とはいえ後味の悪い事だ。確認(・・)を頼む」


 バリーは谷底で、未だ自分の意識が繋がっていることに気付いた。手を開いて、また握る。全身から激痛はするが、動けないほどでは無い。

 死を乗り越えた男爵の脳裏に二つの考えがよぎる。このままどこか誰も知らない所に行こうか。それとも……反王族派を集めてクーデターでも起こしてやろうか。

 

「うっ!」


 どちらにするか考えがまとまる前に、男爵は意識を手放した。今度は永遠に。もし、死体が見つかっても、気付かないほどの小さな傷を付けられて。


「そうか、生きていたか……二度死なねばならんとは運の悪い男だ‥‥因果か」


 その後、ゴウツクと共に悪事を働いていた親戚や仲間が次々と不幸な事故で死んでいったが、事件性は見つからなく、事故死で片付けられた。


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