11話 出会いと別れ
誤字報告ありがとうございます。
恋愛騒動も落ち着き、日常を取り戻した今日この頃、モンとキーが戻って来るという手紙を受けて、そろそろロキを入れ替えでベルドラに、送り出してやろうと思っていた。
もう、ロキはB級くらいに強いし、この3ヶ月、自分の代わりを探す事を継続していた。
自分と同じくらいの実力者を探そうとしなければ成功していただろう。あの子は自分の実力がわかっていないところがあるからな。
天狗にならないようにまだまだと言い続けたのは俺だが。
「にいちゃんにいちゃーん! 俺の代わり見つけたー!」
「はっ?!!!」
噂をすれば影というが、こちらに向かって走って来るのは、成人男性くらいの何かを担いだロキだ。
「コイツ!」
「なんでボコボコなの?」
「俺の財布盗もうとしたから」
「なんで連れてきたの?」
「何でもするから命だけは助けてって言うから」
ベルドラに行かせるのやめようかな。
そう思わずにはいられない、出来事だった。
よく見れば獣人か? いや、顔が人間に近いな。昔あった獣人はガッツリ二足歩行の獣って顔してたから、ハーフとか? とりあえずバケツに水を汲みぶっかけて目を覚まさせる。
「うっ……ここは?」
「ここは宿だよ。お前はこの子の財布を盗ろうとして、返り討ちにあった。それで命乞いして連れて来られた、で間違いない?」
「あっ、ああ。獣人は自分より力の強いものに従う。ロキ様の命令なら何でもします」
随分と丁寧な口調だな。獣人国の言葉じゃ無くて王国語でし話していてしかも流暢だ。しかし罪人ばっかり増やすのもなぁ。
「えっ、俺はベルドラに行くからこの宿守ってよ。丁度よかったよ。おっさんは、結構強かったし」
「それは出来ません。ならば私もベルドラとやらについて行きます。罪人と落ちた私の命を助けてくれたのはロキ様ですから」
「そこのタツヤ兄ちゃんは、俺の師匠だよ。俺の師匠の言うことは聞いてよ」
この野郎、都合の良い時だけ師匠扱いしやがって。それでも嬉しい自分が悲しい。
この流れは面倒な予感しかしないんで、いっそ帰ってもらいたいんだけどな。
「ならば、私と立ち会え! 貴様がロキ様の言うような人物なら、従ってやってもいい。さぁ何処からでもかかってこい」
「にいちゃんは不遇職の支援術師だからあんまりやり過ぎるなよ」
へぇ、ロキのやつ随分面白い駆け引き出来る様になったんだな。誰の影響だろう? あとで聞いてみよう。
「支援術師ぃ! それならば戦うまでも無い。大方もっと小さい頃のロキ様相手に適当な事を教えて、師匠ヅラしてたんだろう。私はやはりロキ様についていきっ⁉︎」
俺は好き勝手喋っている獣人に向かって、思い切り鉄杖を振り抜いた。
間一髪避ける。中々いい反応だ。確かに強いな。
「貴様、不意打ちとは卑怯だぞ!」
「どっからでもかかってこいって言ったじゃん。んじゃ、今から攻撃するよ。セルフサポート」
「ぐっ⁉︎」
今度はセルフサポートを掛けて殴ってみたけど腕で防御した。いい反応だ。痛そうだけど。
一撃喰らって逆に落ち着いたのか。男は深呼吸して、構える。
「戦士を侮辱するなどと失礼な事をした。ここからは獣人の戦士としてお相手させていただく。行くぞ」
「パーシャルサポート(足)」
「ぐぁ!」
部分支援を足に掛け速度を更に上げて男が俺を見失った所に、鉄杖を全力で振り抜いた。
鉄杖は後頭部にクリーンヒットして、男はまた気絶した。
バトルパートを長引かせる気などない。
「まぁ、強さは合格だな。あんまり使うの好きじゃないけど、言うこと聞かなそうなら、隷属の紋章でも付けて使ってみるか」
「にいちゃん、今の何? 俺と組み手する時使わなかったじゃん、今から組み手しよう! さっきの使ってよ」
「うるさい! 何でも拾って来るな。しかも罪人を。獣人は力が全てな部分があるらしいから、これで俺の言う事も聞くと思うが、大事な宿で罪人を働かせようとなどするな」
「痛ぇ、兄ちゃんだけには言われたくない」
拳骨を落としたら頭を抱えたロキがそんな事を言って来る。俺だけには? 何でだ?
俺がきょとんとしているとロキが捕捉し始めた。
「俺達、村の人達も拾われたようなもんだし、罪人って言うなら、オルテカさん達も、モンとキーもそうだろう?」
「ぬぐっ?! ま、まぁ今度から気を付けろよ」
「はーい。あっ、兄ちゃん、これでベルドラ行っていい?」
「あ? あぁ。モンとキーも帰って来るしな」
劣勢の俺は思わず二つ返事で許可を出してしまう。
本来なら今後このようなことはするなよと説教の一つでも、していたはずなのだが。
締まらない結果になってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1週間後、未だ部分支援の後遺症の残る、よく晴れた日。ロキは旅立ちの日を迎えた。
「タツヤ兄ちゃん、俺立派な冒険者になるよ。受けた恩も何倍にもして返すから!」
「タツヤ様でしょ。この子は何度言っても。レオナルドさんの言うことしっかり聞いて体に気をつけてね」
「ララ、ロキは別に従業員ってわけじゃなかったからいいよ。ロキ、恩返しとか考えてくれるのは嬉しいが、俺もお前がクランの戦力になるって思ったから連れてきたんだ。だから、まず生きろ。焦らないでいいから強くなって絶対に死ぬな。それだけ考えてくれればいい」
俺の冒険者としての激励はしっかりとロキに届いたようで、いい返事とともに頷いてくれた。
「ディーノもみんなの言う事聞いて、俺の代わりにここを守ってね、ついでにモンとキーも」
「ついでとは何だ! お前もオウルさんの地獄のトレーニングで苦しむがいい。ベルドラは甘くねーぞ!」
「はい、お任せ下さいロキ様。タツヤ様や、皆様のお役に立てるようにこのディーノ、粉骨砕身に努めます」
「じゃあ、みんな、行ってきまーす」
そんな軽い感じで。ロキはベルドラへと、旅だって行った。行ってきます......か。俺達のいる場所を帰ってくる場所だと思ってくれた事を嬉しく思う。
獣人の男はディーノといい、やはり獣人のハーフで、没落した貴族の執事をしていたらしい。
黒豹と人のハーフで、俺より年上の、渋さと、クールさを持ったイケメンだ。
今はバーで働かせている。落ち着きを取り戻したディーノは、バーの雰囲気にピッタリとハマっている。
女性客が増えた気もするが気のせいだろう
「私、ディーノさんの作ったカクテルが飲みたいわ!」
「ディーノさんは彼女とかいるんですか?」
うーん、物腰とかは執事時代のものが活かされていて、バーにぴったりなんだけど、やっぱりイケメンだな。いや、僻んでるとかでは無くてね。静かなバーに黄色い声が多ぎるのはいかがなものかと。いやほんと、それだけの理由ですよ。
あっ、モンとキーも帰ってきました。
たまにはストレート!
ポイントを下さい!
ブックマーク登録お願いします!
作者のモチベは確かに変わりますが、モチベが上がるのでとか、執筆意欲が、とか言うポイントのおねだりは、
「ポイントくれなきゃ書かないぞ!」
って作品の執筆を人質にしてるみたいで嫌ですね。
だからシンプルに。
「嬉しいんで、登録して下さい!」
にしておきます。




