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7話、(三本立て)別視点 トムとレナ(1)

閑話でプロローグで。どういうことだ?仕事で時間がなくなってしまい、見せ場が明日になりますので、明日まとめて読んだほうが良いかも。それなりの文字数になったので投稿しておきます。

僕はトム、セカンズの町の外れに住み、恋人のレナと慎ましく生活している。最近結婚を考えているが、どうも言葉が出てこない。町の先輩方の意見を聞いても、勢いだ!ムードだ!土下座だ!などみんな意見が違うので、参考にはならなかった。土下座はしないって決めている。


そんな折レナから旅行に行かないかと、誘われた。僕が忙しかったので、ずっとどこにも行けなかったからな。婚前旅行と称して4日間の休暇を勝ち取ってサーズの街への旅行を決めた。


何故サーズかって?セカンズからの近さで、すぐに行けることと、栄えている具合ではシースー(4つ目)やウーマン(五つ目)の町よりサーズがいいからね。隣の街と言ってもそんなに頻繁に行くわけでも無いし。


1日目、近場なので宿くらいは豪華に、と宿探しをした。


「トム、ここすごく綺麗よ!ここにしましょう。サーズには何回も来てるけど泊まるなんて初めてでなんだか楽しいわ!」


「そうだね、レナ。(料金は……よし)うん、ここにしようか」


僕は数字がわかる為、簡単に計算して受付に入った。そこは煌びやかな装飾がされた、ここならレナも喜んでくれるだろう。


「らっしゃい。ようこそ『偽りの外面』へ」


「一泊2人空いてる?」


「ちょうど一部屋。銀貨5枚です。うちは安いですからね。ヒッヒッヒ。鍵をどうぞ」


下卑た笑い方をする店主に、鍵を渡され部屋についた。部屋をあけたその瞬間、僕達は崩れ落ちた。僕は受付に駆け込む。


「どういう事ですか?あんな質素な部屋。こんなの詐欺だ?」


「えぇ?うちは宿名にも表してある通り、堂々と皆様にお教えしてますよ。キャンセルされますか?返金はしませんが。あんたらが部屋に行っている間に5名ほどお客様が来たのを満室だって返してますからね」


「トム、いいよ。今日はここに泊まろう」


結局、余分すぎるようなお金のない僕達は、そこに泊った。食事をしたところで聞くと、あそこは地元の人はみんな知っている連れ込み宿らしく、観光客がたまに騙されて入ると言っていた。


「トム、忘れましょうよ。明日はいいことあるわ!」


「レナ、愛してるよ」


「あんっ!ヤメて!そんなに激しくされたらもう……」


隣から聞こえる情事の声……壁の薄い連れ込み宿だったので僕達はそのまま眠った。


次の日、昨晩食事をした場所で聞いた評判のいい宿に朝一番で向かうところで、大きな立て看板を見つけた。『ファストで大人気のオールインのサーズ店本日開店‼︎』

オールインと言えば隣町ファストで今1番有名な宿じゃないか。ここにしよう!僕はドアを開けようとしたがドアは開かなかった。


「トム、今日から開店ならまだ開かないんじゃないのかしら?少し待ってみたら」


「そっ、そうだね」


僕が赤面してレナと待っていると、後ろに人が並び始めた。気付いたら20人以上いる。並んでいる人に聞くと、昨日まで看板は『近日開店』になってたらしく、僕達は幸運にも1番に並べた。


並びが50を超えた頃、何人かが騒ぎ出した。


「おいおいまだかよ、俺らもう鐘ひとつ分は待ってるぞ」


「開けろー!早く開けろ!って言うか俺たち全員泊まれるのかよ」


「申し訳ございません、時間の記載をしていなかったのはこちらのミスでございます。ただ今当店の総支配人を呼んで参りますので少々お待ち下さい」


若若しい、とても綺麗な女の子が中から出てきて、行列に驚き、すぐに総支配人?が何かはわからないがきっと偉い人だろうを呼びに行った。


少ししてさっきの女の子が、あと3つ鐘がなったらと説明する。僕らが早く並びすぎたからこんな騒ぎになってしまった。申し訳無い。


「皆様落ち着いて下さい。今から整理券をお配りします。僕の質問に答えて下さい!そこっ!喧嘩しない!開店前から出入り禁止にしますよ!」


「お客様は何名様ですか?2名様ですね。何泊されますか?3泊?こちらの1番の整理券を持ってお待ち下さい。3つの鐘が鳴る前に戻って来ればここで待たなくても大丈夫ですので。遅れた場合キャンセルさせていただきます。お客様は一名様……」


手際良く紙を渡された。どうやら、ここで待たなくてもいいらしい。朝ごはんを食べに行き、時間を潰してから宿の入り口に戻った。

これは本当に宿なのかと言うくらいに人が多い。なんのらさっきよりも更に増えている。


そしてあれから3つ目の鐘が鳴ったあと、さっきの男が中から出てきて一礼し、右手を上に上げる。

空に色々な色の付いた炎が花のように舞う。

思わず普段しない、詩的な表現をするくらいには綺麗だ。横で彼女もうっとりとしている。


「お待たせしました、整理券番号1番の方ご入場下さい。お客様は当店の1組目のお客様なので、スウィートルームの宿泊費と基本のお食事代金を無料にさせていただきます!」


「えっ、そんな?良いんですか?スウィートって……1日金貨10枚‼︎‼︎無理です無理です!払えませんって……ただ⁉︎」


「おいおい聞いたか?気前のいい話だな!あの2人、3泊するって言ってたぜ。金貨30枚だと!」


男の言う通りだ。スウィートルームが何を指すかわからないが、たまたま並んだだけで、金貨30枚の部屋が無料になるなんて。流石に断ろうとすると男は自分の口に人差し指を立てた。


「宣伝に使わせてもらってすみません。無料は本当ですので当店の最高峰の部屋をお楽しみくださいね」


宣伝に使ったと言う謳い文句で僕達を納得させて、綺麗な所作で僕達にお辞儀をしてから次の人の対応を初めている。


受付に行くと、上品な美人といった感じの人が、これまた丁寧な、まるでお貴族様のように優雅にしかし手早く鍵を渡してくれた。


「こちらがお部屋になります。サウナや食堂兼酒場など、色々ございますので、お楽しみくださいませ。何かわからないことがあったらすぐに私達にお尋ねください。後ほど部屋の説明に参ります。一旦失礼します」


案内してくれた人も、とても綺麗な言葉遣いで敬う様に話してくるので、まるで自分が何か偉いものにでもなったかのような勘違いを覚える。私達というのは、同じ服を着た人達だろう。清潔感のあっていい服だな。女性のは可憐で男性のはスマートに見える。


「ト……トム?」


「どうしたんだいレナ?……何、これ……」


部屋のドアを開けて僕達は部屋の前で放心してしまった。これが僕達の奇跡の様な旅行の本当の始まりだった。

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