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6話 コマーシャルは大切です!

誤字報告 ブクマ登録有難うございます。


オールイン・サーズ1号店、ファストに最初の宿を出した時のことを思い出す。暇だったなー。本当に……暇だったなー。いかんいかん、今度は違う!きっと戦略は間違っていないはず。


達也は頭を振って目を覚まし、オープン3時間前の今、最終チェックをしようとした。するとララが駆け込んできた。既に宿の制服を着ている。余談だが、最近前世の様に制服を支給することが決まった。やはり同じ服と言うのは気が引き締まる。


「ご主人様!大変です‼︎」


「どうしたの?何か宿で悪いことが⁈」


「いいえ、開店はまだかと言う人達の列が出来ています。とても入りきれない人数です」


テンションが……テンションが上がる!大変に良いニュースじゃないか。俺は紙に数字を書いた、ものを部屋数と同じだけ作り、ララに渡す。


「僕もすぐに行くから、これを持って下に降りてて」


「はい!」


総支配人の服に袖を通し、身嗜みを整える。昨日眠れなかったせいで身支度はほとんど出来ている。遠足前の子供?そっ、そんなんじゃなくて……さっ、さあ急ごう。


下に降りると詰め寄られるララが、あと三回鐘がなったら開くことを必死に説明している。


「皆様落ち着いて下さい。今から整理券をお配りします。僕の質問に答えて下さい!そこっ!喧嘩しない!開店前から出入り禁止にしますよ!」


こんな喧騒は予想してなかったが嬉しい悲鳴というやつだ。そう思いつつ、今日泊まれ無い人達の対応をどうすればいいか考える。


「お客様は何名様ですか?2名様ですね。何泊されますか?3泊?こちらの1番の整理券を持ってお待ち下さい。3つの鐘が鳴る前に戻って来ればここで待たなくても大丈夫ですので。遅れた場合キャンセルさせていただきます。お客様は一名様……」


整理券の横に宿泊人数を書き込み渡していく。ボールペン欲しい。そしていなくなって初めて君の大切さに気付いたよ。ネット予約、君って便利だったんだな。いつか魔道具で便利な予約方法を確立してやる。


そして……


「以上で本日の宿泊数に達しましたので、後のお客様は宿泊することが出来ません。そのかわりこんな早くから並んでくれたお客様には泊まらなくても来れる酒場で使える一品無料券を差し上げますので、ご利用予定の方はそのまま残って下さい。また、今日宿泊される方が帰ったらすぐに泊まりたいと言う方は、優先予約も受け付けます」


危ない危ない。荒れそうになった行列がなんとかおさまったよ。それにしても想定外だ。なんでこんなに並んだんだろう?受付で俺も入ってみて、聞いてみるか。


3つの鐘がなりはじめ、酒場などまだ開かない時間なのに依然として、人は減らないでむしろ増えている。好都合だ。この為に雇った魔法使いも本望だろう。俺は魔法使いに合図を出した。


上空ではこの日の為に練習させた花火魔法が上がった。辺りからは感嘆の声が漏れる。道具屋で作ってもらった色付きの火薬を風魔法で押し上げてから空で燃やすと言った簡単なものだけどね。そして僕は大声でみんなに聞こえる様に言った。


「お待たせしました、整理券番号1番の方ご入場下さい。お客様は当店の1組目のお客様なので、スウィートルームの宿泊費と基本のお食事代金を無料にさせていただきます!」


「えっ、そんな?良いんですか?スウィートって……1日金貨10枚‼︎‼︎無理です無理です!払えませんって……ただ⁉︎」


「おいおい聞いたか?気前のいい話だな!あの2人3泊するって言ってたぜ金貨30枚だと!」


大変いいリアクションだし、ガヤの人も素晴らしい!サクラじゃないよ。いやほんとに。盛り上げは大体終わったので後は通常の業務だ。


「お客様は何がきっかけで、当宿に来ていただきましたか?」


「辺境のファストでサウナって言うのが流行ってるって聞いてな。ここにもあるんだろ?」


「行商人が前は何もなくて行きたく無いって言ってたのに、最近はファストに行くのが楽しみなんて言ってたんだよ」


なるほど。俺が思っているより、サーズの人は流行に敏感でそしてネットが無いこの時代、口コミの効果がかなり大きいんだな。冒険者時代にも取材されたし、今度新聞に広告でも出してもらおうかな。


そんな訳で、来店動機もしっかりと聞いて、狂乱の初日は終わった。古参のメンバーも疲れる程の営業に、思わず俺も支援魔法で全員をドーピングしながら働いた。


余談だが1組目の2人はお付き合いしていたらしく、この三日間の最後にプロポーズ成功して結婚が決まった。何故知ってるかって?バーで起きた出来事だからさ。


「本当にありがとうございます。最高でした。料理もサウナもあの、バーってやつも。またこの宿屋に泊まりに来ます。今度は来年の結婚記念日のお祝いに!」


「その時はまた何かサービスしなければなりませんね。トム様、レナ様……いえトム様ご夫妻のまたのご来店を心よりお待ちしております」


宿の台帳をみてしっかりと名前を呼んで接客すると、目を丸くして驚いた後また2人で喜んでくれた。こんな幸せを見届けるのも宿の醍醐味だよな。

おかげさまで書き始めてから約2ヶ月25000PVとなりました。これからも、頑張っていくので応援よろしくお願いします。

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