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5話 面接(後)

更新時間が定まらずご迷惑おかけします。


「なぁ、雇って貰って何だが、俺達に宿で何が出来るんだ?」


「あぁ、説明するからついて来てくれ」


面接の翌日、厨房と宿屋の従業員の面接の前に既に合格している付与術師に仕事を与えることにした。


スウィートルームに行き、ダンダルに依頼して作って貰った、ワイルダートレントのキングサイズのベッドを見せる。


「これは!ワイルダートレント⁉︎」


「へー、わかるのか。良い素材の方が付与がたくさん掛けられるんだろ?このベッドに『快眠』『自動回復』『適温』『爽快感』の効果のある物を付けてくれ。複数付与が出来ない素材の物には、『自動回復』だけで良い」


「なんて、素材の使い方を、まぁ主人の命令だ俺がやろう。4重付与なんて上位の付与術師しか出来んからな。それにしてもベッドにとは」


「他にも椅子に疲労回復とか絨毯にリラックス効果のある付与なんかもあれば掛けてくれ。わかんないよなー。なんでみんなこんな便利なもの戦闘以外のところで使わないのか」


それを聞いてサンバ達は絶句する。付与術は支援魔法より効果が薄いものが多いが継続時間は格段に長い。例えば服や鎧に『疲労回復』を付けて冒険する場合だってあった。


効能が長い様々な補助効果、それは冒険者に拘らなければ、無限の可能性を秘めていた物だと気付く。


「俺達は属性付与を武器にするのが付与の花形と思ってたよ」


「属性付与もやってもらうよ。酒場のコップに氷属性とか付けたら、いつも冷たいのが飲めるんだろ?支援魔法もそうだったがみんなもっと考えれば不遇なんて言われなかったのに」


「そんな使い方が……支援?タツヤ……あんた、支援魔術師を変えた男、『万能指揮者』のタツヤ=ニノミヤか?これで俺たちも救われるのか?」


「えっ、うん。よく知ってるね。でもその呼び方はやめてね。そんな大袈裟なもんじゃ無いよ。支援も付与もちょっと工夫しただけだよ」


俺がタツヤ=ニノミヤと知って、喜んでいるのはさておきモチベーションは上がったみたいだしこのまま頑張って貰おう。次は厨房だな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よーし、そこまでだ。料理を運んでくれ」


「ブラッディブルのステーキだ。この特製のソースで食ってくれ。今日から料理長の俺の渾身の一皿だ」


「オークの丸焼きから1番良い部分だけを取って更に炙り、旨みを加えて、最高の状態に仕上げた物だ。俺の皿に平伏しな」


「この辺では珍しい海の魚を使った塩煮魚だ。魚の旨味を凝縮した一皿、アンタを天国に連れて行ってやる」


「あの、私は働かせて貰えれば……野菜のスープです。滋養のあるモノを優しい味わいにした、元気の出るスープです」


どうやら間に合ったようだな。10人居たはずだがここに居るのは5人か。何かしらの審査があったようだな。そしてみんなクセが強いな。どこの料理漫画から来たんだ?


「どれもうまいがやはり料理長は俺だな。今回は高級食材を揃えたものや、贅沢に使った奴が多かったようだな。最初に言った通り材料費は出すが、お前らに聞きたい。今出してきた料理をいくらで出すつもりだ?」


「あん?料理にそんなもん関係無いだろ?うまいもの作った奴が偉いんだよ」


「最後のスープ以外は高級レストランで出てくるような料理ばかりだったが。お前らはどこで働くんだ?レストランか?貴族の専属料理人か?」


そこまで言われて、やっと気付いた様で皆うなだれた。自分の腕をアピールする事に集中しすぎて食べさせる相手のことを考えてなかった事に。


「それでもあんたが料理長だって事にはならないだろ?アンタの腕がヘボけりゃ、料理人はついて来ないぜ」

そう言われたヘイホーは奥から人数分の料理を持ってきてテーブルに置いた。


「召し上がれ。オークの骨と魚のアラでスープをとり、ブラッディブルの内臓と、滋養のある野菜の端切れを具に使った煮込みだ」


「どれも俺たちが捨てたゴミじゃねえか、それに魚と肉と野菜が入ったスープに、臭みのある内蔵だと?そんなものがうまいわけ‼︎……」


料理人達が絶句する。俺も言葉に出来ない。なんでこんなにクセの強い食材をまとめ上げて上品な味の煮込みが作れるんだよ。普段の姿からはやはり想像できないがやはり天才だ。ドヤ顔やめろ!


「完敗だ。俺の負けだ。また腕と……心も磨いてくる。その時はまた勝負してくれるかい?」


「あぁいつでも来な」


料理人達が帰って行こうとする。

いや、おかしく無い?これ勝負じゃ無いんだよ。面接ですよー。ヘイホーに拳骨を落とし、慌てて合格者を発表させる。


「ってて、ワリーワリー。俺もつい雰囲気に乗っかっちまった。5人とも合格だ。下働きからのもの、副料理長などおいおい決めていくがよろしく頼む」


「「「はい!」」」


これで厨房も大丈夫だな。最後は呼んである、宿屋の従業員達だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「連日足を運ばせてしまって申し訳ない。君達にはオールインの接客を受けて貰う。その後訓練すれば同じことが自分でも出来る。と思った人だけ残ってくれ」


俺達はファストの町でやっているいつも通りの接客をする。


「「「いらっしゃいませ」」」



出迎えの洗練された動きにまず驚かされる、応募者たち。部屋への案内や宿の説明、その一つ一つをみて1人また1人と応募者は減って行った。


「ちょっと待ってくれ、俺はサーズで人気の宿で5年働いていたがこんな事はした事がないぞ。アンタは誰も雇う気がないのか?こんなの宿屋じゃねえ。貴族様の使用人でもなければ出来ない!」


「まず、サービス業をやってた人間が面接に来て、その店の代表に向かって『アンタ』なんて口を聞かない事。それに出来ないと言ったな。宿屋じゃない?現に出来ているだろう?ファストの町のオールインでは全員できるし、そこにいるララは1年前まで農業しかやったことがなかったが今は上から数えた方が早いくらい仕事のできる子だ」


宿屋じゃない発言に若干頭に来た達也が底冷えする様な声で質問者に話すと、その男も含め、一気に10人程の人間が帰った。


「うちの宿は他より給料が良い。良いのにはそれなりに理由があると言う事だ。経験なんて関係無い。やる気と根性のあるやつだけ残ってくれれば、後は俺達が教えよう」


その後一通りの接客のデモンストレーションが終わる頃には一番最初に100人いた応募者は僅か4人になっていた。


「以上で面接を終了する。残った人は全員合格。このレベルに達するまで厳しくいくからみんな頑張って」


「「「はい!」」」


激動の面接は終わり、翌日からは恒例のあの行事を迎える。


「「「いらっしゃいませ」」」


「まだまだ揃ってない!」


「「「ありがとうございます」」」


「礼の高さがバラバラ!」


「なんで厨房や、酒場の人間まで……」


「そこっ!何か言ったか?」


「なんでもありませーん!!」


「よーし1時間休憩、識字と計算のできないものは孤児院へ、出来るものは引き続き接客特訓!」


「「「はいぃー!」」」


そうして形になってきた頃、オールインサーズ1号店は開店を迎えた。

最近ハマっているものはマグロのアラ、安くて煮付けにすると抜群にうまい。アラから出る出汁ってうまいですよね。

札幌にあるラーメン屋さんで季節のアラと豚骨を煮込んだラーメン『あらとん』おすすめです

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