10000PV記念! プロポーズ大作戦!
皆様のおかげです有難うございます。
とにかくめでたい事を書きたくて書きました。
これは未来のお話。
パン!とくす玉の割れる音がする。
「おめでとうございます。貴方は当オールイングループ10万人目のお客様になります。ってお前かよ!」
「なんだとはなんだ、こっちは客だぞ!Aランク冒険者様だぞ。いい部屋を用意しろよ」
ちなみに10万人目のお客様が都合よく達也がいる店舗で現れる訳がない。10万を越えたのがわかってから、今日来た10人目又は10組目のお客様を記念の対象にしたのだ。
顔見知りだが、周りのお客様への宣伝も兼ねているので、ド派手にセレモニーをする。
「おめでとうございますライネル様、こちらは当宿の、スペシャルデラックススイートルームのペア宿泊券になります。勿論最高級の食事も付いてますので」
「えっ?マジ!いいの?サンキュークランマスッムグ!」
「余計な事を言うな!やらせだと思われるだろ。なんで身内にやらなけりゃならないんだ。金貨80枚は楽に超えるチケットだぞ」
そう、このライネルという男は竜の息吹の団員なのだ。何故このタイミングで来やがるんだ。と達也はうんざりした。
「で?泊まるのか?まさかA級冒険者様はクラン割引なんて使わないよな?」
「うっ、それは権利だろ。依頼が終わってちょっといい宿に泊まりたいんだよ。いいだろ?なっ!マスター」
「いい部屋に泊まるならいいよ。A級冒険者様に相応しいのはこの一泊金貨20枚の部屋なんてどうだ?」
「わっ!悪かったよ調子に乗って。実は相談があって来たんだ。誰に相談してもマスターに言えって取り合ってくれねーんだよ」
相談?こいつらのパーティは割とうまくいっているはずだけどな。こないだのクラン会議でも何も問題はないと報告が上がっていたが。奥の会議室に通して話を聞く。
「なんだ?言って見ろ」
「実は、俺結婚しようと思って」
「すればいいじゃないか」
「いや、プロポーズがまだで断られるのが不安でよう。それで嫁が数人いるし、アメリアさんがたまに酔って言う『タツヤは忘れられないプロポーズをしてくれたわ』女にそこまで言わせたマスターに相談しに来たんだ」
あいつは外で何を言っているんだ?いい意味か?忘れられないって?いい意味だよな?きっと。まぁ今では(自称)恋愛マスターと言われる俺が相談にのろう。
「それで、どんな女なんだ?」
「マスタぁ!ありがてえ。俺がよく行く酒場の女でとにかく面白い事が大好きだ。自分で踊ったりもする。それに派手なことも好きだな。劇とか踊りとかも見に行ってる」
あぁ、なんて……まるで説明しているような特徴の女の人じゃないか。それならこれしか無いな。
「ララ、ハケン村に連絡して踊りの出来る成人した人を男女半々位で15人くらい集めてもらって」
「はい!タツヤさん……あっ!タツヤ」
「……たまに出るね」
「これでも頑張ってるでしょ。だ・ん・な・さ・ま」
ニヤリとする達也と照れながらもからかい返すララを見たライネルは角砂糖を噛み砕いたような気持ちになる。
「俺もこんなふうになるのかなぁ」
呟いた声は消えていった。
「俺は何をすればいいんだ?」
「とりあえずハケン村から人が来るまでダンスの練習だな。合わせなきゃならないし、基本のステップでも習ってこいよ」
「俺がダンス?」
「あぁ。先生は俺が探しておくから。あと、本当に彼女がその性格なら成功すると思うけど、人を借りた金とか経費は払えよ。手数料は成功したらでいいや。最高のプロポーズにしてやる」
訳の分からないまま金を取られるのかと思い、それでも最高のプロポーズにしてやると言う言葉を信じて、ライネルは踊り続けた。
そして当日
「楽しみね、ライネル。でもオールインプレミアムに招待してくれるなんてどう言う風の吹き回し?」
「いっ、いっ、いやぁたまにはな。俺もA級になってしばらく経つしこれくらいはしてやりたいなと思ってな」
ふーんと、にまっとした明るく快活な彼女はルイジアナという。俺ことライネルは人生で1番緊張している。これがマスターの言ってたやつか。
「いいかライネル、もしかしたら君は今まで味わったことのない緊張に襲われるかもしれない。でも、それはそう言うものだから。僕も毎回人生で1番緊張したよ」
「何言ってるんだよ、たかがプロポーズだろ?そんなものはこの間倒したサイクロプスに比べれば、命の危険の無い簡単なお仕事だよ。俺は彼女を喜ばせたいだけだからな」
今日が終わったら、マスターに謝ろう。そう決意したライネルはホテルにチェックインして、少し街を散策。その後レストランに着いた。
「初めて来たけど、超高級宿のレストランって、なんかテーブルの配置がおかしいのね。あんなにポッカリスペース開けて勿体ない」
「色々イベントとかやるのに配置を変えているらしいぞ。楽団が来たり、歌手が来たり」
「へー、じゃあ今日も、何かあるのかしら」
「さっ、さぁな?」
酒場で働く娘らしい感想を心臓が喉から飛び出そうなテンションで、受け答えするライネル。そして、食事が運ばれてくる。デザートを食べ終わったのが合図になる。レストランは満席、なるべくゆっくりと食べ始めたライネルの耳に達也からの咳払いが聞こえた。
「あー、美味しかった。凄いのねオールインの料理って」
「……」
「ねぇ、ライネル聞いてる?」
「こちらのお皿お下げしますね。食後のお飲み物でもお持ちしましょうか?」
会話に割り込んで店員が入って来た。ルイジアナは蜂蜜酒を頼んで皿を持った店員さんは下がっていく。真ん中のスペースを通って。するとそこで奇妙な事が起きた。路上で動かない芸をする人の様に皿を持ったその従業員が真ん中で止まってしまったのだ。忙しく皆が動くレストランで静止というのはとても目立つ。そのため周りもザワザワとし始めた。ライネルの心臓もかなり煩くなっている。
「ねぇ、あれ大丈夫かなぁ?止まってるよ」
「……ああ大丈夫だよ」
別のウェイターが2人駆け寄り、1人は止まっているウェイターから皿を受け取りはけていく、そしてもう1人は、止まってしまった。2人になり余計に目立つレストランの中心、周りの客からのザワザワ、それが最高長に高まったとき、ドーンと太鼓の音が鳴り2人が弾けるように踊り出した。
「えっ、えっ?何これ?演出?あっ、1人増えた、音楽も」
「あの踊りがこんな風になるのか」
ライネルの呟きは気付かれず、突然3人のウェイターが踊っている事にビックリするルイジアナ。ピアノやバイオリンでアップテンポな曲がBGMに流れる。
「あっ、他のお客さんの手を引っ張ってる。そんな急には無理だよ……って踊ってるー!
あっ、流石にホテルの人が止めに来た、ってあの人達も!!踊ってる!何これ凄い!」
そう、フラッシュモブだ。達也が彼女の性格を聞いたときこれしかないと思えた演出。いつの間にか人は増えて、踊っているのは10人を超えている。群衆としてのダンスはまだ流行り始めなので余計に楽しく見えるだろう。
「えっ、あんな子供が?まさか?入ったわ、ライネルあの子達も踊り子なのよ!凄い、ちょっとフルプレートの冒険者さん?不自然だってば!」
興奮したり笑っているルイジアナ、その横で覚悟を決めたライネル。そうしてダンサーが数人、ライネルたちの席に来る。ノリがいいはずのルイジアナは断ろうとする。それは本職ゆえにこの調和を壊したくないから。
「無理よ、私達は。ごめんなさい。私達は見てるから楽しませてねっ!ライネル。ライネル⁉︎」
「ちょっと行ってくる」
ライネルが踊りに加わると、ダンスが一変した。他のダンサーがバックダンサーのようになり、先頭では、ライネルが踊っている。拙いながら他と調和した動きをするライネルに驚くルイジアナ。
「ウソ?凄い!ライネル凄いわ!」
ルイジアナのテンションが最高潮と言うところで、曲は終わりいつの間にか彼女へのプライベートダンスとも言える位置取りでダンスは終わった。刹那ライネルが冒険者の脚力で後ろに跳躍する。いつの間にかそこにはレッドカーペットが敷かれている。
付き人のような人が彼に近付き両側から服の袖を引っ張ると、服は両側から真っ二つに破けて、白い礼服に身を包んだライネルが現れる。
ライネルはレッドカーペットを歩いてくる。その先にはもちろん、ルイジアナがいる。
「ルイジアナ、いつも俺を楽しい気分にさせてくれるお前が大好きだ。落ち込んだ時も、疲れた時もお前といると全てが癒される。今日みたいに俺も毎日お前を楽しませるから、俺と結婚してくれ!」
周りからは受けてやれよと囃し立てる声や指笛の音が聞こえる。ライネルの中では判決を待つ容疑者のように時間が経ち、そしてルイジアナが涙声口を開いた。
「うん、でもあなたを楽しませるのは私だけの役目だから取らないでね。あなたは今のあなたのままで充分に大好きなあなただから」
熱く抱擁をする2人に歓声が高まり2人にとっての最高のプロポーズが成功した。この夜ライネルが10万人記念で当てたチケットが使われスイートルームでナニがあったのかは言うまでもないだろう。
その後同じ時にレストランにいた数人が、控えめな彼女の性格を考えないで、しかもプロを雇わず友達だけで構成したフラッシュモブをやって、悲惨な結果を招いたことも追記しておく。
「えっ?何これ、プロポーズ?これが?嫌よ。」
「お前、絶対うまくいくって言ったじゃないか?」
「知らねーよ。お前のダンスが悪かったんだろ。俺は相談されたから、1番感動的だったプロポーズを教えただけだよ。」
「ポイントは?ブックマークは?」
「この分じゃ無理だな」




