第28話 コンマンの最期 死んではいない。殺してはいない。
「コンマン、何をする気だ!そこはもう俺の宿だぞ!」
「くくくっ、待っていましたよ。タツヤ!貴様だけは絶対に許さない。私の私兵を持って捉えて永久の苦しみを与えてやります」
やはり謎にと言うか、まぁ恨まれていたか。けどちょっと恨みすぎじゃないか?商売敵と言うのはこんな事じゃないだろう。
「貴様さえいなければ……父の力ではなく自分で私は町で一番の宿屋にもなった。商人として一人前と認められた。マリアのことも私が治してヘイホーから奪い返すはずだった」
「それは流石に逆恨みじゃないか?マリアは治さなければ死んでいたかもしれないんだ。それを恋愛の道具みたいに言うなよ」
「死ぬか!私がかけさせた呪術だぞ。病気では無い。死ぬこともない。ただヘイホーが全てを失う1番のタイミングで治せばそれで上手くいったものを。何故治る?私の呪術師も呪いが返ってきて今も苦しんでいる。どうしてくれる!」
うわっ、本気でこいつだったか。許せんな!全員で来なくて良かったよ。ヘイホーとマリアがいたら大変なことになってたろうな。呪術師とかマジで関係ないし。
「卑劣なお前に最後のチャンスをやる。今すぐ正々堂々決闘しろ。人を集めに行くことは許さん。んっ?貴様も冒険者を雇っていたのか?その少人数で我がフォックス商会の精鋭100人を相手取ることができるかな?」
「タツヤ、こいつらは燃やして良いのよね?私の話を邪魔したのはこいつよね?あなたの揉め事の相手もこいつよね?」
あぁ、キレてる。デレモードのアメリアは正直で愛が深い。そして他の奴らもやる気だけど結構飲んでるよな。負ける事はないが、この状態だと、ある心配が起こる。
「コンマン、俺を入れて今ここにいる7人以外は集めないから明日にしないか?お前は許せない奴だが、殺したくないんだ」
「面白い冗談だな小僧!町でこれ以上騒ぐと衛兵が来る。町の外に出ろそして今すぐ私と戦え!さもなければ今すぐにコイツらはこの宿を燃やす」
コンマン、お前はこの町に来て俺が静かに宿をやろうとしたのを妨害した?敵だ。こんなことになるならせめて最後はシリアスに戦いたかったよ。
「殺せ!皆殺しにしろ!んっ?女どもはとんでもない上玉だな?生け捕りにしろ、マリアを妻にし、コイツらを妾にする」
その一言でレオのこめかみと俺のこめかみに青筋が立つ、もういいや疲れたよコンマン。あっさりといかせてやる。言ってること支離滅裂だし、もうダメだろお前。
「支援魔法を飛ばす!開戦だ!」
俺のその一言で開戦したが、それは一言で言うなら戦いではなく蹂躙。漫画の一コマみたいに一瞬で敵の精鋭とやらは全滅した。支援魔法飛ばして良かったよ。酔っ払いは、加減が無いからな。どう高く見積もっても敵はB級相当が数組で後は、雑魚だったし。
俺は支援魔法を敵にかけて本当に良かったと思った。
アメリアの炎を間一髪逃れたコンマンは結局マリアへの呪いや、私有地への立てこもり、脅迫などで捕まった。今はとても大人しくしているそうだ。
「へっ、へへっ、炎が爆発した。マリアは私のものだ。その蝋燭は明るすぎはしないか?炎が炎が!」
「……」
後は司法に委ねるのみだ。俺が関わる事は無いだろう。
こうして俺のファストの町での不毛な戦いは終わり、2軒の人気の宿を切り盛りして行く平穏な日々が訪れた。
赤き翼の連中はと言うと、まだいる。いい加減ケジメをつけろと囃し立てて来たり、モンとキーから連日泣きが入ったりしている。ロキなんかはもうレオを師匠のように仰ぎ、俺との日々など無かったかのように懐いている。悲しくなんてない!
そして、明日には赤き翼がベルドラに帰ると言うタイミングで俺はアメリアをスマートにデートに誘った。
「あの、アメリア……さんこれからちょっと出掛けないか?」
「ひっ?えっ?しょっ、しょうがないわね。ちょっと待ってて、準備してくるから」




