第20話 ヘイホーとマリア(仮終)
とりあえず、無理やり感もありましたが閉めました。次回から本編に戻ります。私は楽しいので、2章終わったらまた書きますね。
その後私達は街を離れ、件の港町で食べ歩きをした。港町は初めてだったので楽しかったのですが。
「串焼きの屋台を出すのではないんですか?」
「あぁ。折角の初めて来た港町だし、違うやつの料理を学んでそこからまた自分の店で出す料理を決めるんだ」
「大変なんですね。ヘイホーさんはすぐになんでも作ってしまうので、そんなに大変とは思ってませんでした」
「最初は真似からだよ。でも大変じゃないんだぜ。自分の味って事はオリジナル料理って事だ。特別な一皿がどんどん増えていく。それを人が食べて美味しいって言ってくれる。嬉しい事だよ」
「ヘイホーさんは、本当に料理人なんですね。さぁ!今日も頑張りましょう!いただきます」
1週間くらいで屋台を開き、そこでもヘイホーさんの料理は人気となった。
「うめぇ!最初は他所から来た奴がなんで食い飽きた魚介類の料理をわざわざ出すんだって思ったけど、お前の料理は絶品だな!タレがうめえ」
「ガトー、何度も言うがソースって言ってくれよ。割と洒落た料理を作ったんだから。ほれ、毎日来てくれるからサービスだ!」
鶏肉でしょうか?あっさりしたお肉にこの屋台で出してる海鮮料理のソースを掛けたの?絶対美味しいに決まってます。
「アルマ……よだれ」
「ジュル……」
「ちょっとはえーけど昼飯にするか」
新しい町も良い人ばかりでしたがまた2ヶ月ほどで騎士様が来ました。
「トスカーナ公爵家のクローディア公爵令嬢の命で、マリア=フォン=エルデライトと言う伯爵家の令嬢を探している。見つけたものや、情報提供者には謝礼も用意しよう。ここに似顔絵を貼っていく。ギルドにも同じものを置いていくので見てくれ」
似顔絵?ディアが書いたのかしら?折角新しい街にも馴染んできたのにこれ以上ヘイホーさんに迷惑は掛けられない。私はここから去る事を決めた。
夜に宿屋を閉めた後、私はヘイホーさんの、部屋を訪れた。
「おう、どうしたアルマ?こんな夜更けに?」
私は首を振り答える。
「私は……私の本当の名前は、マリア=フォン=エルデライト。伯爵家のものです。今まで本当にお世話になりました。私を騎士の所へ連れて行って下さい。報奨金がもらえると思います」
「まさか本人かよ……だとしたらあの似顔絵、公爵令嬢様は絵が下手なんだな。似てねー!あー腹痛え」
笑い出したヘイホーさんに私はイラついてしまった。戻りたくも無い貴族の世界にこの人のために戻るのに、何故この人はこんなに呑気なんだろうと。
「今までありがとうございました!報奨金はお礼と思って下さい。いずれ私が貴族に戻ったら別のお礼もします」
「まぁ待てよアルマ、いやマリアか。お前本当に帰りたいのか?俺はこれからも世界を回って色々な料理を学ぶ。その時に愛想も良くて、計算に読み書きまで出来る助手が欲しいと思ってるんだよ」
「でも、それではもし匿っていることがバレたら貴方は公爵家から罰を受けるかも……」
「そんな泣きながら言われてもなー。俺は1度拾ったものは最後まで面倒見るタイプなんだよ!お前がこの旅から旅の生活に飽きるまででいいから来いよ」
いつからか気付かなかったが、私は泣いていたらしい。感情も隠せない貴族失格の、私は弱い事にヘイホーさんについて行くことを決めた。
翌日長かった髪を肩の上まで切り、似顔絵を見にいくと、ヘイホーさんは吹き出し私は軽く怒りを覚えた。ディア、本当に探す気あります?
それから各地を旅して料理して回って数年後始まりの町と呼ばれる田舎のファストという町についた。ヘイホーさんは2回目だと言う。
「マリア、この町なら騎士も来ないと思うし、ここで宿屋をやらないか?今迄貯めた金もあるし、知り合いの不動産屋のじじいもいるんだ」
「ヘイホー、それはつまりそう言うことと受け取っていいの?」
こうして結婚してこの町で宿を開く事になりました。更に数年後、行商人の間で評判になった宿屋にいる『マリア』の噂をききコンマンが来ました。
「見つけたぞ私のマリア。てっきり死んだものと思ったよ。私の婚約者。さぁ私のもとに来い」
「ママー、このおじさん誰?」
「ママ?おじさん?婚約破棄の慰謝料は払われたが、愛し合っていた私達にそんなものは関係無いはずだぞ!なのにお前はこんな不貞を!旦那がいるのか?今すぐ別れてガキを捨ててこい」
婚約は破棄されていたのね?これがお父様の言っていた良い話かしらでも一体誰が?聞きたい気持ちはあるけど藪を突く事もないので、その話は聞かなかった。
「ご冗談を商人様、私はただの宿屋のマリアです。どなたかと間違えていませんか?」
「いいや、お前は美しい私のマリアだ。そう言う態度に出るならこちらにも考えがあるぞ。ひとまず帰ろう。また会おう愛しのマリア」
そう言ってコンマンは帰っていきました。本当に間違ってるんじゃ無いでしょうか?愛し合った記憶など微塵もないんですが。
それから数ヶ月して彼は戻って来て、宿を新しく建てて始めました。実家の商いは今でも調子が良いのですね。彼の宿は暇そうでした。
ある日私の体調が悪くなり、寝たきりになると、金策でヘイホーが働けなくなってしまいました。私達が育てた3人も引き抜かれてしまい、その後コンマンの宿ははやりだしました。
「そしてタツヤ様が来て医者にも原因不明と匙を投げられた病気を治して下さって今に至ります」
「フー……。多少端折ったところもあったんだろうけどいい話だったよ。タイミングもかなりいい。みんな奥の部屋に下がってて」
初夜の所でしょうか?それともプロポーズまでの流れ?タツヤ様意外とこう言う話好きなんですね。またそれは時間のある時でも思い出しましょう。私は顔のとろけきったララと泣き過ぎている旦那の首根っこを掴んで、奥の部屋へと避難するのでした。




