第16話 急襲
次回、全米が泣いた!続けて見てくれる読者が待ち望んだ!
「ヘイホーと、マリアの恋物語」
2年の時は私を一人前のレディにしました。自分でこんな事を言うのは本来どうかと思いますが。言わせて下さい。ダメ元でお父様が頼んだ公爵家の行儀見習いは本当に大変だったんです。
「マリア、今度貴方の貧乏伯爵家に遊びに行くからね。公爵令嬢のわたくしをもてなす準備をしっかりしておくのね」
「わかっているわクローディア様しっかりともてなしてあげるから。ここで学んだ礼儀で」
「もー!様は無しって言ったじゃない友達でしょ!それに……」
「フフッ、わかってるわディア。また必ず会いましょうね。貴方は私の1番大切な友達だからね」
別れを惜しみ、再会の約束をして、ディアと別れた。出会いは最悪だったけど、今では最高の友達だ。出会いを語ると長くなるで……名ばかりの貧乏伯爵家と公爵家の令嬢でなんやかんやありました。今では公爵様の家に行くほど仲良いです。
さぁ懐かしのエルデライト領に戻りましょう。フォックス親子が来るのが嫌で2年間一度も帰って無かったけど、あしらい方も覚えたしこの2年の成果を見せてあげなきゃ!
お父様がそれについて良い知らせがあると言ってたけど何かしら?あの人達の中身が変わるとは思えないし、金持ち爺さんの後妻が
空いたとかかしら?
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エルデライト領の町の端、もうすぐ城が見えてくると言ったところで町が騒がしい事に気づく。そして城が見えるところまで来ると信じられないものが目に入った。城が赤い……
なんで?私の家が燃えてる。騒がしいと思ったのは戦いの音だ。獣の雄叫びの様な声が聞こえる事から蛮族達がまた攻めてきたのかと予想する。
領軍に勝てる程の力は無いはずなのに、城は壊滅が確定するほど燃えていて、山外れの民族が用意したにしては火力が強すぎる。泣き叫びたい。何があった?って聞いて取り乱しそう。抑えて!頭の中は常に冷静にってメイド長様も言っていた。町の人も不安がっている。
「お嬢様ー!マリアお嬢様はおりませんか?お嬢様ー!」
思考の渦に飲み込まれそうになり、必死に冷静さを保とうとする私の脳味噌に聞き慣れた声は氷水で顔を洗ったみたいな感覚で目を覚まさせる。弾ける様に私は馬に乗るバルトロに駆け寄る。
「バルトロ、コレはどう言う事なの?お父様とお母様は何処?」
「蛮族が攻めて来て奇襲を受けました。奇彼奴らは、最新鋭の装備を身につけ最高級の魔道具を使っていました。蛮族の格好をしていましたが、数も多過ぎた。あれは……そんな事より早く逃げましょう。こちらへ!」
「だからお父様たちは?城のみんなだって、逃げなきゃ!シスは、アマンダは、なんであなたしかいないの!!!」
「旦那様は蛮族との戦いに出て怪我を負ったので逃げる事は叶いません。奥様は体の弱い自分が逃げてもと言って旦那様のそばに残る様です」
「私も行くわ!私もエルデライト家の娘としての矜恃があります。この2年間護身術も学びました。自分の身は自分で守れます」
興奮して来た私を嗜める様にバルトロはゆっくりとまるでお昼のティータイムであるかの様な声で話しかけて来た。
「お嬢様、私が旦那様に受けた最後の命令が、お嬢様を見つけて逃げる事なのです。今日公爵家から帰ってくることがわかった事は幸いでした。他のものも旦那様が指示を与えております。残るもの、逃げる者全て私達は自分で決める権利を頂けました」
いつもの好好爺なバルトロでは無く、決意をした1人の男がここに居た。この人は私を逃す為に逃げる決意をさせられたんだ。『残る者』と言った。仲がいいと言っても結局は雇用主と使用人の関係なのに、最後までエルデライト家と共にする人も少なく無かったんだろう。
「わかりました逃げましょう。エルデライト家を次代につなぐ為に」
「お供しますこのバルトロの命が尽きるまで」
そうして私達はエルデライトから逃げ出した。取り敢えず1度北部から離れ、行儀見習いの時に仲良くなった人の家を頼ろうと、決めてバルトロの知り合いもいると言う町を目指した。2週間は馬で旅をしたと言う時、私の目は盗賊を捉えて、私の耳は最も聞きたく無い言葉を聞いた。
「お嬢様ここは私に任せてお逃げ下さい。なぁに後から追いつきます。コレでも昔はそこそこやれたんですよ」
「バルトロ、死ぬ事はなりません。私が逃げたらあなたも必ず逃げ延びて下さい。私の子供を抱くまで死ぬ事は許しません。エルデライト家長女、マリア=フォン=エルデライトの命令です」
「承知致しましたお嬢様。それでは後ほどお会いしましょう」
バルトロが戦えるのは聞いたことがあるが、偵察や罠の察知などが専門と聞いていた。護衛しながら戦うのは難しい。バルトロ単独なら逃げ切れるかもと思い、馬に乗り私は逃げ出した。いや、私は見捨てたのだ。バルトロを置いて逃げたんだ。自分に耳障りのいい言葉を使って。
何日経ったかわからないが、私は目標の町についた。知己の伯爵家に行き、家名を名乗ったが文字通り門前払いをされてしまう。
「モーブ伯爵の御息女の友人のマリア=フォン=エルデライトと申します」
「お前の様に汚らしい物が伯爵令嬢だと?嘘をつくな!この所没落した家を装って御当主様に謁見しようとする輩が増えているからな。痛い目に会いたく無ければ帰れ!」
門番の正しい反応なのだろうか?確かに今の私は物乞いの様に見えてもしようがないだろう。しかし私はそこまで出来た人間では無いので、あなたの事は忘れません。恨みます。
バルトロの知り合いも見つからなかった。私は何かあったらこの町で落ち合うと決めていたバルトロを待つしか無かった。いや、待つしか無かったわけでは無いが違う知己を頼りに移動する気力もなく、ただ漫然と毎日は過ぎていった。
2週間経ったがバルトロは来ない。行儀見習いの経験を生かして、働かせてもうことも考えたが、住所不定の名字持ちの汚い服装。今考えると私でも雇わない。一度だけ採用されたと思ったら娼館に売られそうになったので軽い人間不信にもなっていた。
「こんなとこを見たらお父様はなんて言うかな?ディアなんて罵って来そうね。それでその後にお風呂に入れてくれて着替えをくれてご飯を食べさせてくれるの。フフ、あの子人は良いのに口が悪いから」
諦めにも近い感情で独り言を言い私は日課のバルトロ探しの最中、倒れてしまった。
「ハッハー!今日も頑張って働くかな。ん?、こんなとこで行き倒れか?おっ!まだ生きてるじゃねえか。おいあんた!おい!」




