閑話 ミヤイの憂鬱と企み
すみません体調不良で、短い閑話だけとなります。感想もいただき、誤字報告もありがたく、頑張らなければいけない時期なのですが。寝ます。
おかしいな。何故こうなった?私の名はミヤイ=ツヤナーヤ
帝国に隣接する街つまり最前線の国境付近のギルドでギルド長をやっている。
以前は王都から近いベルドラの街でギルド長をやっていたが、忌々しい小僧の経略に嵌められて異動することになってしまったのだ。
「君の様なやり手が異動を希望してくれて嬉しいよ。数多くの高ランク冒険者を育てた君には重要地点を任せよう」
「お任せ下さい。どんな場所でもこの私がいれば最高のギルドにして見せましょう」
ギルド本部から評価をいただき鼻高々で、返事をし、国境の町の辞令を渡された時は肝が冷えたものだ。今更此処は嫌だとか言えんしなー。
「ミヤイギルド長、また帝国の軍が国境で演習を始めました」
「そんな事は軍の管轄であろうギルドの出る幕では無い」
「しかし、その軍の不足分を補う常駐依頼を前ギルド長が受けておりまして、それでこの辺境の地は廻っておりますので、冒険者を募る依頼を出して下さい」
そう、ここは重要な地だが王国にとっては辺境の地、帝国にとっては取り戻したい帝都に近い地域になっており、停戦協定が引かれている今でも、気が休まる暇はない。
荒くれ者が多い冒険者に、規律の厳しい軍と共に行動させるという厄介な依頼がしばしばある。
「ベルドラは良かった。街は王都から近く洗練され、何もしなくても冒険者は育ち、その功績は私のものとなっていた」
「ギルド長!スタンビートの前触れが!調査隊も早く」
私が一体何をしたというのだ?有望なパーティーでもギルドに気に入られなければ、上がれないなど、私以外もやっている。冷遇されて当たり前の、支援術師をそのままの扱いにしただけだろう?
ミヤイが頭を悩ませていると、さっき届いた王都からの新聞に目がいく。
『ベルドラの街で20年ぶりとなるAランクパーティーのクラン立ち上げ!赤き翼を筆頭にしたクラン『竜の息吹』発足』
「いやー就任早々、こんな歴史的瞬間に立ち会えて申し訳ないくらいです。前ギルド長が残した、支援術師を冷遇しない!という演説にも沿っているしとても良い試みかと」
新聞の一面と、新ギルド長のインタビューを見て奥歯が軋むほどに歯噛みしていると、ふと妙なことに気付いた。
「支援術師……だと?」
そう呟き読み進めていくとクラン代表は元赤き翼の支援術士が務めるとあった。
何故こうなった?これでは私だけが、損をしているではないか。
「……ん、待てよ?これは契約魔法違反じゃないのか?赤き翼を抜けてはいるが、その赤き翼の主導するクランの代表などこんなもの契約に反しているのと一緒ではないか?となると、違反によりタッツの全ては私のものとなる。つまり竜の息吹の代表権も私のものということに」
「ギルド長、早くギルドからの依頼をお願いします!」
「うるさい、今私は忙しいんだ!勝手にやっておけ!貴様それでも副ギルド長!かベルドラの街では私をこのように働かせるものなどおらんかったぞ!」
副ギルド長が苦虫を噛み潰しバタンとドアを閉めて部屋から出ていくと、ニヤニヤとしたミヤイが独り言を続ける。
「今すぐ教会に契約魔法の不義を訴えてもいいが、ここはあの虫に私のクランを大きくさせてから奪い取るというのも良いな。クックック。ベルドラではしてやられたが借りを返させてもらおう」
物事をうまく運ぶために、奴らから買ったドラゴンの素材を教会に寄付しておくか。
王家に献上しなければいいのだからな。
「タッツくん、契約の抜け道とはこういう風に使うんだよ。いずれ私のものになるクランを精々大きくしてくれたたまえ。ハーッハッハッハ!」




