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第八話 クラウンゲーム



一般客が帰ったあと、クラウンゲームの準備で生徒会役員が校庭内を慌ただしく走り回っている。

当然だが、生徒会役員でも準備をしているのは1年と3年生だけ、2年生はゲーム参加者となるため校庭のフェンスの外で待たされている。

「いつまで待たせるんだろう」

「おかしいな、去年こんなに待たされたっけ」

「いや、待たないですぐに入場していたはずだよ。」

「それにしても遅いよね。」

みんながざわざわ話している。

確かに去年見ていた時は、こんなに時間がかからず校庭の中に入れた。

去年のクラウンゲームはすぐに校庭に入って、朝礼台の前で王様自作の王冠の写真をみんなに見せて、探し出すとい

う方法だったはず……どうしてこんなに時間がかかるんだろう?

生徒会役員達がフェンスの周りに等間隔で配置されると、凛とした美しい女性の声がスピーカーから流れてきた。

「それでは第143回クラウンゲームを始めます。2年生入場!」

待ってましたと言わんばかりに、呼びこまれた2年生は一気に校庭になだれ込んできた。

「危険です。走らないでください。」

何度も生徒会の女性が一生懸命呼びかけるが みんな聞かない。

走りたくなかったけど、走らないと後ろの人に突き飛ばされて転ぶ危険性があるから仕方なく俺も一緒に走る。

間近で王冠の形を確認するために、みんな凄い勢いで朝礼台を目指して走っていく。

前回の王様である生徒会副会長が朝礼台の壇上に上がって待っていた。

生徒会会長の前には机があり、その上に白い布を被せた物が置かれている。

あれ?あの下に王冠の写真があるのかな??

なんかボコボコしているけど……

目線を左下におろすと、朝礼台の下の方では長机の上に音響装置、マイク、ノートパソコンが置かれている。

パソコンには沢山のコードが出ていて色々な機材に繋がっている。

前回とは明らかに違うことがみんなも解り、ざわつき、口々に憶測が飛び交っていた。

校庭のフェンスの外には誰が王様になるのか興味津々の1年と3年のギャラリーがいっぱいだ。

そして今年も王冠を見つけるべく、どこから持って来たのかスコップを持っている男子がちらほら見受けられる。

去年も持って来た人いたけど本当に毎年誰かしら持ってくる人がいるんだな。

俺は驚くのと同時に感心してしまった。

昔、隠し場所に困った王様が校庭に埋めたことがあって、それ以来校庭を掘る人が毎年出ている。

だが、ここ数年 土の中に埋める王様はいなかった。

去年の隠し場所は、とても意外な場所だったけど、果たして副会長は王冠を土の中に埋めるかな?

生徒会副会長がぐるりと取り囲む2年生を見渡してから口を開く。

「みんなが楽しみにしている クラウンゲームを始めようと思う。」

「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!! 」

凄く高いテンションで男子生徒達が雄たけびを上げる。

「だが、毎年地中には埋めていないと言っているにも関わらず掘り起こす者が絶えない。」

スコップを持っている者は慌てて後ろに隠して、俺は持っていないぜと とぼけている。

「整地するための経費が嵩み、生徒会予算を圧迫している。その為、クラウンゲームの内容変更を余儀なくされました。」

みんながざわざわしはじめる。

副生徒会長が手を伸ばして、壇上の白い布をはいで中身を見せた。

シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

あれだけ私語で騒がしかった校庭が、時間が止まったかのように静かになった。

みんな素晴らしい王冠の写真が出てくると思っていたら、そこには不恰好でいびつに歪んでいる不思議な金色のオブジェが置いてある。

一人の生徒が口火を切ると次々と生徒達がオブジェについて詮索を始めた。

「あれなんだろ? 」

「なにかな?」

「もしかして!王冠!?」

「まさか!嘘でしょう!!」

ざわつく会場に、耳まで赤くなる副会長 ←(美術1)

「あはははははははっ!」

笑い転げる生徒会長の頭をぱぐっと副会長が殴りつけた。

「いでででででで!」

「お前が手作りにしろと言ったんだろう!!(怒)」

「だって去年の王様も手作りだったじゃん❤今年もちゃんと王様の手作りじゃないとね……くくっ」

「ぐっ………あとで覚えていろよ。」

副生徒会長は悔しそうにマイクを握って再び話し出した。

「今年からは王冠は探しません。代わりにこの王冠をかけて、このおもちゃのメダルを30分以内に拾って来て受付でチェックしてもらいます。」

直径5センチほどのプラスチックのメダルを手にして高々とみんなに見せた。

だが、生徒たちの関心はメダルではなく…………

「やっぱりあれ王冠だったんだ。」

と、そんな驚きの声があちこちから聞こえてくる。

生徒会副会長は更に顔を赤くして屈辱に耐えながら言葉を続けた。

「メ……メダルは人数分の150枚しかありません。一人一枚です。メダルの裏にあるバーコードを読み込みます。名前とメダルをチェックするので二枚持ってきた人はたとえ王様でも失格とします。」

「んで、メダルは生徒会長の俺様が操作するこのドローンで空からバラ撒くから、みんな頑張って拾ってくるんだぞ!」

「それではクラウンゲームの開始です。レディー? ゴー!! 」

ブウウウンと唸り声を上げてメダルの入った籠をぶら下げたドローンが飛び立った。

2年生達は一斉にドローンを追ってドタドタ走り出す。

その姿はまるで超団体のヒヨコが親鳥を追いかけるように見える。

「追っかけてもメダルは人数分しかないから意味ないと思うんだけどな。」

「面白―い❤あはははははははっ」

「ま、生徒会長が楽しそうだからいいか」

ドローンは、地面すれすれの低空飛行をしたかと思えば、ぐるぐると旋回したりと器用にトリッキーな動きをして皆を翻弄している。

「そろそろ良いだろう。スイッチ押してくれ。」

「おっけぇー❤」

ぐるぐると旋回しているドローンの下から、カチリと音がして籠が傾いた。

ザラザラとメダルが雨のように降り始め、真下にいた生徒達は直撃をくらって痛い痛いと騒いでいる。

参加者達は次々とメダルを手に取るが、どれもこれもアタリに見えたり、ハズレにも見えるようで、どのメダルにしようか迷っている。

その中で一際体格の良い男子生徒が人を押し退け凄い勢いでメダルを漁っている。

その態度は目に余るものがあったので副会長がマイクを取り注意をしようとしたその時だった。

「よっしゃあ!!レアメダルGETぉ!!アタリを見つけたぞぉーーー!!! 」

「えっ…嘘…」

俺、一度もメダルを触ってないのに………終わっちゃったの?


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