戦争準備と裏切り
軍の編成が終わった。
最前線での戦いという事で希望する者は居ないだろうと思っていたが、偵察隊として息子と一緒に行動していた兵士が全員志願してくれた事により、かなり人数が増えた。
あとは後方支援の編成だけだったので、そこは上手く組み合わせられた。
そしてここに5000人の兵士が集結している。この兵士達は最前線で戦う者達だ。
資材や食料などを随時搬送する後方の兵士を数えるとどれだけの人数が関わっているのかわからない。
個人的な事を言うと砦を奪取しそこに息子が生きて囚われていることが理想だ。
しかし、こうして命令とはいえ集まってくれた兵士達の為にも俺は答えなければならない!
「兵士諸君!よく集まってくれた!皆知ってのとおり私が今回指揮をする!いろいろ思う事があるだろうがとりあえず聞いてくれ」
俺は深く息を吸いそして語り始めた。
「私は20年前に魔王討伐の為に別の世界から勇者と一緒に剣聖として召喚された。嬉しかった。私は嬉しかったんだ……世界中が魔王に怯え生活をしている事なんて想像すらもせずに、自分達が魔王を倒した後、英雄と崇められ、どんな生活ができるんだろう!そんな事を思っていたんだ!結果的に世界を救えたかもしれないが、今のを聞いて失望したかもしれない。あれから20年経った……君達のほとんどが魔王討伐の戦いを知らないし絵本や劇などを見てお釈迦だと思っている者もいるだろう。しかし!実感はないかも知れないが魔王の脅威はすぐ近くまで迫っている。既に私の息子が敵に捕まってしまった!20年前の私なら単身魔王城に乗り込んで行っただろう。今は違う!愛する妻がここに居て、愛着の湧いてきたこの国がある!こんな私が皆に祖国の為に死ねとは言えない!せめて!せめて家族の為に、愛する者達が最悪の結末を迎えないように!俺に力を貸してくれ!俺に命を預けてくれ!」
「「「「「ォォォォオオオオオオオオ!!!
!」」」」」
私は兵士の叫びを背に馬にまたがった。
「あなた……ご武運を」
「あぁ、留守の間を頼むぞ」
絶対に取り戻してみせる!
俺の守りたいもの全てを!
剣聖を隊長とした王国軍が長い長い列を成して、王都の人々の歓声に見送られていった。
それを遠くの丘から黒のマントにフードを被った男女が見つめていた。
「ではそろそろ行きましょうか。聖女様?」
男が尋ねてを差し出すとと聖女は黙ったまま頷きその手をとった。
とうとう王国から軍が出張って来た!
偵察隊を追い払ってからかなり早い展開なんじゃないかな?
あ!でも剣聖が団長だから息子を救う為にって設定なのかも!
剣聖のスキルについては、他の魔物に譲渡は出来なかったんだけど、ゴブリンキングからの遺伝でスキルを受け継いだゴブリンが産まれた。
これで戦力が大幅に上がったね!
自由貿易都市は攻める準備はしているけど、あそこは守りが固いんだよね!
でも大丈夫!過去1回だけ成功した戦術があるからね!かなり時間かかるけど…
まぁ慌てずにいきましょう。
とにかく目前のこの王国の軍勢をなんとかしないとね!
偵察隊の時と同じでゴブリンの夜襲はこまめにやって昼間の襲撃は頻度を落とそう。
敵の数が多いから、いくらゴブリンの数が多くてもいなくなっちゃうよ。
村にはゴブリンジェネラル置いて、砦手前にゴブリンキングを置こう!決戦は砦手前の村だな!
では!防衛戦の準備だ!
もう嫌だ…やめてくれ……もう抱きたくない…
そんな虚ろな目で俺を見るな…
許してくれ…体が勝手に動くんだ…
俺の精が……俺のスキルが……
ゴブリンに受け継がれてしまう…
やめろ…イヤダ……タスケテ………
<ゴブリンキング及び系列の配下に防衛戦の準備開始を命令します>
防衛戦?父さんが来るのか?そんな!!
「ウギャアアアアア!!」
父さん!父さん!父さん!父さん!
トウサン…トウサン…ゴメン…ナサィ…
ゴブリンキングは大人の2倍はあるであろう巨体を起き上がらせ、周りにいる人間など居なかったかのように無視して部屋を出ていった。
村に向かい王国軍を迎え撃つ為に。