悪魔の微笑み
<デーモンの召喚に成功しました>
頭に直接語りかけてくる声を聞き、私は目を開けた。辺りを観察すると足元で光っていた魔法陣が消えていった。
「そうか……現世に召喚されたか……」
デーモンは基本肉体を持たず、人の精神に働きかけ恐怖の想像力を喰い、長い時間をかけ輪郭を作っていく種族である。
そんな種族の私をなんの媒体も無しに魔力だけで、いや魔力に受肉させるなど信じられない。
<デーモンにセバスと命名しました>
なんという事だ!召喚に続けて命名だと?これで私はデーモンの中でも上位の存在になった。
おそらく召喚した主は私に魔物の統率を期待しておられるのだろう。この部屋には居ないようだが、実力は計り知れない。
<セバスに経験値を与えました>
「ハハハハハハハハ!感謝しますぞ我が主人よ!なんたる幸福!なんたる全能感!魔物の中でも強力な種族だった私がさらに上位の存在になっのだ!これからまだまだ力を蓄えて主人すらもこえ……………!?」
突然、紫の光が部屋全体に広がり、ボロボロだった部屋が修復されていく。おそらく城全体に同じ現象が起きているのだろう。
その魔力の圧力に耐えきれず跪く。直前までの全能感など吹っ飛んでいた。
(超えられる訳がない、勘違いも甚だしい。これが主人の……魔王の力…)
「魔王様に………私のすべてを捧げます……最大の忠誠を……」
暴力的な魔力を誰よりも間近で受け、光が消え魔王城が完全に修復された後も、しばらく跪いたまま動く事ができなかった。
セバスは大量の魔物が城に向かってくる気配を感じ立ち上がった。
「魔王様の魔力に惹かれてやって来たのでしょうね。魔物は全て魔王様の配下であるべきです!私が魔王様一の配下として従えて見せましょう!」
スーツの襟を正し、颯爽と部屋を出て行った。
城を出ると狼の大軍が待ち構えていた。黒と銀が合わせて100匹程だろうか。
「ブラックウルフとシルバーウルフですか。まぁいいでしょう、新しい力を試すいい機会です!」
セバスは両腕を高く上げ自分の魔力を解放して、腕を振り下ろし狼達にその魔力を叩きつけた。
強制的に伏せの状態にさせられた狼の目に戦意はなく怯えまで見てとれる。
「こんなものですか……おや?」
ブラックウルフとシルバーウルフそれぞれの先頭にいた他よりも大きな個体が威嚇し、呻き声を上げている。おそらく群のリーダーであろう。
「ほう……いいでしょう!かかって来なさい!」
その声を合図に2匹はセバスに飛びかかった。振り下ろした爪が当たる瞬間、狼はセバスを見失った。
セバスは既に後ろに回り込んでおり、片手でそれぞれの首を掴み地面に叩きつけた。
強い衝撃と轟音が鳴り響き、その跡にはクレーターが2つできていた。
リーダー達はピクピクと痙攣しているが、命は残っているようだ。
「見た目ほどたいした怪我はしてないはずです。演出的には最高の結果でしたが」
チラッと他の狼の方を見るとビクッと反応し、これ以上は無理だろうと思うほど下に下にと伏せていた。
「ん……ふああああ……魔力は少し回復したな。さてどんな状況になったかな?……お?配下増えてるね!ブラックウルフとシルバーウルフが50匹ずつか!セバス優秀……でも肉が必要なんだよな……仕方ない、1番近い砦を落とすか!スケルトンも作りたいし一石二鳥だな!」
<セバス及び配下のウルフに砦の攻略準備を命令します>
「隊長?あれ……見えてますか?」
「あぁ…あの数の狼を一瞬で無力化しやがった…群のリーダーも瞬殺かよ……」
「あの白髪の男が魔王…ですかね?」
「……かもしれねぇな」
光の柱の報告をした後も、遠目の魔法で監視を続けていた。
狼の群れが一瞬で無力化された時には部下と逃げ出したい気持ちでいっぱいだったがなんとか堪えて監視を続けた。
そして奴は紅い瞳をこちらに向けてジッと見ていた。最初から見ているのは知ってましたよと言わんばかりだ!
そして口角がゆっくりと持ち上がり美しくも残虐な笑顔を浮かべた。