第1章〜日照りの国と海中王国〜
高校生の頃に書いていた物を改稿しました。
一応保険としてr15にしましたが残酷描写はあまり無いと思います。
第1話〜日照りの国と海中王国〜
日照りの国「トーザ」。
四方を砂漠に囲まれたこの国は当然雨に恵まれず、干ばつによる様々な問題に何年も苦しんでいた。
しかし近年、水不足が解消されたお陰で移住者が増え、町にも活気が戻ってきていた。
「今日もいつも通り雨魔法でいいんだよな?」
そう問いかけられ「はい!大丈夫です!」と答えながら横目で声の主をちらりと見る。
タコに似た頭部に人間と同じ身体、まぎれもない「魚人」がそこに居た。
彼は僕がスキル[仲介]で別の異世界から呼び寄せた異世界人だ。
日照りが続き水不足が深刻だ、という話を耳にした僕は、海中に城を構え、水魔法を得意とする魚人が住む「ワダツミの国」に話を通した。
そして水魔法を使える兵士だった彼、オクトを一人派遣してもらう許可をもらい、日照りが続くこの国に雨を降らせ、水不足を解消したのだ。
「よし、これで終わりだ。あと2時間はこの程度の強さの雨が続くはずだ。早くアレをもらって帰らせてくれ。」オクトがそう言い、この国の長がいる城へ向かう。
「分かりました。今回もありがとうございます。」そう言いながら僕も彼についていく。
城についた僕たちは手厚い歓迎を受け、王の間に通される。
「今回も本当にありがとうございました。あなた方のおかげでこの町も人が増え、どんどん発展してきているところです。思えばあなたが初めて来た時は......」
しわがれた、しかしはっきりとした声色で目の前の老人、そしてこの国を治める王、デザがそう言う。
「いえ、僕たちも仕事なので。それより報酬を頂いてもよろしいですか?」話が長くなりそうな気配を感じた僕はそう遮った。
「ああそうだった。申し訳ない。おい、アレを。」
彼が近くの家臣にそう言うと奥からトレイに乗った今回の報酬が運ばれてくる。
銀のトレイに乗った岩の塊のようなものを見て僕は思わず笑みをこぼす。
「しかし本当にこんなものでいいのですか?我々にはただの岩にしか見えないのですが...。」
不安げにデザはこっちも見る。
「こちらの王がそれを好んでいてな。この国にはありふれたものかもしれないが、水に囲まれたわが国ではまずお目にかかれないものなのだ。」オクトがそう言う。
そう。これが僕のスキル[仲介]の使い方だ。別々の異世界を橋渡しし、それぞれに合った取引を持ちかける。
例えば今回は「水不足に苦しむ砂漠の国」と「貴重な鉱物を求める水中の国」を橋渡しして、水魔法を使い干ばつを無くす代わりにここでしか取れない名産品「砂漠のバラ」を報酬としてもらう。
そして僕は仲介料として1割ほどを両方から何らかの形でもらう。
このスキルをもらった時はとんだハズレくじだと思ったがいざ使ってみると元大手商社のセールスマンだった僕にとっては中々使い勝手のいいスキルだと気づいた。
交渉さえうまくいけば損をすることがまずないのだ。こうして色々な特産品を集めゆくゆくは博物館なんか経営してみようかな、なんて考えている。
「...じゃあ今回の取引はこれで完了というわけでお願いしますね。」
無事報酬をもらうことも出来、取引はこれで終わりだ。
「はい。本当に今回はありがとうございました...!あなた方の助けがなければわが国は今頃どうなっていた事か...。感謝をいくら言っても足りませぬ!」デザは涙ぐみながら何度も礼を言う。
「いえ。こちらこそ貴重な砂漠のバラを頂くことができ感謝しています。また雨が必要になったら言ってください。」僕は優しく声をかけ、席を立つ。
城を出るとまるで魔王を倒した勇者を凱旋するような人だからが出来ていた。鳴り止まない拍手と歓声に送られながら僕らは町を後にした。
「じゃあ次はワダツミの国にこれを渡しに行きましょうか」オクトにそう言う。
「ああ、王がお待ちだ。さっさと送ってくれ。」オクトにそう言われ、僕は転移魔法の準備を始める。
異世界同士を橋渡しするためには当然だが異世界間の転移が必要となる。スキル[仲介]には異世界転移魔法も備わっているので僕は自由に色々な異世界へ行くことができるのだ。
「じゃあ行きますね。僕の腕に捕まって下さい。」転移魔法は僕と僕に触れた物体だけに効果が出るので僕以外の人を転移する時は僕の体のどこかに触れて貰う必要があるのだ。
行き先を「ワダツミの国」に設定し僕は目を閉じた。
足元から地面が消えまるで空中に漂っているような感覚になっていく。
第2話へ続く
小説家になろうで投稿するのは初めてなので改行の仕方や言い回し、記号に使い方などアドバイスしていただけると幸いです。