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第24.5話 正式参戦!【日常回その6】

「結構、人が混んでるねー。」


 会場に着いたばかりなのに、楓はもうはしゃいでいる。

 今日は、近くの神社で夏祭り。

 この前の旅行の埋め合わせにと、5人でやって来たのだ。


「先行くよー。」


 楓は、走って行ってしまった。

 前に、智花と姫。

 後ろに、シンとリョウ。

 4人はそんな感じで並び、屋台の列の間を歩いていた。


「ここの祭りは、花火が結構凄いんだよな。」


 リョウのこの発言に、智花も同調する。


「バンバン上がるよね。」


「へえ、そうなんですか。」


 花火を上から見た事しか無かった姫は、下から眺めるのを前から楽しみにしていた。

 ここでシンが、皆に提案する。


「花火までは、まだ時間が有るし。それまで、出店でも楽しむか。」


「あ!じゃあ、あれりたい!」


 智花は、ヨーヨー釣りを見つけたらしい。

 不思議そうに遠くから眺める姫を連れて、智花はそちらへ向かって行った。

 シンがリョウへ、ポツリと。


「無邪気なもんだな。」


「分かって無いなあ、シン。それが良いんじゃないか。」


「それもそうだな。」


 少年達は、やや離れた場所から。

 明るい表情を見せる少女達を、そっと見ていた。




「本当に、ここに居るんでしょうね?」


「間違い有りません、お嬢様。」


「それにしても、凄い人混みね。酔いそうですわ。」


 そんな会話を、黒服の男としているのは。

 文音あやねだった。

 シンに、前の非礼をびようと。

 文音も、夏祭りへとやって来たのだ。


「さて、早くシンを見つけないと。あなた達も協力なさい。」


 付き添う2人の黒服に、文音は言う。

 黒服は手分けして探そうと、文音の下を離れた。

 折角なので、文音も。

 シンを探しながら、祭りを楽しむ事にした。




「んー、美味おいしー。」


 楓は、熱々の焼きそばを頬張ほおばっていた。

 姫と智花は、リンゴ飴。

 リョウは綿菓子。

 シンは特に食い気も無いので、何も買わず。


「あ、あそこ空いてるよ。」


 楓が指差したのは、神社の端に在る生け垣。

 花火が見易い、穴場スポットの様だった。

 そこに5人は陣取って、今か今かと花火が上がるのを待っている。

 その時。


「あ、見つけましたわ。」


 聞き覚えの有る声が、5人の後ろから飛んで来る。

 それは、文音だった。

 5人は、前の事を思い出し。

 文音に対し、反射的に身構える。


「な、何であんたが……!」


 楓がギロッと、文音をにらむ。

 智花と姫も、彼女の事を警戒していた。

 今度は何をするつもりなのか?

 皆、真意を推し量ろうとしていた。


「『何で』とは、無粋な物言いですわね。」


 そう発せられた、文音の言葉には。

 前には感じられた、とげ々しさが無い。


「何か用ですか?」


 こうやって対峙していても、らちが明かないので。

 シンが文音に、そう切り出す。

 すると途端に、文音の様子が変わる。


「ええと、ですね……。」


 少し口ごもると、文音は。

 突然バッと、頭を下げる。


「今日はっ!先日の件について謝りたく、ここへ参りましたっ!」


 続けて文音は、心を込めて。




「ごめんなさいっ!」




 頭を下げたまま、謝罪の言葉を口にする。

 余りの変わり様に、びっくりする5人。

 ゆっくりと顔を上げた後、文音が話を続ける。


「少々方法が荒っぽかったのは、事実ですから。それに……。」


 文音はシンの方を見て、顔を真っ赤にして照れながら。

 こんな言葉を、ふと。


「シンの言葉が胸に刺さって、どうしようも有りませんの。」


「俺の?」


 シンは不思議がる。

『忘れましたの?』と言った感じで、文音は言う。


「〔寂しい人〕の一言ですわ。私のそんな状況を察して下さる方は、周りにほとんど居ませんでしたから。」


「へえ、意外だな。」


 リョウが感心する、しかし。


「騙されちゃ駄目よ!」


 智花はまだ、文音の事を警戒していた。

 姫は、文音の気持ちが少しだけ分かった。

 理解者が居ないのは、本当に辛いのだ。

 まだ何か、言いたそうにしている文音。

 少し間を置いた後。

 一大決心でもしたかの様に、真剣な顔付きで。

 文音はシンに告げる。


「シン。私の事を〔寂しい人〕と思うのなら、あなたがそれを癒して下さりませんか?」


「えっ!そ、それって……!」


 姫が若干引き気味。

 顔だけでは無く、身体中を真っ赤にさせて。

 文音がシンへ向け、言い放つ。


「あなたの事が、好きになってしまいましたの!私の傍に居て下さいまし!」


 えーーーっ!

 文音のこれまでの発言の中で、5人が最も驚かされた言葉が。

 今日、この場で発せられた。

 こうして文音は、シン争奪戦へ正式に参戦したのだった。




 言いたいだけ言うと、文音は。

 5人の下から、タタタと走り去った。

 呆気に取られながら、その場に残される5人。

 思わず智花が、ボソッと。


「何でこうなるのよ……。」


 しょんぼりする智花、その肩を。

『ドンマイ』と楓が、ポンと叩く。


「強力なライバル出現、ですか……。」


 姫もつい、ボヤいてしまう。

 そんな彼女達を、リョウが励ます。


「そんな顔してると、せっかくの着物が台無しだぜ?さあ、笑った笑った。」


 シンはシンで、思い掛けない急展開に茫然としている。

 自分を巡る争奪戦なんて、想像もしていなかった。

 いや、そう考えたく無かったのが本音だろう。

『今までの楽しい関係が崩れてしまう』と、心の何処かで思っていたのだ。

 しかし、現実は非情である。

 シンはもう、この件に付いて触れたく無かった。

 でないと、智花と姫の顔を。

 真面まともに見られなかったから。




 これから一体、どうなるんだろう?

 未来にやや不安を感じてしまうシン、その時。

 大きな花火が、『ドンッ!ドンッ!』と打ち上がり出した。

 この花火みたいに、何時いつか。

 綺麗な思い出へと変わるんだろうか?

 また、心が。

 センチメンタルな思い一色に染まる、シンなのだった。

いかがでしたか?

シンと姫の、2次元への冒険は。

これからもまだまだ続きます。

シンを巡る恋模様も、ドンドンややこしくなって行くでしょう。

気が向いたら、話の続きを書きたいなあと思っていますので、

その時はまた、宜しくお願いします。

それでは、いつの日か……。

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