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第11.5話 平和の陰に、脅威有り【日常回その3】

 ようやく梅雨が明け、夏本番となった。

 そして今日の体育の授業は、男女合同の水泳。

 期末テストも終え、開放的気分になっていた所にこれである。

 スクール水着姿の女子が見られると言う事で、いつもより興奮気味の男子達。

 それ等の中で、反応がやや異なるのが2名。

 シンとリョウだった。


「お、女子が出て来たぞ。」


 更衣室から出て来る女子を見て、男子のボルテージは上がる一方。

 しかしシンは、全く反応しない。

 何回か2次元にもぐったせいで、大抵の事では動じなくなっていた。

『決して女子の水着姿に、興味を無くした訳では無い』と、シンの名誉の為に言っておく。

 それはさておき。

 リョウはリョウで、ぶつくさと持論を展開していた。


「3次元も良いけど、やっぱりスク水は2次元だろ!なあシン、そう思わないか?」


「思わんね。大して変わらないだろ。」


 熱のもったリョウの主張に、あっさりと返すシン。

 それでも、リョウは。


「全っ然違う。ゾウとアリ位に、全然違う。良いか、スク水ってのはなぁ……。」


 こん々とリョウが、スク水に対する思いをシンに説き始めた時。

 手を振りながら、智花と姫が2人の方へやって来た。

 そして照れ臭そうに、智花がシンに尋ねる。


「どう……かな?似合う?」


「まあ、それなりに。」


 ぶっきらぼうに返すシン。


「ダメですよ、ちゃんと見てあげないと。」


 姫は、抜群のプロポーションを。

 これ見よがしに、シンへ見せつける。

 姫の態度に、智花が思わず怒る。


「ちょ、ちょっと!何やってんのよ!いやらしい!」


「あら、何かご不満でも?」


 すっとぼける姫。

 売り言葉に買い言葉、ムキになる智花。


「あ、有るに決まってんでしょ!何、シンを誘惑しようとしてんのよ!」


「ご自分のスタイルに、自信が無いのですか?」


「そ、そんな事無いわよ。」


 少し口ごもる、智花。

 そこをすかさず、姫が。


「でも先程、シンに。『似合う?』と、お聞きになっていたでは有りませんか。」


「そ、それはその……別に良いじゃない!」


 大声で誤魔化す智花。

 そのとばっちりは、シンにも。


「シンも、ジロジロ見ないでよね!」


「見てないだろ。」


『変な言い掛かりはしてくれ』と言った顔のシン。


「俺は大歓迎だよ。さあ!存分に見せつけるが良い!」


 両手を広げ、『掛かって来い』と言わんばかりのリョウ。

 そこへ的確な、シンの突っ込みが。


「2次元の方が良いんじゃなかったのか?さっきと意見が違うぞ?」


「これだけの美少女なら、話は別だ。さあ!」


 確かに智花と姫は、リョウの言う通り。

 校内で1・2を争う美ぼうの持ち主と、陰では言われていた。

 傍から見れば、シンは正に〔両手に花〕なのだが。

 そんな事は知らん振りのシン、2人を厄介者としか思っていないらしい。


「まあ良いわ。じゃあね。」


 智花と姫は、女子集団へ戻って行った。

 楽しそうに、他の女子と談笑する2人。

 あるいは2人は、クラスの中心かも知れない。

 そんな様子を見て、他の男子が。

 シン達に話し掛けて来た。


「良いなあ、あんな綺麗な子達と親し気に話せて。俺達も、そう成りたいよ。」


「だったら話し掛けてみれば?案外、気が合うかもよ。」


 シンは淡白に、そう答えるも。

『無理無理』と、男子が答える。

 彼が言うには。


「あの位のレベルになると、逆に近寄りがたいんだよ。お前等が羨ましいよ、そう言う変な気を回さずに済んで。」


「そんなもんかねえ。」


 シンは女子の方を見て、つくづくと言った感じで言う。

 その時チラッと、姫と目が合った。

 こちらに手を振って来る姫。

 シンも、やや手を上げ。

 小さく振り返す。

 姫はニコッと笑うと、また女子同士の会話へ戻った。


「みんなは、姫の正体を知らないから。そんな、お気楽モードで居られるんだよ。全く。」


 ボソッと、そんな事を呟きながら。

 たまの平和な一時ひとときを楽しむシン。

 和気わきあい々とした、そんな集団を。

 ギラついた目で見る、一人の少女が居た。




「何よ、あの小娘!」


 校舎の2階、シンより1学年上の生徒の教室。

 その窓際の席に、少女は居た。

 名前は、三次文音 《みよし・あやね》。

 一言で表すなら、〔良いとこのお嬢様〕。

 その家柄と、それに相応ふさわしい容姿で。

 高校入学時から取り巻きが出来る程で、ずっとちやほやされていた。

 しかし今年、或る少女の出現で。

 その雲行きが怪しくなった。

 そう、〔姫〕である。

 銀髪のハーフで、容姿端麗・成績優秀。

 運動神経も良く、面倒見のいい性格。

『まるで女神の様だ』と噂され、たちまち校内の人気No.1へと躍り出たのだ。

 全校の注目を一身に浴び続けてきただけに、文音にとってはショックだった。

 余りの嫉妬心から、姫とその周りをずっと観察して来たのだが。

 或る事に気が付いた。

 いつも一緒に居る、シンの存在である。

 どうやら、あの男にご執心しゅうしんみたいね。

 ……そうだわ!

 あんたから、あの男を奪ってあげる!

 そうして、私の前に平伏ひれふすと良いわ!

 ふふふ……。

 文音は完全に、悪役の思考になっていた。




 さあ、これから。

 文音がどう、シンに絡んで来るのか?

 新たな脅威に気付く事無く。

 今この一瞬を楽しむ、シン達なのだった。

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