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魔法少年戦記 −マギア/レクス−  作者: 久我わかなり
第1章「魔法少年 -Liberatio-」
3/7

第2話「精霊」

 





「……んだこりゃ、ぬいぐるみ…?」





 ヒョイと、輝太が空から落ちてきた謎の物体を持ち上げ、ぐるぐると回しながらその身なりを確認する。


 四肢があり、犬のように出っ張った口があり、触れた部分には、毛のようであり布地のようでもある妙な手触りがあり、何よりその重さはぬいぐるみにしてはやたらと重く、どことない生物感を醸し出していた。





「犬……いや、トカゲか?いやでも羽あるし、ツノもあるし……あぁ、なんかのアニメのキャラか?」



「……いつまで見るつもりモルか!モルはぬいぐるみじゃないモル!!!」






 その時、輝太の行動に意を唱えるようにぬいぐるみ(?)が叫び、ジタバタと暴れだした。その様子に思わず輝太は面食らい……






「……………すげーな最近のぬいぐるみは、動くし喋るのか。へー」



「だから、ぬいぐるみじゃないって言ってんだろモル!!!」



「あ痛っ。ちょ、変に柔らかい手で殴るな!微妙に尖った爪で引っ掻くな!やたら騒がしいぬいぐるみだな」



「だから、ぬいぐるみじゃねーモル!!!」







 やがてそれは輝太の手を離れ、その身の半分の大きさもない羽をはためかせて宙に浮いた。輝太はそれを見て思わず口をあんぐりさせる。







「……………すげー、最近のぬいぐるみは空も飛、」



「だから、ぬいぐるみじゃねーモル。いい加減にしろモル」








 大きな足を輝太の顔面に食い込ませ、それ以上の言葉を抑えた"何か"は地面に降りて、座り込む輝太に告げる。







「モルは精霊の国"エンターク"からきた精霊だモル。これから魔法使いになるショータのパートナーとしてサポートすることになったモル。よろしくだモル」



「エンターク……?なんだそりゃ」



「遥か昔から、この"蒼の星"を守護するのに力を貸してきたのがエンタークだモル」



「蒼の星………………?」



「蒼の星を脅かす"侵略者(イニミクス)"を倒すための"魔法使い"……その資格がショータに与えられたモル。この星の奥深くに眠る"魔輝結石(ましょうけっせき)"を守護し、"魔輝片(ましょうへん)"を集めて────────」



「だーーーーもうわかんねぇよ!専門用語ばっかり喋んな!まったく頭に入らねぇよ!!」



「………………あれ、というかショータ、モルを見て驚かないモルか?」



「……いや、別に。この前変なバケモノだって見たし、あーゆうのがいるんなら、お前みたいのもいるのかもって、アニメ見てて思ったたけだ。それに魔法使いだって……………ちょっと待て、お前さっき、俺が魔法使いになるとかどうとか言ってなかったか?」



「ちょっと待つモル。ショータ、なんで侵略者(イニミクス)のことを覚えてるモル……?」



「いや先にこっちの質問に答えろ、魔法使いがなんだって?」



「いや、そんなことよりも大事なことモル!なんでショータは────────」







 直後、何かが起きた。



 何か、というのが、明確に何なのかを輝太は理解できていなかった。しかし、周囲を見回してその異常に気づく。最初は目の錯覚かと思いゴシゴシと目を擦るが、眼前に広がる光景は変わらない。




 見える世界の全てが、不可思議な空間に包まれていた。



 まるで、半透明のフィルターでもかけたように、世界の全てが白んでボヤけていた。しかし、視界の端で走る車も、歩く人も、何ひとつ変わらず動いている。



……まるで、この異常を(・・・・・)誰も(・・)認知できて(・・・・・)いないかのように(・・・・・・・・)








「"魔輝空間(ましょうくうかん)"……!ショータ、気合を入れるモル!」



「なんちゃら空間ってなんだよ、っていうか何が起こってんだよ!」



「侵略者だモル!戦う時がきたんだモル!」



「はぁ!?お前なに言っ────────」







 そして、衝撃が巻き起こった。


 輝太の背後で、ビルが倒壊する。地面が抉れ、車が弾き飛ばされる。進むたびに大地が揺れ、叫ぶ声は空を震わせる。




 ────────侵略者(イニミクス)

 10m程の体躯を持つそれは、突如として街の中心に現れた。







「アレが侵略者だモル。この星に眠る魔輝結石を狙う者たち。そして、我らがエンタークの崩壊を目論む者たちモル」



「………っ!!」



「ちょ、ショータ!?」






 輝太は一目散に駆け出した。脇目も振らず、真っ直ぐに。眼前で暴れる侵略者の元へと。


 白んだ世界の"中"は、決して異常などではなかった。人々は侵略者に臆し、侵略者が砕く建造物の破片によって命の危機に瀕していた。……そんな世界を、見逃せるわけなどなかった。



─────だって、神郷輝太は、

誰かを(・・・)助けるため(・・・・・)だけに生きて(・・・・・・)いるのだから(・・・・・・)





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