-Initium-
それは、ある晴れた春の日のことだった。
友達の家で遊んだ帰り道、走りながら帰る最中のことだ。やたらとコミカルな見た目をした、変なバケモノに襲われた。
襲われた、というのも変かもしれない、詳しく言えば巻き込まれたという方が近い。そのバケモノは手当たり次第にビルを破壊し、地面を抉り、車を蹴飛ばして闊歩していた。
そんな中で、バケモノの行く先に子供が置き去りにされていた。泣きじゃくりながら、お母さん、お母さん、と叫んでいた。
気づいたとき、体は既に駆けていた。
バケモノが腕を振りかぶる間に、子供の体をなんとか押し出して、バケモノの射線上から避難させる。しかし、それで精一杯だった。自分の身のことを考えていなかった。
無情にも、真っ逆さまにバケモノの腕が振り下ろされる。
その後のことは、よくわかっていない。
臆して閉じた目を開けた時には、光る粒子となってバケモノは空に融けていっていた。
そして、眼前にひとりの背中があった。
蒼い外套のようなものを纏い、黄金色の髪を携え、真紅の瞳で、こちらを見る姿があった。
それが、全ての始まり。
その日俺は、"魔法少年"に出会った。