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ワンちゃんのお洋服屋さん  作者: 貴志ひろこ
8/11

クリスマスイブ

朝から雪が舞っている。

クリスマスイブ。


『ホワイトクリスマスになるといいな~』

アヤコが、歌いながら手仕事をしている。

『イブになっちゃったけど、あの彼氏さん来た?』

『ううん。オーダー以来、一度も来てない』

『別れちゃったのかな~』


よくある話。

プレゼントをオーダーしていたけど、別れてしまってのキャンセル。

オーダーだから、多少のキャンセル料が発生する。


『ま、キャンセルでもいいか。目立つとこにディスプレイしとけば、うちにはこんな技術がある。ってアピール出来るし』

自分に言い聞かせる。


『あ、アヤコ、今日は少し早めに終わっていいよ。彼とデートでしょ』

『いいの?うれしい。ありがとう。じゃ、超頑張っちゃうよ~』

アヤコは、腕まくりし、長い髪を結わえた。


…いつもは仕事じゃなかったんだ…

アヤコって…


チリリン…

『いらっしゃいませ!』

お昼近くからお客様が増えてきた。


オーダーしていたお客様。

店内の商品を買っていくお客様。


今年のクリスマスは、お客様に『ワンちゃんお買い物バッグ』をプレゼントしている。

残ったプリント生地で作り、ブランドネームが付いている非売品。


毎年違うプレゼントで、昨年はポーチだった。


午後、お客様と話をしていたアヤコが、私に目配せした。

何事?まさかの万引き?

と驚いて見ると…お店の外に、チマチョゴリの彼氏さん。


女性客ばかりで入りにくいのかな?


私はお客様に頭を下げて外に出た。

すると、彼氏さんは

『来るのが遅くなってすみませんでした』

と、頭を下げた。


『心配してたんだよ~。もしかして、お店に入りにくい?今日はお客様が多いから』

『ええ…ちょっと…』

真っ赤になってる彼氏さん。ちょっと可愛い。

オバサン発想な私。


『一緒に入ろう。それなら大丈夫でしょ』


彼氏さんと一緒にお店に入った。

彼氏さんをカウンターに連れていき、チマチョゴリを見せた。


今日はクリスマスイブ。

デザインの手直しは、かなりキツい。

彼氏さんが気に入るかな?


『これ、どう?』

彼氏さんにチマチョゴリを見せる。

『まあ!綺麗!』

彼氏さんより先に、お客様が声をあげた。

その声で、彼氏さんとチマチョゴリの回りに、お客様が集まる。


『これ刺繍?』

『綺麗な色使いね』

『私も欲しいわ』


私とアヤコは、心の中でガッツポーズ!

飾らなくても、いいアピールになってる。

これが商売ってやつかも。


『綺麗です。ありがとうございます』

彼氏さんは、女性客に囲まれて、ますます真っ赤になって、うつむいてる。


『気に入らないとこがあったら言って。出来るだけ希望にそえたいから』

『いえ…犬の服は、僕は分からないので、このままでいいです』


『良かった~。なかなか来なかったから、この出来具合いが気に入るか心配だったの』

キャンセル料を心配していたなんて言えない(笑)


『あの後、彼女とボランティアに行っていたんです。地震被害の。彼女の犬、セラピー犬の訓練受けてるし』


そういえば、彼氏さんがオーダーした後に、遠くの地域で大きな地震があって、介護施設や山間部が孤立したニュースを見た。


『良いことしてるのね』

チマチョゴリを袋に入れ、オリジナルお買い物バッグも入れた。

『これは、彼女さんと貴方への、私からのプレゼント』

そう言って、お揃いのバッグチャームを手渡した。

金と銀のチャームで、ワンちゃんの顔の形。


『ありがとうございます』

彼氏さんは、笑顔で店を出ていった。



………



『チマチョゴリの値段はいくらにしたの?』

夕方、アヤコが帰り際に聞いてきた。


『15.000円。でも、手刺繍だったから、大手メーカーなら、もっとするかも』

『そうだね。じゃ、良いクリスマスを』

『お疲れ様』


良いクリスマスか~

彼のいない私は、実家でクリスマス。


クリスマスの忙しさは、明日の昼までかな?

そのあとはお正月の初売り。


お店を経営する、商品を作るって大変だけど楽しい。




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