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最悪な出会い ~4~

「で、肝心の声優と仲良くなる方法だけど、どうやって仲良くなるのかな?」

「具体的な方法もまだないの。でも部員の皆と意見を出し合えばきっといい方法が見つかると思うから、だから絶対声優さんと仲良くなってみせるよ!」


 可愛らしいガッツポーズをしながら、やる気満々な表情で答えてくれた女の子。真剣な姿もたまらなく可愛い……が、質問の答えとしてはこれまた残念なものです。


 でも普通に考えたら声優と仲良くなる方法なんて簡単に見つかるわけがない。だって業界人でもなければその世界となんの関わりもない俺達一般人は、声優と会う事自体なかなかない。会うとしたらアニメやラジオなどのイベントに行くか、声優のライブに行くぐらいだ。それもただ「見る」だけ。そこで携帯番号やメアド交換なんてできるわけがない。


 だから今日できたばかりの部活に「声優と仲良くなる方法」がなくても当然なのだ。

 でもこの部に入れば声優と仲良くなれなくても、アニメや声優好きな友達はできるだろう。深夜アニメをとことん語り合ったり、声優のイベントに一緒に行ったりする友達ができる事の方が、声優と仲良くなるより今の俺には大切かもれないしそれだけで十分だ。


 それにしてもどんなに声優と仲良くなりたいと思ったところで、なんの手段もコネもないのに部活まで作るとは恐れ入る。俺なら考えても行動には移さないだろう。だって疲れるし面倒臭いから。そう考えるとこの子の行動力には凄いと思うし尊敬もする。


「素敵な部活になるといいね」

「うん、最初は色々大変だと思うけど、作って良かったって思えるような部活に絶対してみせるわ!」


 そう力強く話す女の子からは容姿だけでなく、内面からも輝くものが見えた気がした。


「そうだ、まだ自己紹介してなかったね。俺は二年の日笠春夏。よろしく」


 ちょっと照れながら自己紹介をする。この学校に入学してから女子に自己紹介するのは初めてかもしれない。


「えっ? 二年生なの? 私も二年よ。私の名前は三石夕実。よろしくね」

「学年一緒なんだ! でも会った事ないよね」

「私、二学期の途中に転校してきたから、だから今まで会った事ないのかも」


 転校生なら会った事がなくても仕方ないか。でも三石のような美人が転校してきたら絶対話題になっているだろう。女性恐怖症の俺にだって噂程度でも情報は入ってきてもおかしくないはずなのに、何故今までこんな美人が同学年にいる事を知らなかったのだ。


「それにしても今まで一度も会わないなんて不思議だね。同学年なら教室のある階も一緒だから一度は会っていてもおかしくないのに……」

「一度や二度は会っているかもしれないよ。ただお互い覚えてないだけで」

「君と一度でも会ったら忘れないって。だってインパクトあり過ぎるからさ」

「え? それってどうゆう意味?」


 俺の言葉に少し眉をひそめる三石。その表情を見て俺は慌てる。


「わ、悪い意味じゃないよ。そ、そのなんて言うか……き、君綺麗だから、一度見たら忘れないって言う意味ですよ……」

「また~嘘上手いんだから、もう!」


 そう言いながら三石は嬉しそうに俺の右肩をポンポン叩いてくる。なんかボディータッチしながらスキンシップもしちゃって、これってもの凄くいい雰囲気で会話してるんじゃないかしら! 出会ったばかりの男女とは思えないほどの打ち解け具合ですぞ!


 もう俺達はどっからどう見てもお友達だろう。これで俺が入部してずっと三石のそばにいたら、お付き合いする事だって夢じゃないかもしれない。こりゃ~恋を掴むチャンスどころか、もう恋の尻尾を掴んでいますよ!

 一人勝手にテンションが上がっている俺は、三石に入部の意思を伝えた。


「俺も入部していいかな? い、一緒に声優と仲良くなる方法考えて行こうよ」

その言葉に三石は少し驚きながらも瞳を輝かせる。

「えっ? 入部してくれるの?」

「俺も凄く声優好きだし仲良くなりたいしね。それにこの部活に入れば同じ趣味の友達もできると思うから。俺の周りって声優とかアニメ好きな人が全くいないから、ぜひ入部したいなって……いいかな?」


 照れながら言った俺の言葉を聞いた三石は女神のような微笑みで、


「無理!」

「……へっ? い、今なんて……」

「何調子乗って入部したいとかって言ってるの? あんた最初何しに来たか忘れた? 私に文句言いに来たのよ。そんな奴と一緒に部活なんてできるわけないでしょ! バカじゃないの!」


 笑顔から一瞬で真顔になった三石のまさかの発言に俺は固まってしまった。

 最初に会った時の冷たい感じに戻った三石。ちょっと前まで凄く笑顔で話していたのに、何キッカケで戻ったの? こ、怖い…怖すぎるんだけどこの豹変ぶり。


「そ、それは三石が空き缶用のゴミ箱に、大量のチラシを捨てたのが悪いんだろ? 文句言われても仕方ないと思うけどな……」

「はぁ? ちょっと何呼び捨てで呼んでるのよ! 『さん』つけなさいよ『さん』を! 初対面の相手を呼び捨てにするってどんだけ非常識な奴なの! 信じられない!」


 三石は俺を睨みつけながら激しく怒鳴る。

 もう完全にさっきまでの友好ムードはなくなった。俺の女性恐怖症はこの女のせいで更に悪化しそうです。


「よ、呼び捨てにしたのは悪かったよ……。でも原因は三石さんがゴミの分別をちゃんとしないからじゃない……」

「うるさいっ! バカッ!」


 三石は俺が言い終わる前に言葉を被せてきた。


「そんな細かい事いちいち気にする心の狭い奴と話すだけで、こっちまで性格が腐ってくるわ! 早くこの部屋から出てってよ!」


 そこまで言う! 自分の行いを棚に上げてそこまで人を非難できるなんて、どこまで性格悪いんだよこの女! 


「お、俺だってゴミの分別すらまともにできない奴と話すだけで心が腐るよ! だ、誰がこんな部に入るもんか!」


 子供の喧嘩みたいな受け答えをしてしまった。(ってまだ高二だから子供だけど)

 でも悔しいから捨て台詞の一つも言いたくなる。ちょっとだけ俺の目が涙目になっているのは秘密だ。


「はぁ? あんたが入部したいって言い出したんでしょ! 何わけ分からない事を言ってるのよ!」

「う、うるさいな! とにかくゴミの分別しっかりしろよ!」

「分別、分別ってそんなに分別するのが好きなら、高校辞めて清掃員にでもなれば!」

「そこまで好きじゃありません~! ってかなんで学校辞めなければならないんですか?

分別しっかりしてる人は、みんな学校辞めて清掃員にならないといけないのですか? もしそうならほとんどの生徒が退学しないといけませんね! あっ、三石さんは辞めなくていいか。だって分別するのお嫌いですもんね!」

「うぅぅぅ……何その言い方。人の揚げ足取るみたいな事を言って。本当あんた最低ね」


 あかん、これでは子供の喧嘩みたいじゃなく、完全に子供の喧嘩だ……。あんな言い方するつもりはなかったけど、なんか悔しくて子供みたいな言い方になってしまった。

 それにしても怒った三石は半端なく怖い。顔を真っ赤にさせて鬼のような目つきで睨んでくるその姿は、綺麗とか可愛いとか全く感じさせないほどの威圧感を放っている。よって怖すぎて三石の目を見ることができません。


 もう俺は涙目ではなく、涙が瞳から溢れそうです。

 だが俺も一応男だ。ビビっている姿を女に見せるわけにはいかない。とは言え三石の目は怖くて見る事ができないので、三石の眉間部分を見ながら一応睨み合っている構図を作る。そして一歩も引かない雰囲気をかもし出す。でも実際は即行でこの場を離れたいです。

 睨み合う事(実際は睨み合ってないけど)数分。すると、


『私の魔法を貴方にかけちゃう♪ 私のラブリ~キッスを貴方にあ・げ・る~♪』 

 もろアニメ声の可愛らしくてノリのいい歌声が流れてきた。この歌は毎週日曜朝七時から放送されている「魔法美少女・マジックエンジョリナ」の主題歌だ。

 三石が机の上に置いてあった自分のバッグからスマートフォンを取り出す。どうやらこの曲は三石のスマホの着うたのようだ。


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