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活動について話し合う ~3~

「木原メグミさんはやってないけど、メグミさんの親友の平沢琴乃さんはブログやってるから。琴乃さんのブログにもちょいちょいメグミさん登場するし、琴乃さんと仲良くなればメグミさんとも仲良くなれる可能性があるかもよ」


 その言葉に再びテンションが上がる。なるほど、第三者経由だがそれでもメグミさんに近づく可能性はなくはない!

 喜びが俺の全身を包んだ時ある事に気がつく。それはウイッターにも確かコメントみたいな機能があった気がする。フェイスボッコにもあるのではないか? 疑問に思った俺はそこら辺を三石に確認してみる。


「見る側が書き込む機能って、ウイッターやフェイスボッコにも確かあったような気がするけど何故ブログにしたんだ?」

「確かにウイッターにも同じような機能があるけど、ブログと比べてウイッタ―はコメントできる文字数が少ないの。それに一日に更新する回数がブログより断然多いウイッタ―では、その全てチェックしてコメントするのはもの凄く大変で面倒臭いわ。交流するには問題はないかもしれないけど、その点が難ありの為ウイッターは却下したのよ」

「そう言われると確かにそうだな。いくら好きな声優のウイッターと言えど、一日に何回も更新されたら最初は全て楽しく読むだろうが、そのうち面倒臭くなって読まなくなるかもしれないしな。ずっと交流を継続させるには、ウイッターよりブログの方が堅実的か」

「その通りよ。春夏も分かってるじゃない」


 納得する俺を見て三石も満足そうな笑顔を浮かべる。


「じゃあフェイスボッコはどうなんだ? あれは……」

「そっちはやった事ないから分からない!」


 即答だった。三石が試した事ないから却下なのね。分かりやすいお返事です。


「他に聞きたい事はある? 春夏」

「……特にないかな」

「では次にこれから具体的にどうしていくか説明するわね」


 そう言うとゆっくり立ち上がった三石は、廊下側の壁際に置かれていたホワイトボードの前に移動した。そしてホワイトボード用の黒ペンを持つと俺達の方に振り向いた。


「どの声優と交流するか今から決めるわよ。この声優選びが一番難しいと言っても過言ではないわ」

「え? どの声優って、自分が好きな声優でいいんじゃないの?」


 普通にそう思ったので口にしたのだが、三石は俺の発言を聞いて溜め息をつく。


「春夏は本当にバカね。それが一番いいのは誰でも分かるわよ。でもそれじゃ私達の目的は達成できないの」

「達成できないってなんで?」


 三石はもう一度溜め息をつくと、面倒臭そうに答える。


「よく考えてよ。春夏や私が好きな声優は、人気がある人や有名な人ばかりでしょ? そんな人達といきなり仲良くなれるほど世間は甘くないの。そもそもそうゆう声優はブログのコメント欄は閉鎖してあって、記入できないようになっているしね。仮に閉鎖してないにしても、コメントの数が多すぎて声優からの返信なんてまずない。と言う事は交流ができないって事なの」

「そ、そうなのか?」


 驚くと同時にガッカリする。てっきり俺は自分達の好きな声優のブログにコメントして、声優からもコメントを貰って交流していくものだと思っていたから。木原メグミさんは無理だったが、それでも他に好きな声優はいる。それにメグミさんの親友の平沢さんもいる。俺はその中から選ぼうと思っていたのにどうやらダメっぽい。


 ……ならなんで三石はさっき平沢さん情報を教えてきたんだ? 好きな声優のブログを見られないなら、平沢情報入れてくる必要ないだろ? 俺をぬか喜びさせやがって。どん底に落ちた俺を一度救い上げてまた落とすとは、どんだけ性格悪いんだよ三石は……。

 

 でも好きな声優のブログを見ないのなら、一体誰のブログを見ると言うのだ? それ以前に好きでもない声優と交流しても嬉しいのか?

 ここでも様々な疑問が頭に浮かぶ。だが三石はそんな疑問など織り込み済みのようだ。


「まずここでの目標は『誰でもいいからとにかく声優と仲良くなる』事よ。そして今後の足がかりをしっかりと作る事」

「え? どうゆう事だ?」

「ブログを使って声優と仲良くなるのはあくまで『第一段階』なの。自分達の好きな声優と仲良くなる為に、まずは利用できる手頃な声優を見つけて仲良くなる。そしてその声優を使って、ゆくゆくは私達が大好きな声優と仲良くなるってわけよ」


 淡々と語る三石だが、内容は「利用する」とか「手頃」とか酷い事を言っているぞ。しかも全然なんとも思っていない感じだ。


「て、手頃ってどんな声優だよ」

「売れてない声優」


 うおぉぉぉ―――――! さらに酷い事を言いやがったぞこいつ。なんでこう酷い事をサラッと言えるのだろうか? 三石にかかれば良い悪いなんて、目的達成の為にはあんまり関係ないのかもしれない。

 でも売れてない声優をどう利用するのだ? 話を聞けば聞くほど混乱してくる。


「う、売れてない声優と言う事は、人気なくて仕事ない人達って事だろ? そんな人達が俺達の好きな『人気があって有名な声優』とつながりがあるとは思えないのだが……」

「バカ春夏は本当にバカだな!」


 今まで黙っていた真野が呆れた感じで話に参加してきた。


「な、なんでバカなんだよ」


 ムッとする俺に真野は苛立ちながら話を続ける。


「ちょっと考えれば分かるじゃん。売れてない声優でもそのほとんどがどこかしらの事務所に入っている。って事は所属している事務所に人気のある声優がいるかもしれないじゃん。そうしたら売れてない声優でも人気のある声優と接点があってもおかしくないし、ひょっとしたら友達かもしれないだろ? もし人気ある声優が同じ事務所にいなくても、そいつの声優友達の友達に有名な声優がいるかもしれない。だからまずは売れてない声優と仲良くなってそいつの人脈を上手く利用すれば、いつの日か僕達が本当に仲良くなりたい声優に辿り着けるってわけよ。分かったかバカ!」


 どんだけ「売れてない・売れてない」連呼してるんだよ。売れてない声優も血の滲むような努力で声優になった事を忘れるなよ!

 

 それにしても気が遠くなるような話だな。三石や真野の言いたい事は分かったが、どれだけ時間がかかるか分からん。

理解はしたものの納得はできない俺を見て三石が不満げに、


「この方法に反対なわけ? だったら代案を出しなよ。今すぐに!」

「い、いや反対ってわけじゃなくてさ、なんか人を利用してまで自分達の目標を達成するのに、違和感と言うか躊躇いみたいなのがあるというか……」

「あま~いっ!」


 俺の言葉に対して一喝する三石。その迫力に思わずビクついてしまった。


「春夏はそんな事でよく今まで生きてこられたわね。今の日本はまさに弱肉強食で恐ろしいほど厳しい時代なのよ! 自分の目的の為ならば多少の犠牲を払ってでも、成し遂げるという強い意志がない奴には何も手に入らないの! 確かにいくら自分の夢の為とは言え、他人を利用するには気が引けるでしょう。でも大なり小なり人は誰かの犠牲の上に成り立っているの。食事がいい例よ。自分達が生きる為には他の生きる者を殺してそれを食らう。そうしないと生きられないから。受験や就職だって同じでしょ。自分が望む物を手に入れるには、誰かを蹴落として行くしかないの。だから今から私達がやる事は自然の摂理と言ってもいいぐらいなものなの。だからなんの躊躇もいらないわ!」


 大きく出たなオイ。食事とか受験や就職は言われてみればそうですが、今回の 俺達の目的と同類にするのは何か違う気がするけどな……。

 でも目が尋常じゃなく血走っている三石に、異を唱える事など俺にできるはずもない。


「そ、そうだな。俺が甘かったよ」

「分かればいいのよ、このお人好しのクソ野郎が!」


 本当に言葉使いが汚いな……。顔、スタイルが抜群なだけに残念過ぎる。


「こんなに理解力が乏しい奴と果たしてこれから一緒にやっていけるかどうか。正直不安だらけだな」


 残念そうに俺を見つめる真野。俺はもうすでにお前達と活動する事に不安だらけだけどな。


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