ヒロインが病んだからってなんやかんやあったのにまた面倒な奴がきたから、あ、もうスルーで。
『ヒロインが病んだから(以下略)』の続きッス(´∀`)
今回も残念な美少女(笑)
はいよ、お久しぶり。
中身還暦越えた婆ちゃん、外は10代ぴっちぴち男子高生の高野彬史君ですよ。
帰ってきたよー、なんのこと?まあこっちの事情だから気にしないでちょうだいな。
さて、前回の話を少しお復習しようか。天織綾女さん覚えてるかな?
そうあのいろいろイっちゃってたあの子。あの自称天女だった残念な美少女の天織さんね、あのあと精神病棟行きになったらしいよ。しかもかなり重症なんだと、普通なら同級生を110番したからそれなりに事情聴取されるかと思ってたのに彼女を見た瞬間お巡りさん「…大丈夫だった?何か被害にあったりは」って優しく聞いてくれたよ。
お兄さん、あなた絶対将来出世するよ。
結局のところ天織さんは僕のいとこで、自分の攻略対象の高野大翔を見つけて物凄い形相で迫ってきたから危険と判断したお巡りさんに押さえられ血走った目で喚き散らす絵は朝からキツいものだったよ。
あれ以来、天織さんのハーレム要員だった大翔を含む5人は女性恐怖症になってしまったが、まあ自業自得だし僕はしーらない。
そんな学園から天織さんが消え去りつかの間のギスギスしていない空気に満たされた幸せな日常から一変、またもや面倒な奴がこの学園にやって来た。
「姫城桜姫です。前の学校ではサクラヒメと呼ばれていました。宜しくお願いします」
はい、ちょっとツッコまさせて、婆ちゃんの時代にはなくて今時の名前なんだねぇって思ってたけどなんじゃその呼ばれ方。呼べと?それで呼べと?恥ずかしくないのか。名前姫押しすぎだし。
今日の今、僕のクラスに転校してきた姫城桜姫さん。まさしく大和撫子という言葉より日本人形って言葉が似合いそうな腰まで黒髪に黒い瞳、そして言っちゃあ悪いが病的に白い肌をした顔の整ったこれは別の意味で美少女。
よくサクラヒメって呼び方許してたね。教室の皆が軽く引いちゃってるのは気のせいじゃないよね?
「えー、あー、ごほんっ、じゃあこの姫城に質問がある奴は手をあげろー」
「あ、はいはい!彼氏いますか!」
適当に言った先生に手を上げたのはクラスのムードメーカーの矢田だ。矢田、お前は勇者だ。
「いません」
「ほー、じゃあ好みのタイプはスバリッ!」
「辿郷先生です。それ以外は眼中外です。抱かれるなら断然辿郷先生です」
がたん、誰かが音を発てた。誰かって分かりきってる、僕達2年3組担任の辿郷真先生だ。
前に僕が言ったことを覚えているだろうか?攻略対象は全部で5人、隠れは2人いるといったことを。
「(……うわー、はっきり言うなぁ)」
にっこりと上品に笑う姫城さんの目は下品な色で染まっていた。あれは攻略対象を見つめていた天織さんと同じ目だ。
そう、その隠れキャラというのはこの僕と、目の前でその眼差しに動揺している辿郷先生なのだ。今日から教え子になる子に抱かれたい発言はかなり動揺するんだろう。
多分姫城さんは僕みたいな転生者という可能性が高いかもしれない。幸運なことに彼女は僕の存在については無知のようだ。マイナーなキャラだったからかな?
しかし姫城さん残念だね。君が天織さんみたいなヒロインとしてそこに立って辿郷先生を狙っても君じゃ先生は落とせないよ。
「そ、そうか、それは光栄だな」
「うふふ辿郷先生が私のもろタイプなんです。狙っちゃいしょう」
「それは残念だったな、俺は既に既婚者だ」
ホラッ、そう左手を見せる先生の薬指にはシンプルだけど存在を主張する銀の指輪。
そ、辿郷真は既婚者なのだ。しかも今年で結婚3年目にして現在奥さんは2人目のお子さんを妊娠中の幸せ夫婦であーる。
「…え、せん、せいは結婚してるんですか」
「していて悪いか」
「ほ、ほんとうに結婚して…!?」
彼女の発言でクラスのムードが悪くなる。言葉にしたら「…え、なにアイツ本当に狙ってたわけ?」だね。
そんな姫城さんはなんと僕の後ろの席に座ることになった。うしろ、後ろってまた微妙だっ!姫城さん席に着くやすぐに「え、あれおかしいなんで真が結婚して…え、略奪愛ってことなの?」……おーい聞こえてるよー、多分君の周り席の子達にも聞こえてると思うぞー。しかも何気に真呼びって(笑)
うーん、ヒロインな子は皆ヤンデレとかイタイ子ばっかりなのかねぇ?
最近の若い子、特に女の子は分からないねぇ。
姫城さんが転校してきて4日が過ぎた日の昼休み、天織さんのヤンデレストーカーの件から大翔は僕と一緒にご飯をすることが増えた。
今日も大翔の友達と僕の友人を交えながら中庭で弁当を食べていたら先生が「匿ってくれ!」と青い顔をして走ってきた。
「……すまない高野、昼飯の最中に」
「大丈夫です。先生お疲れさまです」
「……アレをどうにか出来ないか?」
「そうですねぇ…、いっそのことお子さん生まれて落ち着いたら警察に相談してから早々に県外に引っ越されてはいかがです?じゃないとアイツそのうち先生の家に乗り込んで来そうですよ。僕達生徒や先生が証言出来ますし」
「………昨日家に乗り込んできたんだよっ……!」
悲痛な声に僕は何も言えなかった。姫城さん、あなた行動力ありすぎっ!
先生の言葉にこっちが顔を青くしたら姫城さんが先生を呼ぶ声が中庭に響いた。
僕達は急いで先生にブレザーを覆い被せ不自然がないように背中で隠す。
「せんせ、真先生、待ってくださいよ、どこに行っちゃったんですか今日は真先生のためにお弁当を作ってきたんです。良かったら食べてください、真先生の奥さん今お弁当作ってくれないんでしょ?可哀想、先生に愛想尽かしちゃったの?真先生大丈夫ですよ、私は貴方を愛してる愛してるんです。大好きとかそんな生温いものじゃなくて愛してるの、だからあんな女と別れて私と一緒になりましょう、それに先生はあの女じゃなくて本当は私の事が好きなんですもの。もうっ、分かってますよ先生の気持ちなんかとっくに、だから真先生照れて隠れてないで出てきてくださいよ!」
あれだ、デジャブだっけ?うんついこの間似たような光景を僕は見たことがあるぞ。
姫城さんはヤンデレストーカーじゃなくて思い込みの激しすぎる真性のストーカーだったようだ。
真性のストーカーってあそこまで来たら見てる側としては清々しいと思える辺りが更に恐いね。
「………あ、彬史あれっまさか」
「………あー、うんアレは大翔には寄ってこないから大丈夫だよ。先生が酷い目に合ってるけど」
近々、辿郷先生は奥さんの出産も兼ねて育児休暇を取るそうだ。
学校側も辿郷先生が愛妻家ってことを知っているし姫城さんの件もありそれを受理したらしい。
「あ、もうスルーで」
って言いたいのは山々なんだけど、先生、遠慮なくあれも早く110番しましょうよ。
いやあれはむしろ119番じゃね?