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最強剣士の俺が、異世界で精霊たちと好き勝手する  作者: 止流うず
前章《俺とサラ子さんの幸せな日々》
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六百日目~六百九十二日目

 六百日目

 首都が滅んだこと知らなかった両騎士団が国境でゴーレムに強襲されてミンチになったんだって。とりあえずもう偽装工作しなくていいんで騎士の持ち物かっぱらえるようになったとさ。うちじゃいらないけど他の国で売ればそこそこ金になるからね。

 そういや隣の国の人が魔導・神聖帝国の領地を片っ端から占領してるっぽいです。でも領地を治める人がいなくて苦労してるんだって。

 風男君? なんかこれを機に隣の国に大量に資本を投下してるっぽいよ。商才あるよね。彼。



 六百一日目

 ジークフリート計画って三年ぐらいで終わるんじゃねぇの? とか思った。

 着々と山脈の要塞化が進んでるのよ。精霊車の技術の発展で重機とかできてるしさぁ。

 ドリルマシンとかあってびびった。あとゴーレム投入してるっぽい。



 六百二日目

 俺って結構この国のこと把握してないよねって召喚したばっかりの幼女に聞いてみた。

 そんなの知るかバーカって言われて落ち込んだ。

 あ、サラ子さんに幼女折檻されてた。ちょっとだけスカッとした。



 六百三日目

 騎士君(精霊信仰イヤーの人)に侵攻計画を提出されたけど俺の仕事が増えてめんどいので却下。



 六百四日目

 ただいま召喚中……。



 六百五日目

 勇者と魔王が戦ってるんだって。なんか東の空が荒んで見えた。でも勇者と魔王に力を貸すはずの厨精霊たちがこっちにいるからガチンコ勝負で、まだぜんぜん規模が小さいんだって。参加しないでよかった、と一安心。

 あ、あと角少女がなんかかっこいい顔で魔王城の方向見てた。



 六百六日目

 方位神? なにそれ?

 王城と城下町の外に四つの街をつくるのじゃー、って感じで王女様(幼)が言ってきた。そんで結界強化のために方位神とかいうよくわからんものを召喚しろって言われた。

 ジークフリート計画に組み込んだから安心しとけって言われたけど最初から最後までわけわからんかった。



 六百七日目

 方位神は、厨様達と同格の存在なのじゃーって感じで説明される。うん。わかったけどそれって意味あんの?

 ぱーぷりんめって感じで見られてちょっとへこんだけどあんまりやる気が起きなかったんで後回しにして美術館を作ってみた。



 六百八日目

 召喚召喚ってことで、でっかい精霊石を渡されたので今日も召喚。

 なんか、ぴかぴか光って眩しいおっさんが召喚できた。

 え? 待ってた? 二日前から? すごい勢いでまくしたてられたんでお茶とお菓子出して適当に相手して誤魔化すことに。

 あ、何の精霊か結局教えてくれませんでした。王女様(幼)が仕事用意してるー、とか言って連れてったからまぁ、どうでもいいかってことで召喚召喚です。



 六百十日目

 何回か変な精霊さんが最近召喚できる。あいつらぴかぴか光っててうっと、眩しいんだよね。

 というわけで今日も政務を適度にこなしてから召喚召喚です。



 六百十一日目

 街の移住とかそういうのができたから領主を決定しろって言われたから王女様(武)に頼んでみる。

 凄い勢いで断られた。あるぇ? というか何で涙目なん? よくわからないけどじゃあってことでサラ子さんを見たら言う前に断られてしまった。

 誰にしようって悩んでたら騎士君がすごい勢いで立候補してきたんで笑顔で却下してから岩本さんとこの息子さんとか双子ちゃんにお願いすることにしましたー。



 六百十二日目

 懲りずに風男君が春画を届けてくれたので岩爺さんの工房に逃げ込んでから読むことに。

 岩本さんにつまみ出された後。サラ子さんに折檻された。

 鬱だ……。



 六百十三日目

 三方(背後の山は工事中なので街ってほどでかくない)の街はきちんと機能してるらしいです。一時的に火竜王国王都の人口が下がったので奴隷を買い込むように指示しました。

 いや、大安売りらしいですよ。実質二カ国滅亡状態なんで、夜盗盗賊山賊川賊出没し放題らしいです。



 六百十四日目

 治安が悪くなるといけないので警察力(軍事力?)を強化することに。分離するにもちょっとそんなに人的資源が多くないので交番っぽい詰め所を各所に作って。徐々に切り離してみることにする。



 六百十五日目

 ゴーレム研究所を視察してみたら十メートル以上の大きさの人型ゴーレムがあったのでびっくりして聞いてみた。

 パワードスーツ? 人とか精霊が動かす? ファンタジーの次はSFなんかーって突っ込んでみようと思ったけど白い目で見られるのでやめておいた。というか予算はどうしたって聞いてみたら俺、よく読まないで判子押してたっぽい。

 うげぇ、とか思いつつさらに研究所の奥を見てみると航空機の応用で空飛ぶ戦艦造るんだって、設計図とでっかい竜骨があった。

 そういやそんなアニメ見たことあるなーって思った。

 少年兵は雇いませんよって忠告しといたけど、何言ってんのアンタって顔で見られたんで泣きながら執務室に帰った。

 あ、教習所で人型兵器の免許取れるようにしろって言われたんで指示出しておくことに。



 六百十六日目

 隣の国からの使節が森の中でミンチになってたんだって。

 とりあえず死体を念入りに処分しておいた。そうだよね。外交チャンネル開きたいよね。

 そういえば風男君の店って外交チャンネルなんかねって聞いてみたら地域密着型の振りしてますよって言われた。偽装工作中だから別に外交チャンネル作ってくれるってさ。

 仕事が増えてめんどいのでまた今度にしてって言っておくことにする。



 六百十七日目

 結界が強化されたんだって。方位神とか言うのはどうしたんだろうかって思ったけど王女様(幼)は呆れた顔で見るばっかりです。

 あ、八方にちっちゃい村を作るから人口増やせってせっつかれてます。

 精霊車の電車版の線路図とかも見せられたけどよくわからないので岩本さんのところで意見を聞いてから許可出しときました。



 六百十八日目

 朝刊に勇者が負けたって書いてあった。大陸が平和になると火竜王国(俺の国)に目が向いてめんどくさいので魔王に感謝。

 あ、勇者の凌辱フラグは立ってないっぽいです。なんか天馬王国? とかいう大国に保護されてるらしくて、勇者の武具の供出を各国に求めてるんだって。

 へぇーって朝刊見て感心してから政務に精を出しました。



 六百二十三日目

 裏ルートで勇者の武具が売りに出されてたんだって。てゆーか持ってると探知魔法で見つかって無理矢理奪われるってんで売り出した人たちがいっぱいいるんだとか。

 で、どうすんのさってやるきなさげに見てたら幼女に尻蹴られたんで召喚召喚です。


 幼女集団が召喚できました。


 あ、スキルアップして集団召喚会得したんだ。仕事が楽になったけど魔力大量に使ってだるいです。

 てゆーかうちの国って強力な結界あるから探知魔法弾くんだとさ。



 六百二十四日目

 サラ子さんが温泉に誘ってくれたんで今日は二人で温泉街で仕事しました。

 角少女もついてきてたっぽいんだけどいつのまにかいなくなってた。

 帰り際にサラ子さんが恨みがましい目で見られてたけどわけわかめだった。



 六百二十五日目

 難民集団? よくわからんけど魔導王国の村民が国境でミンチになったんだって。

 へぇーって報告書見てたけどどう対応すべきかわからなかったんで丁重に葬るように指示出しといた。

 ゴーレムの判断力ってすごい(単純だ)よねって思ったけどうちも軌道に乗り始めたような乗ってないようなだから難民いらんしなぁ。とりあえず流浪の民さんのほとんども回収できてるし。(買ったら恩義に思ってくれて勤勉になる)奴隷さんたちだけで十分だと思うんですよ。


 でもって精霊の召喚はもういいと思うんだけどって言ったけど誰も聞いちゃくれないんだ。

 ぼすけて……あ、俺にボスっていねぇよ。



 六百二十六日目

 最近よくピカピカ光る精霊さんの召喚を任されるんだ。

 眩しいからやりたくないっていったんだけど王女(幼)が強制的にやらせてくるんです。

 どうしてくれようかって思ったけど幼女が一生懸命説明してくれるのに不覚にも和んだのでうっかり請け負ってしまった。

 なんか数日前のやる気と違っておかしいよねって自分でも思ったけどサラ子さんと温泉行ってからちょっと調子が良いっぽいです。

 自分で言ったのでピカピカ光る精霊さんを召喚。

 緊急でサングラスの製造を命じておきました。



 六百三十五日目

 火竜王国内で新宗教が発足したっぽい。精霊信仰と神聖信仰が融合したんだとか。

 あ、初代の教祖? 大司教? はあの巨乳の高位神官だそうです。

 俺? 俺はあいもかわらず王様のままですよ。

 で、なんか超でっかい精霊石をわたされました。厨様全員と王国の精霊皆で作った精霊石なのだとか。

 で、厨さまと幼女軍団とサラ子さんがサポートしてくれて召喚しました。

 すっげー疲れた。

 あとすっげー眩しい。

 念のためサングラス掛けてたけど、それでも眩しいんだわ。

 なんか、天使?(種族的には精霊とかわらんらしいけど) 神聖教会が崇めてる天使の中でも位の大層高い人が降臨したんだって。

 わけわかんないけど国民になるらしいからピカピカをやめさせて、書類を用意してから給料とか相談してたら岩本さんに凄い勢いで笑われた。

 わけわかんねぇ。



 六百三十六日目

 俺は、徳が大層低いんだと天使さんに言われてしまった。

 ちょっとショックだったけど、実害はないらしいんで今日も政務に励んでます。

 あ、今日の朝刊(隣国発行)に俺の死体を発見したみたいなことが書いてあってびびった。

 詳しく調べてもらったら、なんか。政争? みたいなもので俺の一族が数日前に殺されてたっぽい。で、俺もついでにどっかの山の中で死体が発見されてたんだって。教会が死体確認したから本物とかそんなこと言ってるっぽい。

 はぁ、って感心して聞いてたら悲しくないんですか、みたいなことサラ子さんに言われたから。悲しくなったふりしてサラ子さんに思う存分甘えてみました。

 悲しいとか。ねぇ? あるわけないさ。



 六百三十七日目

 (天使さんまで調子のって精霊石作るもんだから)集団召喚。連続集団召喚って感じでやってます。あとまた国境で人が死んだとか。

 えーん。誰か助けてー。って王女様(武)に泣きついたらたまには息抜きしろって言われたんで。午後は王女様(武)の私室でチェスしながら紅茶(お茶の栽培と紅茶作成に成功しました)飲んでごろごろした。

 執務室に帰ったらサラ子さんが怒髪天をつくって感じだったから怖くなって逃げた。


 捕まって書類押し付けられた。夜中までかかって処理しました。



 六百三十八日目

 ちょこちょこ作ってた街灯を完全整備してみた。あと精霊車の販売が始まったとか。

 隣国の使節がまた国境で殺されたそうです。あ、風男君の事業が軌道に乗りまくってるとか。

 俺は今日も召喚ですよー。四つの街と八つの村の整備もやらんと。あ、ちなみに天使さんが来てから村への移住が始まってるんで、孔明のとこの人間に村長任せてみました。



 六百三十九日目

 えっと、道路に、線路に、信号? 住居をもっと作れ?

 対応できないので建設大臣を決めました。岩本さんとこの岩吉さん(長男)にやってもらうことに。ついでにビルとか建ててもらってみる。

 というかこの際だからいろいろ省庁を作ってみた。

 あ、貨幣はまだ王様管理で。流石に予算は握っとかんと新宗教に勝手に寄付されかねん。



 六百四十五日目

 省庁とかできたから式典だってさ。もう仕事は始めてんのにねー。

 ついでにこの前の論考褒賞? えっと立派な宝剣に、鞘を作ってもらったから偉そうに渡します。

 あとなんか大臣に渡すための宝具? 何? 神宝? おおげさだけどそんなもんを厨様とか天使さんが作ってくれたのでそれも偉そうに渡してサラ子さんが書いてくれた原稿を偉そうに読みました。

 あ、今日はご馳走だそうです。

 そうそう。なんか既に牧畜を大規模にやってるっぽいです。半年ぐらい前から毎日上手い(徳の減らない)肉が食えてたっぽい。いや、徳が下がりすぎてるから俺は区別つかんのです。



 六百五十日目

 光学迷彩ゴーレムとかいうのができたんだって。わけわからんとか思ってたけどいいから森に配備しとけって言っといた。



 六百五十一日目

 鉄砲? レーザー? よくわからんけど軍事技術とか作りすぎだろって思う。平和利用平和利用って三回呟いてからホウ統に丸投げして政務に励む。

 あ、午後にサラ子さんと王女様(武)と温泉行ってきました。省庁作ったらちょっとは楽できるようになったぽい。


 と、思ってたら精霊石渡されて午後も仕事です。



 六百五十二日目

 そういや、漫画とか小説だと王様ってこう、嫁とか貰うんだよなーって思った。とりあえず傍で仕事してたサラ子さんに俺に嫁の予定はあるかって聞いたら真っ赤な顔してどっかに行ってしまった。

 あれ? 仕事どうすんのよ?



 六百五十三日目

 政務中。サラ子さんがこないんで角少女が補佐してくれてます。

 弾道ミサイル? 最近政務しすぎて頭が回らなくなってきた。なんでこんなもん作るんだとか思ったけど金はまだまだ余ってるっぽいんで作っていいよって許可だしとく。そういや鉄砲とかレーザーとかよく作るよなって呟いたら角少女に把握してないのかって爺言葉で聞かれてへこんだ。

 でもいちいち俺が確認せんでも国が回るのはいいことだよ思うんだよね。ちゃんと諜報の人たちからクーデターとか暗殺とかはありませんよーって報告は来てるし。

 そんなこと話してたら信用はできるのかみたいなことを遠まわしに聞かれたけど、財政は俺が管理してるので大丈夫だって答えといた。福利厚生(備品の補充費とか、定期的な病院での無料検診とかそういうの)もちゃんとやってるから裏切るとか……そういう怖いこと考えさせないでって思ったけどわけわからん真剣な表情で聞いてくるもんだから言いそびれてしまう。

 裏切るとか、ねぇ?



 六百五十四日目

 早速、諜報の本拠に行って来た。外見ふつーの住居なんだけど。中身は忍者屋敷に似てる感じ。案内の人も道に迷ったら死にますよーって冗談いってくれるしねー。

 で、えっと、諜報一家の家長さんとこに言って。いつもいつもありがとうって頭下げて菓子折り渡す。ついでに省庁作ったときに風男君とこの厨様が余分に作った神宝? みたいなもんを渡したらえらい感激された。

 いや、この人たちの存在は公にできんから渡して(忘れてた、とも言う)なかったんだよね。今は警視庁(あ、ちょっと人材的に無理があったけど無理矢理、軍と分離してみた。まぁ騎士君とかが血反吐吐く程度に頑張ってるらしいから大丈夫でしょう)とかそういう省庁(とはいえ、諜報は一部の人以外、存在しらんのだけどな)に分散設置してるんで、馴染んだらこの人たちの一部を公にしとこうかと思うけどさ。

 そういうことを今のうちに話しておいて、ちゃんといずれ国民から評価される立場につくよーって脅したんだけど。なんか、涙流して、仕えてよかったみたいなことを言われてしまう。あるぇ? 仕事増えるんだぜ? 恨む立場じゃねぇの? とか思ったけど空気読んで言わないことにしといた。

 でも戦場に出ない軍よりこの人たちの方が死傷率(訓練で怪我する人が軍にはいるけど)高いんだよね。

 贔屓だけど研究所の光学迷彩とか新兵器を軍より優先で使えるように書類書いといた。



 六百五十五日目

 折角なので省庁巡回を始めてみる。

 政務? ちゃんとやってますよー。

 あといい加減サラ子さん来ないと仕事が大変なので二人で温泉街行ってきた後にちょっとだけ嫁についての俺の見解(独身貴族ってさ。響きがいいよね的な話。いや、嫁については疑問に思っただけであと数年は独身でいたいんですよ)を話しといた。



 六百五十六日目

 国境で隣国の騎士団がミンチになったんだって。すわ、うちが次の戦争目標かってびびってたら諜報の人が、ただ偵察部隊だって教えてくれた。

 隣国の戦争目標は今は周辺の小国だって。あと空白地化してた神聖と魔導の領地経営に四苦八苦してるから、うちとやりあう体力はないんだと。あとは、なんだったかな。大貴族とか大将軍とかに工作をしてるんで、国が三つか四つに分割して内乱が起こるかもって報告してもらった。

 すげぇびびった。うちでもできるんかって内心びびりまくりつつ聞いたら、できるけどそんなことはしませんってきっぱり言ってくれたんで安心しました。

 あ、今日はやっと復帰したサラ子さんと省庁廻りです。皆働いてるよねー。諜報の人に頼んでどこから廻ったらいいかのリストも貰ったんで優先度順に廻ってくことにします。



 六百五十七日目

 ちょこちょこ勧誘してた芸術家さんたちの中に作家がいて、そいつが書いた台本で劇をやってたんだと。いや、俺見たことないけどさ。双子ちゃんの姉の水奈さんが建国記っぽいのを書いてたんでそれを元にして作ったんだって。

 へぇーって思ったんだけどさ。盛況だったからいろいろできる劇場が欲しいって言われた。王女様(武)とか王女様(幼)とか大神官(巨乳)まで連名で作れって押しかけてきたから許可出しといた。ついでに他の街とか村にもここよりちっさい劇場を作るようにお金とかだしといた。電車も一部できてるし。巡業できるといいよねぇ。

 あ、温泉街に優先的に作るように指示だしたから今度見に行ってみようと思う。



 六百五十八日目

 なんか毎日のように新開発とか新兵器とかの報告が来る。なんかおかしいなーって思っていろいろ書類見てたらぴかぴか光ってる連中(天使さんの精霊石で召喚した連中)を雇用し始めてからだった。

 で、雇用するって表現で気づいた。そういや、最初は国じゃなくて会社っぽいことしたかったのかなぁとか云々。いや、流浪の人が来た辺りから違ってきたのかなぁ、とか。俺って適当だなぁって執務室でうにゃうにゃしてたらサラ子さんが変な目で見てきたんで、(無意味に)初心に帰る意味でサラ子さんに料理作ってもらって一緒に食べた。

 そういやまだメイド服なんだよね。サラ子さん。



 六百六十五日目

 隣国で内乱が起きてるんだって。ついでに天馬騎士団が魔王軍と昨日から先端開いてた(間に小国があったんだけ数日前に王城崩壊だって)。

 勇者? 将軍になって、先頭で指揮だって。出世してるよねぇ。朝刊に大剣士の遺言がうんたらーって書いてあったけど、朝食が上手かったし興味なかったんで読み飛ばした。



 六百六十六日目

 朝から雨が降ってた。こういう日はサラ子さんもちょっと元気ないっぽいんで仕事をさっさと片付けて二人でお茶することに。

 途中で王女様(武)がやってきたから三人でお茶した。



 六百六十七日目

 発魔所をまた作ったんだって、今度は三基連続で。メルトダウンしねぇよなぁとか不安に思ったけど美人さん(貧乳)が、大丈夫だし無関係だから安心しろって力説してたんで信じておく。

 あ、大陸中央で大地震だって。発魔所と関係ねぇよなぁとか不安に思って聞いてみたけど別件だった。岩爺さんを強引に召喚しようとした勢力があったんだって。で、(普段何考えてるかわけわからん)岩爺さんがイラっときたんで、こっちから逆攻撃したんだとか。

 ここ? 遠い上に結界あるからぴくりとも揺れなかった。そういや凶作とかそういうのもないよねって美人さん(貧乳)に聞いたら自分の国のことだろって突っ込まれてそのままずぅっと講義された。



 六百六十八日目

 角少女に変な石渡された。こいつも俺に召喚を強要するのかって泣きそうな顔で見たら、なんか薀蓄のあること言われた上に俺の温情? 魔王の娘? とか俺がなんでも知ってるようなこと言われたけど。俺に唯一、わかったのはこいつが魔王の娘ってことだけだった。

 あれ? 娘誘拐したとか思われて魔王の攻撃標的にされね? とか、鞭打ちしちゃったんですよって、内心青い顔でびくびくしてたけど、あんまり青い顔してたら舐められるんで、毅然って内心で叫びながら唇ぷるぷるさせてた。

 角少女が猿でも殺せるんじゃねぇってぐらい油断してたから、浄化の魔法でこいつ殺せるかなってそっと頭を抱き寄せてみたけど、こいつ出世しまくって王国の政務の一割ぐらい任せてたのを思い出して自重した。

 なんか俺の胸の中でわんわん泣いてたけど俺は服越しだけど乳首に角がささってそれどころじゃない。


 そうだよねぇ、せっかく仕事を他に任せられるようになったし、俺が過労死したら魔王以前の問題なので角少女抹殺は(今は)やめておこう。

 角少女には二、三日休暇を与えておく。



 六百六十九日目

 やばい。角少女優秀すぎる。

 任せてた仕事を回してもらったんだが、俺の知らない国の言葉だったんで、俺の頭脳じゃわかんねぇの。そういやうちの言葉って自然と俺が使ってた言語をみんな使ってるけど厳密には統一されてねぇって気づいた。いや、俺の使ってる言葉を知らんうちに国民のみんなは使ってるらしいけどさ。でも使い慣れてる奴を普通は使うよね。そういう人も結構いるっぽいです。

 で、今まで俺に回されてた(俺の読めない言葉の)書類って角少女が翻訳してたらしいんだわ。あ、それ以前はサラ子さんがやっててくれたそうです。

 今日はサラ子さんに任せるけど、政務の一部が滞り始めそうだったんで今日は召喚もせず、徹夜で政務をすることに。

 角少女は始末できないみたいです。



 六百七十日目

 書類の文字を統一するように指示を出してみる。でも流浪の民の国だから二、三日じゃ無理っぽい。そんなこと思いながら仕事してたら角少女が顔を出してきました。

 え? 元気になった。気を遣ってくれてありがとう? 相変わらず爺言葉で和んだけどさ。抹殺しようとしてたのはバレてなくて超安心です。

 こいつが誰だろうと、ちゃんと仕事をしてたのは事実だったんで、お礼代わりに今まで仕事ありがとうなって言ったら何を思ったのか泣きそうな顔になったけど。こいつ抱え込むのを決意したんで今まで以上に扱き使うつもりでこれからもよろしくなって言ってやった。

 なぜか感謝された。わけわかんねぇ? 仕事与えられて喜ぶってマゾか? とか思ったけど空気を読んで何も言わない俺は超善人だと思う。

 あ、こいつの重要性はわかったし、今まで以上に扱き使うけど、魔王の娘ってことで俺の中での評価はプラマイゼロ。だから給料は今までどおりってことを言おうと思ったけど。薮蛇になったらまずいので黙って頭撫でてみる。

 でもなぁ、あれだよね。労働組合とかできたら差別だーっとか言われかねないのかねぇと不安になりつつ。今日も政務です。


 そうそう、労働組合って言えばさ。労働の法律(労働時間ね。残業ダメとか)ちゃんと作ったら俺に適用されるかなってことをサラ子さんに言ったら笑顔で書類の束渡された上に甘い声で無理ですって言われた。

 角少女勝手に休ませたことをすごい恨まれているっぽいです。


 あ、貰った石を(また)間違えて召喚に使ったら幼女が召喚できた。

 対魔王精霊とか最近の新人さん(主にピカピカしてる人たち)に多いわけわからん主張を言ってたけど。徹夜明けで眠かったから全部スルーした。

 とりあえず若い精霊で幼女だったんで書類契約して幼女組に送っとく。



 六百七十一日目

 幼女が神殿が欲しいって言ってきた。なんでって聞いたら新しい精霊が来たからだって。あと新しい神殿だと武器に対魔王属性とか言うのを付与できるようになるんだってさ。

 魔王に興味ないから却下って言ったけど魔物によく利くって言うから予算を出しといた。

 ついでにゴーレム研究所から対魔王用ゴーレムの製造計画が出されてた。もう兵器はいらんだろって却下しようと思ったら角少女が何を思ったか俺を説得してきた。

 あるぇ? 父親殺していいのん? って感じで疑問に思ったけどこいつも説得スキル持ちっぽかった。なんか、気づいたら言われるままに対魔王用兵器の製造許可を出してしまう。



 六百七十二日目

 そういや、森から魔物消えたし魔王殺してもいいんだって気づいた。でも魔王って超強いじゃん。関わりたくないからなるべく仲良くできるように頑張ろう。

 そういや他国との外交チャンネルがないんだよねぇ。でも謎の王国とかかっこよくねって思ったから現状維持って三回呟いて政務に戻る。



 六百七十三日目

 ドラッグ? 麻薬? よくわかんないけど市民の一部。娼婦とかあと、仕事ができない(盗賊から避難してきたり、新しい仕事を覚えられなかった人とか)人の一部で流行ってるんだってさ。

 とりあえず警察動かしてボッシュート。使った人には興味ないんで作った人の所に行ってみる。そういや薬の法律あんまり整備してなかったわ。

 作った人は薬局を個人で開いてる人だった。王様の俺が来て驚いてた。あと、なんだ、時代劇のへへぇーって奴初めて見た。で、この人は光の精霊を信仰してる人で、麻薬はトリップしてるときに精霊さんと話すとイイ感じになるし、儲かるからみんなに売ってたんだってさ。

 でも、俺はなるべく健全な国を作りたいのでそういうのはいかんって言って、この人には国立病院で人体になるべく安全で依存症のなるべくおきない麻酔の開発を命じることにする。麻薬って麻酔にもなるって聞いた事あったようななかったような。まぁ、薬のエキスパートっぽいし。大丈夫でしょ。

 王命ってことで張り切ってた。根は悪い人じゃないっぽいので、問題とは思ってなかったみたいです。そうだよねぇ。問題起きてからじゃないと悪いことってわからんもんねぇ。

 と、いうわけで薬関係の法律を整備することに。



 六百七十四日目

 そういや俺の政策って対処療法だよねって言ったら政治はそんなもんだって王女様(幼)に言われた。

 現代知識もあんま使ってないなぁとかへこんでみたけど、実際に政治やってみると次から次へとやらなきゃならんことが舞い込んでくるので現状に甘んじてみる。



 六百七十五日目

 まだ隣国は内乱っぽい。えっと四だか五竦みっぽい。うかつに動くと他の勢力に滅ぼされるから戦争準備だけしてるんだってさ。

 天馬の人たちは主力である勇者が頑張ってるけど他がぼろっぼろだって。勇者装備あればもっと楽に戦えるそうです。

 あ、勇者装備は剣以外持ってないってさ。今度あったら指さして爆笑してやろうと思う。



 六百七十六日目

 政務と召喚が最近の日課です。

 あ、あとサラ子さんとまた温泉行ってきました。王女様(武)がなぜかついてきたけど女の人がいると和むのでよしとする。



 六百七十七日目

 岩本さんと温泉で出会う。夜中に一緒に酒を飲んだ。

 なんか、召喚される前は想像がつかなかったぜ的な昔話をされたので俺もこんなことになるとは思わんかったって言っといた。

 そうだよねぇ。洞窟で一人震えてた頃とは違うんだよなァって思った。

 こっちに執務室作れば楽じゃねって思ったけど王様があんまり他に移動すると皆が心配するからやめろって言われて諦める。

 そういや最近(国外に)外出してないよね。

 って言ったら国が止まるからやめろって言われた。

 でも、ジークフリート計画が終わったら暇になる人が増えるので俺に纏まった休みがつくれるかもってさ。

 何年後だよって突っ込んどく。



 六百八十日目

 夜中にぱちって目が覚めてベッドの脇を見たらペーストが出来てた。

 なんじゃこりゃぁって某刑事風に叫んだら、サラ子さんが凄い焦った顔で寝室に入ってくる。

 なんだ、暗殺者? 密偵っぽい人が来てたんだってさ。

 あ、光学迷彩ゴーレム。俺の寝室に配置されてたそうです。

 今日の政務はちょっとやめて。久しぶりにドSな火精霊のところに。俺の寝室にたどり着く前に捕まった人がいたんだそうな。ドジだよねぇって言ったら。城内に光学迷彩ゴーレムが巡回してるから熟練の暗殺者でもたどり着くのは難しいとか。

 へぇって、感心する。実は拷問吏の火精霊さんってさ。物知りだよねってことで雑談しながら牢屋を見ると三人ぐらい捕まってた。

 女女男。んー、どうしよっかって火精霊さんと笑いながら相談。俺、善人だからあんまり酷いことはねぇって言ったら火精霊さんが冗談きついみたいなことを言う。わっはっはと笑ってたら諜報の族長さんが来た。(火精霊さんとは顔見知りです)

 なんか凄い勢いで謝られた。暗殺者は関係は族長の管轄だからねぇ。あ、城内警備の責任者が来ないので、このことって正規の人たちには伝わってないっぽいです。まぁ、やたら国内騒がせてもしょうがないので緘口令を敷いておくことに。

 とりあえず俺の寝室を掃除(ほら、メイドとかに掃除させたら何があったのかって思われるし)したり、いろいろと指示を出してるサラ子さんが来る前に拷問をちゃっちゃとやってしまおうってことになりました。

 族長に責任をとらせる? いや、政治って対処療法らしいしさ。過ぎたこと言ってもしょうがねぇべさ。でも示しがつかないんで、後で俺直々に鞭打ちってことで納得してもらう。

 あ、族長はすっごい美人なお姉さんっぽい人です。怖いから年齢は聞いてないよ? でも暗殺者が俺の寝室来たぐらいで自分の首(比喩に非ず)を差し出すとか、発想が貧困で、ちゃんちゃらおかしいよねぇ。

 エロスエロスって三回呟いてから拷問を始める。

 とりあえず男からだよねーって火精霊さんと笑ったり笑わなかったり。

 捕虜? なんか男とか毅然って感じで俺見上げてたけど、女の人とかは俺の方も見ずにガタガタ震えてる(傷もつけずに捕えられたっぽいからド素人に近いのかもしれん)。あ、自殺防止用に自殺禁止の魔法(正確に言えば自傷行為などへの思考をロックする魔法らしい)を打ち込んであるってさ。

 蟻風呂ぉ、治療して、蟻風呂ぉ、治療して、蟻風呂ぉ、治療して、蛭風呂ぉ、造血の魔法打ち込んで、蛭風呂ぉ、造血の魔法打ち込んで、蟻風呂ぉ、治療して、って繰り返すんだけど吐きません。さすがプロです。

 感心しながら男見るとアガアガ言ってる。最初の蟻風呂は眉ひとつ動かさなかったけど、治療した時に神経系も復活させたから、痛覚(族長さんが言うには痛みの苦しみを受けないように潰してるのが多いんだそうだ)が復活したのかもしれん。ご愁傷さまです。

 で、今は再生系の魔法で再生させながら蟻風呂とかやってます。あ、蟻は陸のピラニア? みたいなこと言われてる奴。魔物の一種みたいな奴。数を調整してるけど一分ぐらいで人間サイズの生物を跡も残さず食べてしまう怖い奴。

 丈夫な人なのでわっほーいって火精霊さんと肩組みながら踊ったり。ちょ、族長さんヒかんといて、別にマッチョが好みなわけじゃないです。恐ろしい方だとかつぶやかんといてー。

 そんなこんながありまして。

 いやぁ、サラ子さんが来る前に素性を吐いていますよー。えっと、俺が滅ぼした魔導王国の残党っぽい人みたいです。はぁ、ご苦労様です。夜盗とか山賊とかやってる人もいるのに真面目だよねぇ。あ、族長さんが侵入経路吐かせてます。流浪の民に混じったり、国境の警備の薄い場所を探ったり、この人たちも大変だったんだね。あ、転移は結界が大きくなりすぎたんで国内では使用できなくなりました。そもそも使える人が美人さん(貧乳)だけだったしね。

 とりあえず族長さんの弟さんがやってきて暗殺者の死体の数とか教えてくれました。あ、やっと国のトップに連絡が入ったみたいで、この後、防衛会議みたいなことするっぽいです。夜中に起こされて眠いんだけどね。

 で、この国に侵入してるっぽい密偵さんの数とか、他に侵入してる人とかいないかとか聞いてから死体とか差っぴくとまだそこそこ人がいるみたいです。

 幸いネームガードはしてないっぽい。というより心を縛る邪法とかなんとか。そういう認識らしいね。この人たちには。


 下半身を蟻に食わせながら情報を吐かせてます。うーむ。グロイ。とか思うけど汚れ仕事もたまにはやらんと。というよりまだまだ皆を信用してないのかなぁ。いやいや、明るいこと考えとかんと。陰鬱なことしてるときに陰鬱な顔してたら気分が沈んじゃってそもそもの発端とか考えちゃうもんなぁ。笑顔笑顔。

 よし、と気分を一新。殺してくれぇとか甘いことを男が言ってるけど駄目です。俺の安全のためにもまだまだ吐いて貰わんと。

 で、勢力とか。この国に潜んでる密偵さんの名前とか、所在とか、いろいろ吐いてもらいます。この人、偉いっぽいし。というよりベテラン? 束ね役ってほどではないみたいだけど。

 うーん。信憑性がなぁってことでまだいた弟くんに光学迷彩ゴーレムを使って、隠れている人をふんじばってくるように伝えます。

 ふーん。このおっさん、九歳までおねしょしてたんだって。って、火精霊さんなに妙なこと聞いてんの? え? 屈服した後は面白くないって、俺だってマッパのおっさん弄って喜ぶ趣味ないよ。族長さんも恐ろしい人だぁ、とか言わんで言わんで。ホモじゃないんです。俺。

 とりあえず、この人には強力なリジェネ(火精霊さんがなんか、得意っぽい)掛けて蟻風呂に死なないように放置します。

 あくびしながら拷問の様子を見させてた女の子の方に言って。情報の裏、というか信憑性を取らんと。一応、防音の結界を使って男が吐いた情報を与えないようにしてたんだけど。うーん、新人っぽいし、誤情報を元から与えられてたらやっかいだなぁ、ってことで一応族長さんに任せてみようかなぁ。ねむいし。族長さんもお疲れでしょうから自分にやらせてくださいって言ってくれてるし。うーん。信用? 信頼? うーむ。俺の命狙われてるんだし自分でやった方がいいと思うけど、誤情報に踊らされてしまう可能性もあるし。これからを考えると俺が率先してやってる暇もなさそうだし。ぷろ、ぷろって響きがいいよねぇ。拷問のプロフェッショナル。ってことで隣を見ると火精霊さんが笑顔でサムズアップしてきた。

 ノリでいぇーいって手を叩き合う。いや、特に意味はない。

 でも名案っぽいのを思いついた。族長さんへの鞭打ちってさ。たぶん経験則からいって、バレたらサラ子さんの機嫌が悪くなると思うのよ。なぜかはわからんけど。火精霊さんも鞭打ちって決めたときにそんなようなことを教えてくれたしさッ。

 と、いうわけでここはお二人に任せてみようと思う。ちょうど相手も二人残ってたしさッ。

 ではでは族長さんに命令、と。火精霊さんより手早く正しい情報を一杯吐かせられたら今回の件を不問としまーす。なんでちゃっちゃとやってください。

 俺? 俺はおっさん見てるわ。超善人だから、年下の女の子の酷いザマなんて見たくないのです。

 心の重圧を他人に押し付けるって楽でいいなぁって思いながら、どうでもいい(ほんとくだらんこと)情報をおっさんから聞き出して遊ぶことに。

 へぇー、国内の調査があらかた終わったの? ふーん。そうなんだ。戦力とかわかって、正面からじゃ殺せないから時間を使って暗殺? ふーん。心底どうでもいいです。平和が一番だよって言ったら、悔しそうな顔で貴様が言うな。外道、悪魔、鬼畜生、鬼畜、国民を圧政やら暴政やら魔法やらで縛る鬼畜。大量の精霊を奴隷のように扱う魔王めがーみたいなことを言われた。ひでぇ、精霊に奴隷のように使役(誇張表現)されてる俺に向かってそんなことを言うんか、みたいな感じで遊んでたらさ。おっさんの顔が急に青くなったんよ。いや、元から顔色最悪だったんだけど、残った手で俺の背後指差してんの。なんじゃろなーって後ろ見たらサラ子さんが無表情で突っ立てた。

 何? 炎? え? あれ? 俺? 死ぬの?

 一瞬で、ぱぁっと走馬灯っぽいものが走った。でも勘違いっぽかった。あとちょっと漏らした。

 サラ子さん、なんか両手に炎を灯して俺の隣歩いてったらさ。おっさんの口からなんかほわぁって出てきて、それにサラ子さんが両手を掲げて、おっさんの口から出てた変な物体が消滅してった。

 え? わけがわからない? 俺もわからない。

 でもおっさん死んでた。蟻の時よりも苦しそうな顔で死んどった。あんな死に方はしたくないねって凄く思った。

 サラ子さんは……俺の顔を無表情で見た後、苦しそうな、悲しそうな顔して、始まってる会議に参加してくれって言って儚そうな口調で言って、拷問室出てってしまった。

 あー、情報源勝手に処分ですかーって突っ込みたかったけどサラ子さんが何を考えてるのかわからなかったので黙っておくことに。

 拷問とか、好きくない? いや、好きな火精霊さんが異常なんだと思うけどさぁ。

 うーむ。安らかに死ねなかったぽいけど。さっさと死なせてやりたいっていうサラ子さんなりのおっさんへの温情だったのかもしれん。

 でも情報源がなくなったら諜報が苦労すると思うのでサラ子さんの拷問室への立ち入りは今後禁止やね。敵への情けも必要だとは思うんだが。うーん、でも敵は敵だよなぁ。

 ってことを考えてから慈悲慈悲って三回呟いてまだ拷問やってる火精霊さんに会議言ってくるって声を掛けておく。ほら、族長さん頑張ってるし。拷問に集中してたから。声掛けるのはやめといた。

 火精霊さんはサラ子さんのことに気づいたのかもしれん。何かあったのかって聞かれたからさっきのことを隠さず(おっさんに悪口言われたあとサラ子さんが来て殺してしまったみたいな)伝えておく。いや、俺があんな苦しげに殺したとか思われたら変な勘違いされそうだしねぇ。

 で、納得された。まぁ、サラ子さん優しいから、敵にも温情かけるんだよねぇ。って言ったら変な顔された。え? なに? なんなの? というか、火精霊って皆あんな殺し方できるん? そんなことを聞いたらサラ子さんは特別? みたいに言われる。でも疑問があるなら本人から聞けって言われて拷問に戻ってしまった。

 うぅむ。以前からサラ子さんは厨様たちにも妙な目で見られたけどなぁ。俺の知らないことがいろいろとあるのかもしれん。

 でも、プライバシーって大事だよねってことで保護法保護法って三回呟いてから会議室に向かうことに。

 サラ子さんは途中でトボトボ歩いてるのを見つけたから、俺は(思えばおっさんには十分喋らせたし。殺したことは特に)気にしない(問題にしない、という意味で。本当は減給ぐらいはしたかった)けど、もっと(大切な情報源なのでこれからは)労わるようにって言っといた。

 言葉が足りなかったかもって言ってから気づく、いい加減な奴だと思われたかもしれないってちょっと自己嫌悪。でもサラ子さんだしわかってくれるかもって期待してみたら、元気出したのか笑顔でこれからもよろしくお願いしますとか言われた。んん? 拷問部屋のことだよねって思ったけど、拷問に今後は口を出さないので、よろしくお願いしますってことだと解釈して、俺も笑顔で頷いておく。


 会議は遅れて入ったら踊ってた。全然進んでなかったんで、燃料(判明した情報)を投下して、ちょっと出てた有用な意見を採用して。あとは、折角だからってことで警視庁の中に防諜関係の部署を作るように命じて閉会。

 いやぁ、今回の暗殺騒ぎは逆によかったのかもしれんって喜んでおく。

 光学迷彩ゴーレムも役に立ったし。この前の諜報一族との約束事も果たせたし。結局敵もあんまりたいしたことなかったしさ。

 あ、ちゃんと族長さんが情報を一杯吐かせたし(情報吐かせることより拷問を楽しむ火精霊さんと情報を目的とする族長さんでは族長さんが勝つに決まってた)、潜んでた人たちを捕まえられたんで、残党のアジトには即日でゴーレム部隊が強襲しにいった。数人生かしてまた拷問したんで、今回の暗殺事件単体はもう終了です。

 でもいちいち俺の部屋の絨毯を取り替えるとか無駄なので今度はこっちから各地の残党組織を潰してもらえるように防衛省の長官(ホウ統)に頼んでおく。

 でもうちの国のこと知ってる連中って一杯いるんだろうか? 一般市民レベルだとわかってないよなぁ。流浪の民ももうそんなに残ってないし。

 うーんうーんと唸ったけど結局わからないので報告待ちってことで。



 六百八十三日目

 国家転覆を考えてた、みたいなことで暗殺事件で捕まえた人たちの首を晒しておく。流石に翌朝隣近所の一家がまるまる消えてた、とか隠しきれない。結構大家族(一族)で、そこそこの商家だったし。

 数日前の隠蔽は、火竜王国は国交を閉じてるので人がいなくなったらばれるってことを忘れてた俺の失態だ。

 そっか、そういうのは隠蔽できねぇなぁ。まぁ、せっかく平和だったんだから戦争があったことはいいたくないし。そっちは黙っておくことに。つか説明責任とか発生するほど民衆のレベルが慣熟してないのが助かったとも言うべきか。

 戦争があってって言うと領土は? とか何を得たのか? とか言われるだろうし。黙っておくにこしたことはありません。領土増やしても管理しきれないんだよなぁ。そもそも。

 とりあえずは、急に首を晒したことでの民衆の動揺は俺が考えてたよりはないみたい。衣食足りて礼節を知る、という感じなのだろうか。

 低税率(実は取らなくても廻るけど、取らないと付け上がるからとってる)に住居と仕事と安定した食料やらなんやら。なにより定住できて思想を弾圧されないというのが俺を支持する理由っぽいね。確認させたら晒した首に石を投げた後があった。今も投げてる人がいるというので安心しておく。うむうむ。

 で、報告。

 流浪の民に紛れたってことよりは、連れてきた流浪の民の大家族がまるまる諜報一家っぽかった。もともとは魔導王国の貴族の密偵の一組織として、各地の流浪の民に混じって諜報をやってたんだと。諜報の族長様が報告が来たんで教えてもらう。あ、もうこの人は公に動けるっぽいです。というより表に出て他の人たちと政治的に渡り合えるのがこの人ぐらいしかいなかったというべきか。

 で、残党一味ですが。

 最初の任務はこの国の調査だったっぽい。移民自体は最近受け入れた人たちの中の一部で、そうとうの昔に紛れ込んだから、誰も疑ってなかったのだと。精霊については信仰ではなく、力としての信頼で元々の魔導信仰との差異や厨様への信仰心を誤魔化してたらしい。あ、魔導信仰っていうか魔術偏重主義みたいな。とりあえず精霊は使役するものって考えだとさ。すり替えとはいえ、気づかなかったことを担当の厨様は恥じてた。心って複雑だよねぇって誤魔化しておく。

 そもそも、この国の調査自体は、なぜか各地から消えていった流浪の民の行き先を探ることだったとか。火竜王国に取り込まれてからは王国外に出られなくなったんで、戦争とか魔導王国滅亡は外部から接触(残党)があるまでわからなかったってさ。暗殺への参加は諜報を得手としてたからしなかったんだと。というか捕まえたときにはもう逃げる寸前だった。こんなに早いとは思ってなかったんだと。

 一応、拷問には立ち会った(ちょっとだけ俺も若い娘さんにした〔相も変わらず凌辱禁止令出てたけど〕)。で、彼らの言い分は。ここでの生活や、定住できる居場所は居心地がよかったけど元々の王国に忠誠があるし、何より精霊と共に暮らすことは、魔導信仰の人には苦痛だったんだそうだ。

 まさか大陸最高の剣士が国王だったとか、美人さん(貧乳)(魔導王国じゃ相当有名だったらしい)が仕えてたことには吃驚(びっくり)したし、それ以上に一番上が人間だったから抵抗感は最悪ってほどでもなく。次々と民を重視する政策とか、暮らしにも心は揺れた。でも、先祖から守ってきたお役目とか、目を掛けてくれた貴族とかいて、それを滅ぼした俺が我慢ならなかった、とか憎しみの目(まぁ散々娘さんを目の前で甚振ったし)で言われた。

 ふーんって思った。まぁ、納得できる理由ではあった。でも、それだけだった。

 心底どうでもよかったんで情報を徹底的に吐かせて、おしまい。娘さんには、どうして私達にも声を掛けてくれなかったんですかって族長さん(諜報)を見ながら言われた。なんか、そうだったなら父親を殺してでも俺に仕えただろうみたいなIFの話を言われてちょっとだけ困った。愛らしかったので、生かそうかなぁとか思ったけどさ。俺的には親父さんの理屈の方が納得できたし。部下に持つなら親父さんみたいな人に働いてもらいたかったわ。

 そんでちょっとだけ思った。暗殺者たちと接触があった時点で情報をタレこんでくれたんならまだ信用して雇ってあげてもよかったなぁとか。移住してきた時点で自分から技能を売り込んできたなら喜んで雇ったかもしれんって。

 でも結局IF、もしもの話だもんねぇ。

 余りの甘さに族長さん(諜報)と思わず笑ってしまった。そのときのきょとんとした仕種が本当に甘くて愛らしかったので火精霊さん用の観賞用人形としてでも生かしてあげたかったけど。(なるべく)健全な国家を作るんで、やっぱり首をきっちり落としました。

 窓から見える広場を見ながら族長さん(諜報)が、神妙な口調で、もし順番が違えば自分の末路はああだったかもってことを寂しそうに言ったけど。正直、諜報一家の暮らしとか俺にはわからんかったので、貴方の運がよかったからだろうって言っといた。

 そうそう。この人は元々、神聖帝国でのあの一族と同じ立場だったらしい。簡単に引き受けたのも、神殿を要求したのも俺を騙し、取り入るためだったとか。でも今は、なんだろねぇ。あの挨拶回りが原因だったのか、それ以前の何かが要因だったのか。よくわからない。真面目に仕えてくれるっぽいし。情報も正確(風男君の情報網との照合。この人は風男君がこの人の行動を逐一俺に報告してることを知ってるんだろうか? 聞かないけど)だし。

 族長さんに裏切ったら自分も殺すのかって寂しそうな表情で聞かれた。あの家族も実は国ではそこそこな立場だったからどんな人間でも殺すのか、とか思われてるのかもしれん。

 聞かれて疑問に思う。さて、ねぇ。殺すのかなぁ。正直、この人が自分を裏切る姿が想像できなくて困った顔で笑うしかできない。そしたらなんか急に失礼なことを申してすみません、みたいに言われた。うん、まぁちょっと踏み込みすぎだよね、って思ったけど黙って首のある広場を見てたら用はないのか退室してった。


 あの人が裏切ったら、か。

 たぶん……殺す。おそらく、殺す。絶対に殺すかもしれない。

 なんで俺だったのだろうか。どうして他人と人生を入れ替わる必要があったのか。

 俺には理解できないことが多すぎて困る、と思ってしまう。


 そんなことを考えてたらいつのまにか入室してた王女様(武)がいて、俺の頭を胸に抱え込んでしまった。

 相当寂しそうな顔をしていたらしい。ちょっとだけ涙こぼれたかも。


 母さん、と声に出せない声が漏れた。荒んだ生活のせいかもしれん。

 父さん、と声に出せない声を零した。人を殺してまで己が生きたとして、何を残せるのかなって聞きたくなった。

 人を扱う仕事よりも、母さんとの愛に生きたあの人なら、どんな言葉を残してくれるのか。想像がつかなくて、結局は自分自身が結論を出すしかないのだろうと。腹腔に溜まる甘い匂いを腹に収め、性器を勃たせながらそんな想像をした。

 俺は王女様(武)を抱いた。

 そうして、その夜まで俺は王女様(武)の中に欲望を吐き出した。

 愛じゃなかったと思う。性欲か、寂しさか。どちらにせよ。己の安定を他者に求める気分にはなれなかったから。性欲だったんだろう、とは思う。

 それでもいつもよりはゆっくりと眠ることができた。

 王女様(武)の温もりは多少だけれど元の身体で眠ったときのことを思い出させてくれた。


 俺は……まだこの世界にいる。



 六百八十四日目

 ようやっと通常の政務に戻る。昨夜のアレはずいぶんと色町に行ってなかったからよい気分転換になったのかもしれん。娼館はサラ子さんが行かせてくれんし。

 とりあえず気分がのってるのでがりがりと溜まった政務を進めて行く。

 召喚も気分乗りすぎてよぉーし俺やっちゃうぜーって連続集団召喚であっという間に終わった。

 やっぱストレスが溜まってたのかもしれないので俺も娼館に通えるようにすべきかもと凝った肩をほぐしながら城内の風呂に行こうとしたら部屋の前で王女様(武)がもじもじと突っ立ってた。はて?


 風呂に行きました。ごにょごにょ。



 六百八十五日目

 サラ子さんがなんか微妙です。壁があるのかないのか。仕事はいつもどおりなんだが、会話が弾まない。

 疑問に思いつつ仕事をこなしてると王女様(武)が(政務で)相談があると執務室に来る。

 びきって異音がして、バシって感じでなんか、緊張感みたいなものができた。

 あと急に俺の胃が痛み出した。わけわかんねぇ。なにこれって思ったけどわざわざ医者を呼ばれるのもあれなのでさっさと王女様(武)の相談とやらを終わらせようと思う。

 なんか変なもんでも食ったっけかなぁ?



 六百八十六日目

 サラ子さんがわけわかめ……。

 機嫌が悪いわけでもなく。俺が何かしたわけでもなく(してもしなくてもサラ子さんの機嫌と関連することはわからんのだが)。とにかくなんかよくわからないけど壁っぽいものができてる。正直同じ部屋で仕事したくない。

 疲れてんのって思って、(激務に耐えられるようになった)角少女もいるし、三日ぐらいなら休暇をあげられるので、休むかーって聞いたらすっげー悲しそうな目で俺のこと見んの。え、なに? なんか悪いことだった? 休暇ってうれしいもんじゃないのって思ったけど口に出したらマズいと本能的に察知できたので黙っておくことに。

 仕事しよっかって、誤魔化した。

 どうでもいいけど俺に休暇はないのだろうか?


 今日も王女様(武)が部屋の前に突っ立ってた。

 とりあえず部屋に連れ込んでナニしました。



 六百八十七日目

 精霊さんと人間が結婚したんだって。大神官(巨乳)様がすげぇ喜んでた。人と精霊の和が云々。

 正直、サラ子さんの機嫌の解明に役に立ちそうもない糞情報だったのでどうでもよかったけど、王様としてなんかやってくれっていうんで、その両人の結婚式を祝って真昼間に演説することに。

 ナニが悲しゅうて他人の結婚を祝わないといけないんだって思ったけど言ったら即座に大神官(巨乳)に折檻されそうだったので自重した。

 そっかぁ、結婚ねぇ。未だ独身でいたい俺にはどうでもいいことです。



 六百八十八日目

 王女様(武)がストロベリーな会話をお望みだったので適当に話を合わせておく。

 頭の中が王女様(武):サラ子さんで7:3ぐらいだった。

 正直、勢いでやってしまったとか。そうでもないような。とにもかくにもサラ子さんを性欲の対象にしたいわけでもないので頭の中からぱっと消してしまって王女様(武)に思考のリソースを割くことに。

 そしたら休暇ってわけでもないけど、俺の政務をちょっと手伝ってくれるってさ。召喚もちゃっちゃとやってしまえってんで性欲を力の源にちゃっちゃと召喚してしまう。

 未だに雇用説明は俺の仕事っぽいし。契約ってことでさっさと説明して、了解をとったら終了。


 王女様(武)の運転で温泉街に行きました。

 無防備? いや、光学迷彩ゴーレムの小隊が俺のこと警備してるから身の安全だけは大丈夫なんだと。

 しっぽりしてきました。



 六百八十九日目

 天馬王国が滅びました。

 いや、前から劣勢って情報はちょこちょこ来てたから疑問はないよ。あと隣国も内乱収めたって。元々の王様残して残りが共食いしあってたんだと。

 うち? 機動戦艦? 浮遊戦艦? みたいなアニメっぽいのに。新型で強力な鋭角的な人型兵器がやっと定数できたから、戦略だか戦術が画期的に変わったとか言われた。

 エンシェントドラゴン(古くて強い竜。一頭で厨様一人分の強さらしい)が千頭攻めてこようとも国民には戦争が起きてることすら知らせません。と、ホウ統が豪語してたんで拍手してすごいねぇって言っといた。俺的にはどうすれば穏便に王様の座から降りて、召喚する必要がなくなってサラ子さんの機嫌がなおって、ゆっくり日向ぼっこしながら過ごせるようになるのかのほうが重要だと思うんだ。



 六百九十日目

 あー、休憩時間に王女様(武)の膝枕でゆっくりしてたらサラ子さんが仕事しろってなんか、無表情で言ってきた。感情なくすほど忙しい案件がきたんかなぁって思ったけど、いつも通りだった。

 ううむ。眠ってしまいそうだったのを見破られてたのだろうか。

 あ、仕事終わった後、久しぶりに剣を振ってみた。笑った。てんで鈍ってた。いまなら、ぐ、ぐりなんちゃらにも殺されるね。ほら、俺が一年以上前に殺した幻獣。



 六百九十一日目

 サラ子さんにいい加減に機嫌を直してくれって言ってみる。理由もわからずに言うのは薮蛇になると本能が警告していたが、流石に理性の限界に耐えられず言ってみた。

 目障りなら王女様(武)を傍に置いたらどうだって凄い冷たい声で言われて涙が零れた。

 サラ子さんの前でぽろぽろ泣いてしまった。恥ずかしいのと悲しいのでわけわかんなくなった。


 どうやらサラ子さんに嫌われてしまったみたいです。


 なんでだろーって思ったけど今までが今までなのでとうとう愛想つかされたんだと思う。

 ちょっと、絶望、かなぁ……。



 六百九十二日目

 よくわかんないけど起きたら王女様(武)が裸で傍にいた。

 俺は、性欲の人だったのか。寂しいなら、辛いなら誰でもいいんか、ってちょっと鬱になった。でもそんなこともないでもないような。王女様(武)のことは信頼とかしてるような。でもなぁ。結局成り行きというか、暴走だったし、と思ったけど昨日のこと思い出してぽろぽろ涙が出そうになった。

 うぐぐ。男はお母ちゃんの前以外で、泣いたら、泣いたらいかんのです。いかんのですって枕に顔うずめてうぐぐと唸ってたら王女様(武)が胸貸してくれた。柔かったのと和んでしまったのもあってすごい勢いで泣いた。

 何が原因でサラ子さんに嫌われたのかがわからんかった。それが一気に出てしまったのだ。

 うわんうわん泣きながら。でも、サラ子さんに嫌われたらそもそもこの国とかどうでもいいって気づく。だってサラ子さんにお給料払いたいからっていろいろ努力しはじめたんだから。サラ子さんがいなくなるんなら、この国いらないんじゃないかって。

 最初に。

 もう、仕事しないでいいんだって思った。もう、召喚とかしなくていいんだって思った。

 で、今まで大事だと思ってたこととか、そういうのがどうでもよくなってきたかもしれんって思った。でも、嫌いな俺の傍でも仕事してたサラ子さんのこと思い出したら仕事を放り出すのはいかんと思った。

 だって、嫌いでも仕事しろって言ったってことは、サラ子さんは、俺に仕事をしてほしいってことだ。

 サラ子さんは嫌いでもなんでもいいから、俺に仕事をしてほしかったんだ。愛想がつきた俺でも仕事ができるって認めてくれてたんだ。

 なら、俺がサラ子さんにしてあげられることは、それしかないのかもしれない。


 王女様(武)は、俺が泣いてる理由とか、そういうのを聞かずに。ただ泣かせてくれてた。俺は、感謝した。


 鬼のように仕事をするぞって気合いれて王女様(武)の部屋から出た。そんで、そんで、凄く悲しくて、寂しくて、辛くて、きつくて、厳しいけど、なんか凄い無表情で、怖い顔したサラ子さんに言った。言うしか、なかった。俺なりに考えて、サラ子さんのこと考えたら一番だと思ったんだ。

 もう、いいよって。(この国のこととか、精霊さんのこととか、そういうのは全部、ちゃんとよく考えて、誰もが幸せに暮らせる国を作るから)サラ子さんは、もう(精霊界に帰って、のんびりして)いいよって。

 元々、俺のわがままからこんな面倒なことさせてたんだし。魔力って岩本さんたちが言うには現界する以外にも使い道があるらしいしさ。サラ子さんのお給料は結構溜まってるらしいから、餞別ぐらいにはなると思う。他の人のこと考えるとそんなに大量には上げられないけど、退職金代わりに俺の持ってる魔石とか魔力とか、それも渡そうと思う。

 でも、正直、あれだ。サラ子さんがいなくなったら心の平静とか保てたり。こんなわけわからん世界で生きてく自信ないし。仕事一杯やってたら放り投げたくなって、夜泣きするようになるかもしれないけど。いいんだ。

 だって、やっぱり気づいた。俺がこんな感情もっちゃってるんだから。やっぱり精霊界ってところから俺の勝手な召喚で、ここに連れてこられたサラ子さんだって一緒なんだって。そもそも、精霊のみんなとか、岩本さんとかもお願いして働いてもらってるだけなんだって。

 なんか、岩本さんが家族を連れてきた意味がわかってきた。精霊の皆が精霊石を毎日出してくる意味がわかった。

 寂しいから、一人じゃ生きて行けないからみんな俺に家族を召喚してくれっていってきたんだってことを。

 ちょっとだけこれからの仕事をする気力が湧いてきた。よし、ってちょっと溢れてた涙をごしごし手の裾で擦ってたら。

 サラ子さんが、

 

 

 怖い顔で俺を見てた。



 ? ?? ???



 赤?



 ??

 

 

 炎?


 俺の腕?

 

 そんなもん食べて、どうすんのさ。サラ子さん。お腹壊すよ……。


 あ、空気が揺らいだ。たぶん、見えないけど、光学迷彩ゴーレムだ。ごめんなぁ研究所の人。


 サラ子さんに手を出させないように、停止呪文をもごもごと唱えた。

 

 これで、大丈夫。あはは、と安心したら笑顔が自然とこぼれる。


 でも、そうだね。サラ子さんになら、殺されても、悪くないか。


 うん。散々自分のためにひどいことやってきたけど。サラ子さんには酷いことできんもんなぁ。


 ・


 ・


 ・


 サラ子さんかな……。炎が、あたたかだ。


 意識がゆっくりと消えていく。消え方が、この世界に来たときとはちょっと違って、先が見えなくて怖かったけど。サラ子さんの炎が、暖かで、だから、ほんのちょっとだけ、怖くはなかった。

 

 何から何まで、ほんとありがとう。


 わけわかんない世界にきちゃったけど、この炎だけは、現実っぽいよね。


 あつッ、……………

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・了





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