エピローグ(true)
首に剣を当てて、俺の目の前に勢ぞろいする人たち。王女様(武)とか、岩本さんとか、双子ちゃんとか……。あー、風子さんまでいる。
あー、ってぽりぽり頭を掻きつつ。俺は自分の気持ちを確かめた。俺は、サラ子さんを愛してる。俺はサラ子さんが好きだ。そんで、この国に生きる人たちも好きなのだ。
うん。そういやサラ子さんの気持ちも聞いてなかった。つーか、俺嫌われてるんだよね?
王女様(智)に目線を移す。こんなこともあろうかと、ではなく、予定変更である。アイコンタクトで全てを察してくれたあの人は、なんか俺にはもったいないぐらいよくできた女だ。
俺の目の前で首をそろえている人たち。サラ子さんは勇者装備をしたまま、俯いている。その目の前には魔王の首。
ぽりぽりと頭を掻きながら、サラ子さんの傍に寄って。腰の剣を引き抜いた。勇者の剣。最強の聖剣であるそれを。俺は魔王の脳天にブッ差した。
俺の行動を皆が唖然と見ていた。サラ子さんはもう剣なんぞ握らなくていいのである。
そんで、サラ子さんが俺を嫌いなら、俺を好きにさせればいいのだ!!
俺はサラ子さんの腰を横抱きにし。唖然としてる皆の前から駆け出した。全身に魔力を巡らせて、駆け出した。
だははははは。ぜーんぶ知ったことか!! つーか俺がいない程度で滅ぶんならこんな国滅んでしまえ!! だはははは。
駆け出す。
目の前には扉。
蹴り破った先には、精霊車。
運転席にいる王女様(智)にアイコンタクトし。
俺は、サラ子さんを抱いたまま、その天井に着地した。
唖然として、城門で俺たちを見ている人の塊に見送りご苦労と叫びながら、俺は俺の腕の中にいるサラ子さんに、大声で好きだーーーーーーーーッッッ!!!!!! と叫んでやった。
きょとんとしているサラ子さんに。俺を好きにさせてやるから、ついてこいって叫んで。そんで、俺は空に浮かんでにやにや笑ってる風男君を発見した。
だはは、いや、脱出がすげぇ楽勝だなとか思ったらこいつの仕業でやんの。
グッドだー、って感じで親指立てたら、春画がぱさって落ちて来て、風男君は王国に戻っていった。
久しぶりに不機嫌そうなサラ子さんの顔が隣にあって、そんなサラ子さんも好きだッッッーーーーー!!って叫んだ。
END 終了 おしまい
これで俺のこの世界での奇妙な話はここで終わりである。
新大陸に渡ったり、変な遺跡を荒らしたり、どっかの国で冒険者をやってたりする精霊と賢姫を連れた元国王がいるかもしれないが。そんな人物のことは俺は知りません。
だって、俺は……。
「信様。ほら、桜が……」
穏やかな日差しが小さな和風の屋敷に降り注ぐ。
「主様。お茶が入りました」
縁側で、美人の奥さんの膝枕で寝こけ。
美人の妾が持ってきたお茶を飲む。
俺は殺伐としつつもわくわくするような日常ではなく。
小さな、穏やかな、そんな世界がすきなのだ。
……………………………これにて、本当に俺のお話はおしまい。