第八章
零は装備課の事務所に入った。
「あ、東雲隊長」
近くにいた女性職員が対応に動く。
「もう、大丈夫なんですか」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう」
「加藤班長から連絡がありました。ポケットの中の物は、この袋に全部入れいます。確認していただけますか」
零は袋の中を探す。
…あった…
「ありがとう。全部ありました」
「では、受け取りのサインをこちらに」
零は装備課を出ると、トイレに入った。
袋から手に取ったのは、白い普通のハンカチ。
戦闘中、グローブで触ったため、少し泥が付いているが、これくらいなら綺麗に落ちる。
指先で優しく撫でてみる。
それだけで、男の温もりが少しだけ感じられる気がした。
ハンカチを鞄に入れ、身分証明書を首に下げると腕時計を確認する。
午後3時20分
まだ、病院の面会時間に間に合う。
零は特異隊を後にした。
病院は、人で溢れていた。
妖魔が現れて以降、妖しげな花や、奇怪な生物が出没し始め、それに伴い、今迄にない原因不明な病気が発症し始めた。
感染者は少ないが、特異隊も各種医療機関や、大学と協力し、治療を模索していた。
零は、ノックをする。
応答はない。
ゆっくりとドアを開ける。
宮岡は、点滴が何本も繋がれ、バイタルを測るセンサーも付けられている。
さながら集中治療室のようだった。
零は、買ってきた花を活けようとしたが、花器が見当たらないため、床頭台の上に静かに置いた。
宮岡の顔は、少しやつれて見えた。
零は、自分の無力さを噛み締めていた。
あの時、自分が異能を使えば…
無茶な単独行動をしなければ…
全ては、私の責任だ…
零は、しばらく宮岡の寝顔を見つめていた。
すまない…
胸の内で、宮岡に謝罪すると、零は静かに病室を後にした。




