第二章
自衛隊も、特異隊も戦力は減少しつつあった。
増える負傷者、異能者の疲弊。
それでも、戦っていた。
「援護部隊はまだか」
「こちらに向かってます。後…10分程です」
自衛隊のやり取りに、零は唇を噛む。
持つのか…10分も…
「東雲隊長、戦力残60%」
インカムのイヤホンに、特異隊指揮所からの通信が入る。
「特異隊の援軍は」
「既に2個小隊がヘリで向かってます。到着まで15分。民間人の安全を最優先せよ。との命令です」
「了解した」
出来るか…
「特異隊全員に告ぐ。援軍到着まで15分。民間人の安全を最優先に行動。以上」
インカムに叫び、対妖魔用ライフルを手に取る。
その時。
「あんた等には、無理だ。下がってろ」
後から声がした。
零が振り返えると、一人の男が立っていた。
無理だと?
ここにいる全員が、それをわかって戦っている。
誰だ、お前は?
様々な感情が同時に湧き上がり、言葉に詰まる。
「間違っても、俺を撃つなよ」
そう言うと、妖魔の群れの中に歩き出す。
「バカ!何をしている!戻れ!」
零は止めようとするが、異能を3回使っているため、身体が重く、いうことを聞かない。
クソ!
零は、インカムに叫ぶ。
「特異隊、並びに自衛隊全員に告ぐ。民間人が現場に入った。間違って撃たないように。繰り返す…」
男は、黒いジャケットに手を入れたまま、歩いている。
妖魔が2体、飛びかかってくる。
空間切断!
零が、そう思う前に、男の身体がブレたように見え、何かが光った。
何…?
男に飛びかかってきた妖魔2体が破裂した。
紫色の血(体液?)が、男の身体に降り注ぐ。
……何をしたの?
男は、瓦礫の上を軽く飛び跳ねながら、負傷者の元に行く。
遮蔽物の影に負傷者を移動させると。
「ここにいろ。運が良ければ助かる」
そう言い残し、妖魔の群れに走り出す。
「なんだ、あの速さは…。瓦礫の上を…」
自衛隊の誰かが、呟く。
妖魔が横殴りで、男に爪を振る。
一撃で車を破壊し、建物の壁を抉る爪は空を切った。
男は爪の1メートル上にいた。
そのまま、落下しながら回し蹴りを出す。
男の脚が白く光り、妖魔の側頭部にめり込む。
妖魔の頭部が破裂した。
着地すると、迫りくる妖魔に自ら、突っ込む。
振り降ろされる爪を躱し、左のパンチを妖魔の腹に叩き込む。
右手を貫手の形にし、別の妖魔の腹に突き刺す。
引き抜いた手には、妖魔の内臓らしき丸い、スポンジみたいなものが握られており、不敵な笑いを浮かべると、その臓器を握り潰した。
そこから先は、群がる妖魔が連続して弾ける場面が続いた。
「ま…だいだい片付いたかな…」
男は、そう呟くと歩き始めた。
「待って!待ってちょうだい!」
零が叫びながら、近寄ろうとするが、異能を使った後の、瓦礫の上では上手く進めなかった。
男は零の叫びに歩くのを止め、振り返らずに言う。
「お前…星に守られてるな…」
「…星に…」
零が、どういう意味か聞こうとする前に、男は歩き出す。
他の特異隊の隊員が、男に走り寄ろうとするが、男は、瓦礫の上を飛び跳ねるようにして消えていった。
後には、破裂した妖魔の紫色の液体が、そこかしこに飛び散っていた。
「何もんだ…あいつ…」
異能班の宮岡が呟く。
零は、黙って男の消えた方を見ていた。
あの男…あの強さ…
その時、頭上から、自衛隊のヘリの音が聞こえてきた。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたものです。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。
また、コメントの代わりに「◯」、「△」、「✕」でも構いませんので、評価していただければ幸いです。




