プロローグ
20XX年。
日本を巨大地震が襲った。
その影響か、魔界との境界が裂け、魔界の生物が日本に現れるようになった。
人はその生物を『妖魔』と呼んだ。
妖魔は人を襲い、食らった。
妖魔は、食物連鎖の頂点に君臨したのだ。
人間は、妖魔に襲われながらも、対抗手段を探り、抗い、生き延びるしかなかった…。
グラスの中の氷が音をたてて揺れる。
一人の女性がベランダで星を見ながらバーボンを飲んでいた。
彼女は自分…いや、人間の無力感を痛いほど感じていた。
もっと…もっと強い力が欲しい。
大切な人を守りきる力が。
妖魔を相手に対等に戦える力が。
彼女の目には、涙が浮かんでいた。
妖魔が現れ出して、既に4年が経っていた。
そして、この4年の間にあまりにも多くの人が亡くなっていった。
仲間、民間人、そして家族。
大震災での死傷者も甚大な数にのぼったが、妖魔に襲われて亡くなった人の数は、大震災での死傷者の数を簡単に上回った。
国際社会は日本に対し、対妖魔用の支援部隊を派遣してくれたが、あまりにも被害が増える現実に、次第に支援を止める国が増え、武器弾薬の支援に変わっていった。
日本は、自分たちでどうにかするしかなくなった。
警察庁は自衛隊と連携し、さらに全国の神社本庁に協力を要請した。
科学と神話の折衷。
理屈と祈りの混合。
そして。
ほんのわずかに存在する、異質な者たち。
理屈を裏切る力を持つ者たち。
彼らは集められた。
そうして生まれたのが――
特異事件捜査部隊。
通称、特異隊。
異能を持つ者たちを集め、育成し、対妖魔戦の前線に立たせる。
だが問題は単純だった。
数が足りない。
育てる時間が足りない。
そして、敵は強い。
彼女は、特異隊のメンバーで、A級異能者だが、妖魔の前では力の差を嫌と言うほど味わってきた。
4年前、小学生になる姪にランドセルのプレゼントをした。
姪は喜んで彼女に抱きついて、誇らしげにランドセルを背負ってみせた。
その姿が、ランドセルが歩いてるみたいで、大笑いをして涙が出てきた。
あの時の写真は、今でも彼女の宝物だ。
そんな姪が目の前で妖魔に襲われた。
「嫌あぁーーー!!」
彼女の力が、初めて覚醒した瞬間だ。
姪を襲った妖魔は倒した。
だが、姪は帰らなかった。
だから、特異隊に入った。
これ以上、大切な人を失わないために。
私みたいな人を増やさないために。
しかし、現実は違う。
妖魔の力は、強い。
私で無理なら…
お願い…誰か、絶対的に強い人を…
妖魔を倒せる力を持つ人を…。
夜空を見上げ、涙を浮かべる彼女の耳に、姪が選んでくれた星型のイヤリングが揺れていた。
その夜、星が一つ、流れ落ちた。
お読みいただき、ありがとうございます。
この話は、何十年も前から、温めていたもねで、菊池秀行氏の影響をかなり強く受けています。
時間潰しに読んでいただき、
「面白い」
と、思っていただければ、嬉しいのですが。




