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第7話 通学路には危険がいっぱい!

「ケイトちゃん、おはよー!」

 当たり前の様に始まるルリちゃんとの日常。昨日、彼女が異星人に襲われて死にそうになったことを思い出して涙が出そうになっちゃったけど、奥歯を噛み締めて平静を装う。

「おはよ、ルリちゃん」

 学校までの道のりをたわいもない会話で埋めていく。

 もしもあの時、私のパンチでネズミ男が倒せなかったら? そんな考えがふと頭に浮かぶ。雑談をしている自分の表情がぎこちない。彼女を、みんなを、この世界を守りたいからこそ、余計不安になる。

 幼い頃憧れていた魔法少女たちは、いつもこんな葛藤を抱えていたのだろうか?

 でも、そんな私の心配事なんかお構いなしと言わんばかりにトラブルはやってくるみたい。

 どうやら魔法少女には平和な日常は訪れないみたいね。


「ざっけんじゃねーぞ! ごらぁー!」

 平和な通学路に(おもむ)ろに甲高い怒鳴り声が響き、ルリちゃんと私はびっくりして肩をこわばらせた。

 数メートル先、声のした方を見ると路上に二台のスクーターが停められ、その脇で数人の女子中学生が揉み合いをしている。輪の中心で胸倉を掴まれている生徒の制服には見覚えがあった。

「ルリちゃん! あれって学園(うち)の中等部のコだよね」

「大変! ……でも、どどどどうしよう??」

「ルリちゃんは警察か誰か大人の人を呼んできてっ! 私時間稼ぎしてるからっ」

「ちょ、時間稼ぎってー」

 ルリちゃんの心配する声を尻目に私の足は既に駆け出していた。

「貴女達っ! 乱暴はやめなさーい!」

「なんだおめー! いい子ぶって邪魔すんじゃねー」

 手前に立っていた、私と同じくらいの背丈だけど体重は二倍くらいありそうな女の子がその太い腕を振りかざして私に殴り掛かってくる。

(痛いのヤダっ!)

 またいつもの様に揉め事に首を突っ込んだ挙げ句に怪我をして……って、あれ?

 閉じかけた瞼の隙間からうっすらと目を凝らすと、向かってくる拳が見えた(・・・)

 こんな時、今までの私は只為す術もなく殴られていた。でも今日の私はどこか違う!

 昨日、一昨日と戦った黒づくめの異星人達に比べると、そのパンチはとってものろく感じた。

(避けられる……)

 軽く上半身を捻った私の鼻先を空振りした拳が通り過ぎる。バランスを崩したヤンキー女の足元がもつれる。その足元に私のつま先をちょんと引っかけると、巨体が樽のようにごろごろと転がっていった。

 中等部の子を掴んだまま薄ら笑いを浮かべていた茶髪がその様子を見て顔を強張らす。

「この野郎ッ」

 茶髪の子が女の子を掴んでいた手を乱暴に離し、そのまま女の子を突き飛ばす。

 標的を私に変え、こちらに向かって来た正にその瞬間、茶髪の子の身体がくの字に折れ曲がって車道側に飛んでいった。

 そして飛んで行った彼女が元々いた空間には、ロングスカートのポケットに両手を突っ込んだままの姿勢で見事な水平蹴りを放った女子高生が立っていた。


「おい、玄人姿勢(プロポーズ)の下っ端。人生の先輩、しかも女相手に〝野郎〟は()ーだろ? ……ええと、せめて〝女郎(めろう)〟とか……か?」

 彼女が着ているブラウスは丈が短くて、逆に履いているスカートはブラウスと反比例するように長く改造されている。けれど、その制服は正に私やルリちゃんと同じ学園、しかも高等部のもの。


「矢島(ねえ)さんっ!」突き飛ばされて尻餅をついていた中等部の子が瞳を輝かせて叫ぶ。

「えっ、矢島って。もしかして同じクラスの矢島久美さん?」結局、その場に立ち尽くしたまま動けなくなっていたルリちゃんが声をあげた。


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