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第2話 えぇっ! 私が魔法少女っ?

 謎の男達に襲われていた私の前に突如現れた、こちらもまた謎の金属キューブ型ロボット。

 その怪しげなロボットが私に向かって「この世界を救え」って。

 しかも「君が望むなら」って言ったのに、私の答えを聞くまでもなく秒で私を変身させた。なんて身勝手な……。


「ユーマッ!」

 私の首根っこの辺りロボットに付けられた何か(・・)から、謎の掛け声と眩いばかりの光が放たれる。その光は私の変身が終わるまでの間、ずっと私の身体を包み込んでいた。おそらく時間にしてほんの数秒、ううん実際はもっと短かったかもしれない。

 その光が完全に消えると、宙に浮いていた私の身体は静かに音もなく地面に着地した。

 あり得ないくらいに身体が軽い。もちろん行ったことなんて無いけど、きっと月に居るとこんな感じなのかも。もしや私、月の激カワJK戦士的な?

 変身が終わった両腕を見ると、まるでエナメルのようにテカテカと光る黒いロンググローブが私の二の腕までを覆いつくしている。げげっ! 慌てて身体の方も確認すると太腿が露わになった面積の少ないホルターネックのハイレグ水着みたいなのしか着ていないし、両脚もハイヒールのニーハイブーツで、これじゃまるでなんかそう言う()()イナーな仕事の女王様みたい。

「ななな、ナニコレーッ!」内股気味に脚を閉じて両腕で股間を覆い隠す。

「ドギギーッ!」

 わわわっ! 私の華麗な変身に驚いて、暫し固まっていた真っ黒男の一人が我に返ったように私に殴りかかってくる。あぁ、股間とお顔とどっち守ればいいの?? ってお顔ーっ!

「きゃあっ! ……って、あれ? イタクナーイッ! これなら万が一横滑りしても安心!」

 慌てて庇った両腕に男の拳が当たったけど、さっきまでと全然違って全く痛みを感じない。

「もうさっきまでの君じゃない。そんな雑魚(奴ら)なら一撃で倒せる筈だよ」

「もしかしてっ! 私、女の子なら誰でも一度は憧れる、魔法少女になっちゃった?!」

「魔法? 君たちの世界でいう魔法という概念には程遠いけど、今の君はいつもの数倍の力が出せる筈だ」

「ちから……って?」

「ドギー!」男達は私の戸惑いなんかお構いなしに今度は二人がかりで襲ってきた。

「きゃーっ!」向かってくる敵を両腕で力一杯突き飛ばすと、男達はそのまま一直線に吹っ飛んで行き後ろの壁に衝突。その体は乾燥した泥団子を投げつけたみたいに砂煙になって霧散しちゃった。


「ポイントが付与されました、ポイントが付与されました」

 男達の体が消滅すると同時に耳元で無機質な音声が流れる。

 えっ? びっくりして耳を押さえると、その手に違和感。ぺたぺたと触ってみるとその違和感は耳の周りだけじゃなく頭全体と顔面もだった。私の頭の高さでふよふよと宙に浮いているロボットの方を向くと、鏡のようにつるっとしたその前面(そもそもこのロボットどこが前なの?)にうっすらと多分私であろう姿が写っている。襲ってきた男達と同じように銀色の二つの眼がついた黒いお面にヘルメットを被ったような頭。男達と違うのは、目の周りがオペラに出てくる女性の様に目尻が吊り上がったベネチアンマスクのような形になっているところ。

 思わずほっぺを押さえて叫ぶ。

「ぎゃー、今日ナニコレって何回言わせるのよーっ! 魔法少女って可愛いお顔が見えないと意味ないんじゃないのーっ?」

「ドギー」

「えーいっ!」こちらの都合などお構いなしに襲って来る残りの男達に反射的にキックを見舞う。

 今度はその場で体が砕けて霧散する。

「ポイントが付与されました。ポイントが付与されました」またしても耳元で無機質な音声が響く。

「しかも物理(攻撃)って……。まぁでも、まだまだ聞きたい事は山ほどあるけどっ、とりあえずあと一人っ!」

 言うや否や最後の一人となった黒づくめ男の顔面に思いっきりパンチを喰らわす。一体何のポイントなんだかわからないまま、またしても耳元で通知が流れる。


 そうして最後の男を倒すと辺りに静けさが訪れた。

 空は少しずつ元通りの薄い蒼色を取り戻していき、空気も澄んで……はないけど排気ガスに自動車の騒音、遠くに(そび)え立つはビル群。つかの間の静寂は日常に溢れた喧噪に変わっていく。

 元通りの平和な世界。

「あっ、お母さんと赤ちゃんっ!」

(大丈夫、前を見てご覧)え、こいつ直接脳内に⁉︎

 キューブ型ロボットの声がするけど、その姿は忽然と消えていた。じ、じゃじゃなくって。前方を見ると確かに何事もなかったかの様にベビーカーを押すお母さんの姿が。

「ほっ」と胸を撫で下ろした。


 あ、気持ちの上でね。本当に胸を撫で下ろしたりはしてないよ。

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