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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
6節 偽りか、裏切りか
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第091話 よろしくね

 星鎖祭りに一緒に来ていた由衣ゆい日和ひよりと逸れた。


 歩き回りたくないのでベンチに座っていると、いきなり鈴保すずほが現れた。

 しかし、鈴保も別の友人の迎えが来て去っていた。


 暇になった俺はスマホを確認する。


 しかし、由衣と日和からメッセージは来てなかった。


 本当にどこに行ったんだ……。


 そう思いながら俺は、鈴保が来たため途中で食べるのをやめたベビーカステラの袋に手を入れる。


 手を入れてから気が付いたが、どうやら最後の1個だったらしい。

 とりあえず口に入れる。


 ……これからどうするか。


 そう思ったとき。また俺の名を呼ぶ声がした。

 今度は誰だが呼んだかはすぐに分かった。


 その声の主は「やっと見つけた……」と言いながら、ベンチに座っている俺の前までやって来た。


「……メッセージか電話でもすれば良かっただろ」

「これで出来ると思う?」


 合流してきた日和は、両手に屋台の食べ物を持っていた。

 片手には綿あめ、片手にはプラスチックのフードパック。


「……無理だな。悪い」

「別にいいけど。あ、これあげる」


 そう言って渡されたのはフードパック。中にはたこ焼きが3つだけ入っている。

 そして日和は俺に手渡した後、隣に座った。


「……何で3つだけのを」

「10個入り買ったから、それ真聡の分。由衣から預かってきた」


 何でそういうとこだけキッチリしてるんだ……。


 そう返そうと思ったが、肝心の由衣がいないことに今気づいた。

 通りで静かなはずだし、日和が両手いっぱいだったわけだ。


「由衣はどうした」

「逸れた。

 他の友達に会って話し始めたから、後ろを歩いてたんだけど……見失った」


 そう言い切ると同時に、日和は持っていたわたあめを食べ始めた。

 由衣らしいが……日和が可哀想だ。


 気が付くと、俺は「悪い」と呟いていた。


「何が?」

「誘ったのに、蚊帳の外になることが多くてつまらないだろ」

「それは……でも、元の由衣に戻ったから安心したって気持ちもある」


 《《元の由衣に戻った》》?


 由衣は4月に会ったときは、小学生の頃と全然変わっていなかった。


 違和感しかないその言葉に俺は「それ……どういう意味だ?」と聞き返す。


 すると日和は「あっ………」と呟きながら、そっぽを向いた。


「聞かなかったことにして」


 その言葉を最後に日和はそっぽを向いたまま、わたあめを食べ始めた。


 俺が呼びかけても返事をせず食べている。


 だが、あそこまで言われたら気になるのが人間だ。

 俺は食べ終わった頃を見計らい、もう1度「どういう意味だ」と呼びかける。


「あそこまで言っておいて『聞かなかったこと』はないだろ」


 すると納得してくれたのか、日和は「………わかった」と呟いた。


「でも、由衣には絶対『私が話した』って言わないでね」

「わかってる」


 当然のことだ。


 そして日和はさっきの言葉の意味を語り始めた。


「由衣……真聡がいなくなってから凄く元気なかったの。

 何というか…ずっとうわの空って感じ。心配して聞いてみても『なんにもない、大丈夫』って言うし。

 まぁ、3年生になる頃にはだいぶ戻ってたけど」


 その言葉を聞き、何とも言えないが俺の中に湧いてきた。


 確かに無言でこの街を去った俺も悪い。だけどそれは……。


 そう思ってると、日和が「あ、いや」と口を開いた。


「真聡責めてるわけじゃない。

 ただ、ずっと一緒にいた友達として元に戻って良かったと思っただけ」

「……そうか」


 その返事で、会話が終了した。


 俺はとりあえず、受け取ったプラスチックケースを開けてたこ焼きを口に運ぶ。


 残念ながら、既に冷め始めている。

 ……食べるなら、できたての方が良いな。


 そう思っていると、また日和が口を開いた。


「……由衣のこと、よろしくね」


 呟くように言ったその言葉。


 その言い方はまるで、自分がどこか遠いところに行くようだった。


 違和感を感じた俺は、俺は思ったことをそのまま返す。


「……お前も友達だろ。俺と同じ、由衣の幼馴染だろ」

「…………そう……だね」


 今の言葉の真意は、ただ俺の方が由衣と一緒に行動する時間が長いからなのか。

 それとも、本当にどこか遠くに行くのか。



 俺は何故か、その理由が聞けなかった。



 だが、今聞いた方が良いということは分かってる。



 だけど、言葉が出ない。



 そのとき、「やっと見つけた!!!」という元気な声が飛んできた。


 声がした方向を見ると、由衣がこちらに向かって来ていた。

 しかも小走りで。


 そして俺達の目の前に着くとすぐに「ひーちゃんごめんよぉ〜!」と謝罪の言葉を口にした。


「別に。気にしてない。」

「これ……2人の分も買ってきたから……許して?」


 そう言って渡してきたのはチョコバナナ。


 ……まぁ、このぐらいならまだ食べられるだろう。


 とりあえず俺達は受け取る。


 そこに、「よくそれ持ったまま走れるよな……」、「というか普通浴衣で走る?」という2つの声が飛んできた。


 次に俺達の前に現れたのは、店番が終わったであろう志郎しろうと、来ないと言っていた智陽ちはるだった。

 ちなみに2人は普通の私服だ。


 ……話してたことと違う。俺はすぐに疑問を投げる。


「智陽、来ないって言ってただろ」

「そのつもりだったんだけど。焼きそば食べたいなって思って」


 その言葉で智陽の手元を見ると、確かに焼きそばを持っていた。

 そしてそのまま隣のベンチに座って、食べ始めた。


 するとそんな智陽を志郎が追いかけていき、「とか言って寂しかったんじゃねぇのか〜?」と聞きながら、隣に座った。


 しかし、智陽に「そんなことない」と一蹴されている。


「ただお祭りの焼きそばが食べたかっただけ。

 ……でも、せっかく誘われたんだから、行ってもいいかなとは思った」

「やっぱ寂しかったんだろ?」


 そう言いながら志郎は智陽の肩に手を置く。

 しかし、今度も「違う。食べてるんだからやめて」と一蹴された。


「というか智陽……なんか……キャラ変わったか?」


 俺は志郎のその呟きに「それは俺も思った」と同調の声を上げる。


「何というか……あんまり喋らないやつだと思ったけど……鈴保みたいだな?」

「それは怒られるぞ」

「いや、悪い意味じゃないんだって!わかりやすいかなと思ってさ……」


 そこに智陽がため息ついた。

 いや、この会話はお前の性格が変わったのが原因だが。


「変わったんじゃなくて、元がこうなの」

「今までが作ってたってことか?」

「そう。もう作る必要もないと思ったの」


 志郎がわかってるのかわかってないのか、微妙な返事をしている。


 だがまぁ、良く喋るようにはなったよな。

 少し辛辣だが。


 そう考えていると、今度は「まだここにいた」という声が聞こてきた。

 その声が聞こえてきた方に視線を向けると、数分前にどこかへ去っていった鈴保が好井よしい小坂こさかと共に戻ってきていた。


「あ!すずちゃん!梨奈りなちゃんと颯馬そうま君も!」


 そう言って、いつの間にか日和の隣に座っていた由衣が立ち上がって、3人と話始めた。


 日和の「行っちゃった……」という呟きが聞こえる。

 ……だが。


「……いつものだろ」

「まぁね……。

 でも、真聡も昔と変わらずすぐ友達できるじゃん」

「そんなことはない」

「じゃあまぁ……それでいいよ」


 左を見ると智陽と志郎が何か話していて、右斜め前では由衣が鈴保達と話している。



 確かに、友達は増えた……のかもしれないな。



 何故か俺の周りには、人が集まる。



 今もこうして、《《何故か》》人がいる。



 そんな何故か周りにいる、高校生たちの賑やかな喋り声。

 それもまた、お祭りの喧騒に飲み込まれていった。

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