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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
6節 偽りか、裏切りか
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第084話 条件

「事情はわかった。

 智陽ちはる、もう1度協力者として澱みや堕ち星の情報提供を頼むぞ」

「だから何でそう…………え?」


 俺が自分の考えを言った瞬間、由衣ゆいが噛みついてきた。

 しかし、俺の言葉が予想外だったようで途中で固まった。


 鈴保すずほが「ちゃんと聞いてから反論しなよ」と言ってるので、由衣は鈴保に任せよう。

 そして肝心の智陽は、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。


「……そんなに驚くことか?」

「……怒ったから終わりにされたと思ってた」

真聡まさと……お前、本当に怒ってないのか?」


 智陽と志郎しろうがそう言い返していた。


 その発言から考えると、どうやらこいつらは怒っていると思っていたみたいだ。


 なるほどな……そういうことか。


 誤解されているようなので、俺はあの病室での発言の真意を説明する。


「別に、俺は怒ったから協力を終わりにしたわけじゃない。

 智陽が迷ってるように見えたからだ」

「じゃあ私達、いらない心配をしてた……ってこと?」

「何それ……じゃあここまでする必要……あった?」


 俺の言葉に、由衣と鈴保が少し呆れたような顔でそう言った。


 だが、俺だって考えなしでそう言った訳じゃない。


「……智陽は戦えないだろ。戦えないやつが、無理に怖い思いをする必要はない。

 この先危険なことだってある。それでも関わり続けるかどうかを考えて欲しかっただけだ」

「何だよそれ……全部最初から言ってくれよ……」


 今度は志郎のそんな声が飛んでくる。


 だがこれ以上、この話を続けると調子が完全に狂う気がした。

 俺は話を戻すために「ただし、2つ条件がある」と口にする。


「……やっぱり怒ってない?」


 由衣のその返しに「口を挟むな」と言い返す。

 俺は元より智陽には怒っていないし、これは必要なことだ。


「まず1つ目。お前のお父さんが残した研究資料を俺にも見せて欲しい」

「いいけど……どうして?」

「……あの研究所にあったはずの資料はほとんど失われている。

 だから俺は今、手探りで戦ってる。研究資料に何か役立つことが書いてあるかもしれない」


 その言葉に、智陽は「……わかった」と返事をしてくれた。


 どこか引っかかる返事だとは思ったが、気にせず俺は「2つ目」と次の質問を口にする。


「智陽、前に『星座の力が複数使えたら』……って言ってたよな」

「言ったけど……」

「その件、何とかできないか?」

「凄い無茶振りだな!?」

「というかいつの間にそんな話してたの?」


 由衣と志郎のそんな言葉が飛んでくる。

 だが俺は気にせず、智陽にもう1度「できないか?」と問いかける。


 すると智陽は、しばらくしてから口を開いた。


「……どういう感じを考えてるの?」

「むしろどういう感じになるんだ?」

「え」


 智陽が完全に固まった。


 俺は智陽が何か考えがあるのかと思っていた。

 しかしこの反応から見るに、どうやら智陽は俺の意見が聞きたかったらしい。


 ……もしやお互いノープランだったのか?


 そう思ったとき、志郎が「あれか?」と口を開いた。


「他の力を重ねて全体的に強化するのか、必殺技を撃てるようにするのか。どっちが良いかってことか?」

「そう、それが聞きたいの」


 智陽はそう言った後。隣に座っている志郎の方に視線を向け、「……何でわかったの?」と聞いた。


「プラネタリウムの帰りにヒーロー物の話をしただろ?

 あれ以来時間があれば見るようにしてるんだよ」


 あれ以来見てたのか……マメだな、志郎。


 だがその2択を出してくれるなら答えは決まっている。


「必殺技……だな。一時的でいいから他の星座の力を使いたい。

 それに長時間、2つ以上の星座の力を使うのは厳しだろうからな」

「……何の話かわからないけど、智陽は作れるの?」

「そう、問題はそこ。案は出せるけど作るのは無理だよ?」


 鈴保の言葉の後、智陽がそう口にした。


 それはそうだろう。

 神遺を使用できる装備なんて、並の人間が作れるわけがない。


 だがそこはちゃんと考えてある。


「そこは問題ない。作ってくれる協力者がいる。

 だから智陽は図面……というか案を出してくれたら良い」

「それで良いなら……やってみるけど……できるかな……」


 俺の言葉に対して、返事こそしてくれた。

 しかし、智陽の言葉は自信がなさそうだった。


 ……だが、智陽には俺よりも作れそうな条件が揃ってるんだ。


「AIと研究資料を使えばなんとかならないか?」

「……まぁ、やるだけやってみる。

 もし期待通りにならなくても、文句は言わないでね」

「やってみてくれるだけで助かる」


 とりあえず、こんなところか。


 そう思ったとき、「あ、話終わった?」と由衣がこちらに戻って来た。

 どうやら鈴保にプラネタリウムの話をしていたらしい。


 俺が「あぁ」と肯定の返事を返すと、由衣は「じゃあさ」と口を開いた。


「ちーちゃんの歓迎会を兼ねてお菓子パーティーしない?」


 そう言いながら由衣はテーブルに置かれていた2つ目の袋の中身を出す。


 袋の中からは、次々と様々なお菓子が出てくる。


 ……さては由衣、結果はどうであれお菓子パーティーはするつもりだったな?


 俺は呆れて、最早突っ込む言葉すら口にできない。


 すると、鈴保が「……私のときは歓迎会無かったけど」と呟いた。


「俺のときも無かったから安心してくれ」

「だってそんな時間なかったし……みんなで集まって周りを気にせず話せる場所って……ここしかないでしょ?でも……」

「俺の家をなんだと思ってるんだ」


 俺の言葉に由衣が「ほら!」と言った後、由衣達は笑い出した。

 華山まで笑ってる。


 思わずため息をつく。

 しかし、そのため息を誰も気にしていないらしい。


 既に4人は、楽しそうに袋のお菓子をあれこれ言いながら開け始めている。

 そして由衣は嬉しそうに自分のおすすめお菓子の良さを語っている。


 ……何もしてないはずなのに疲れた。


 俺はソファーから立ち上がり、テーブルから離れる。

 そして、部屋の隅に置いてある作業用の椅子に座る。。



 ……いつからだろう、賑やかなのが苦手になったのは。



 そんな事を思いながら由衣達をぼんやりと眺めていると、智陽が目の前に来ていた。


「何だ」

「ちゃんとお礼が言いたくて。

 私にもう1度、お父さんを探すチャンスをくれてありがとう」


 その言葉の後、智陽は深く頭を下げる。

 俺はそれを「やめろ」と言って頭を上げさせる。


「……見つかるかはわからんぞ」

「わかってる」


 そう言った智陽の目はいつもと違い、寂しそうに見えた。



 ……両親が居ない辛さは、俺だってよくわかる。



「……機会があれば、俺も知り合いに聞いてみる」

「本当?」

「有力な情報は期待しないでくれ。

 ……ただ。俺もちゃんと協力して貰うからには、お前のお父さん探しも協力する」

「……ありがとう、本当に」


 その言葉を最後に、俺達の会話は終了した。


 部屋の中には、テーブルに居る3人の話し声だけが聞こえる。


 すると智陽が「1つ聞いて良い?」と聞いてきた。


「何だ」

「私を助けてくれるとき、あの男達に力を使ってたけどいいの?」

「……バレたら怒られるだろうな。だが状況が状況だったから大目に見てもらえるだろう。

 そもそも男達の話なんて誰も信じないだろうし、警察も結果から黙認してくれるだろう」


 実際相手は神遺物を盗んで、魔術で改造されたスタンガンを持っていた。

 それが何も知らない一般人であろうと、罪に問われることだ。


 俺の行動は正当防衛で処理されるだろう。


 ……まぁ、そうなるように考えて動いていたが。


 だがまぁ、言えるとするならば……。


「つまり、智陽が喋らなければ問題ない」

「共犯……ってこと?」

「そうだな」


 そう言い切ると、智陽はクスクスと笑いだした。


 そんな智陽を見て、俺は「怖くないのか」と聞いてみる。


「あんな目にあって。俺に関わってると、

 いつか冗談じゃなく、本当に死ぬような目に合うかもしれないぞ」

「……怖いよ。今もたまに思い出して怖くなるときがある。

 でも、みんなといると怖くない。怖いと思ってる暇が無い。

 むしろ戦いから離れて、1人でいる方が怖い。家に誰もいないし」


 そう答えた智陽は、まっすぐと俺の目を見ていた。

 さっきの寂しそうな雰囲気は、もう感じない。


「……そうか。

 まぁ、騒がしいのが2人もいると余計なことを考えてる暇なんてないよな」


 智陽が「そうそう」と返事をする。


 ……本当に、この部屋は騒がしくなった。


 そのとき、「2人共〜!何話してるの〜!」という由衣の声が部屋に響いた。


 その声に、智陽は「別に」と返事をする。


「これ旨いぞ!2人も食べてみなって!」


 そんな志郎の声も部屋に響く。


 やはり志郎もそこそこ声が大きい。

 ……というか、シンプルな声量なら由衣より大きい。


 智陽がその言葉を受け、ため息をつきながら返事をする。

 そして俺に背中を向けて戻って行った。



 その背中を見て、俺も仕方なくテーブルに戻ることにした。

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