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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
第1章 1年生  1節 再会
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第008話 それは嫌だ

 保健室のやり取りから数日後のホームルーム。

 日当たりが良い俺の席はとても心地よく、担任の話を若干聞き流しながらぼんやりしていた。



 由衣(ゆい)日和(ひより)はあれから話しかけてこなくなった。

 その代わり、他に面倒なことがあったのだが。


 あの戦闘の次の日。

 学校で派手に戦闘したおかけで、生徒指導担当の御堂みどう 長治ちょうじ教頭を始めとした教師陣に呼び出されて酷く問い詰められた。


 しかし、途中で理事長の金城かねしろ 斉明なりあきという男が俺を庇い場を収めてくれた。

 「怪物と戦い、校内の安全を守ってくれているから目を瞑ろうじゃないか」と。


 俺としては助かったのだが……あの理事長は何者なのだろうか。

 入学面接のときにも会ったが、いまいち何考えているかわからない人だ。


 そして、何か知ってそうな人は現在この街にいないので聞くことができない。

 まぁ……これは帰ってきたときに覚えていたら聞くことにすればいい。



 そのとき。誰かが俺の机の前に立ち、手を置いた。

 面倒なので俺は寝てるフリをする。


 するとその誰かは「まー君〜!?」と言いながら俺の肩を揺する。

 ……由衣あいつだ。


 無視するともっと酷い目に合う気がしたので、仕方なく目を開けて答える。


「何だ。もう関わらないと言っただろ」

「そんなこと言ってない!無理に話を聞こうとするのをやめたの!それに今は怪物なんて関係ないし……というか先生の話聞いてた?」


 担任の話は聞き流していたから記憶に残っていない。正直無視したい。

 しかし、無視をすると余計面倒になりそうな気がする。


 それに確かに今はホームルーム中で澱みも堕ち星も関係ない。

 ……逃げるのは無理そうだ。


 仕方ない、今回ばかりは話に付き合うか。

 そう思い俺は黒板に目を向けて、書いてあることを読み上げる。


「遠足の班決め……だろ。それがどうした」

「どうしたじゃないでしょ。話やっぱり聞いてなかったでしょ」

「……何だ」

「班。どうするの?」


 決めてるわけないだろ。ずっと自分の席に座っていたのだから。

 というか遠足なんてどうでもいいというのが本音だ。


 そう思いながら由衣の方を見る。


 少し頬を膨らませ、腰に手を当てている。


 ……怒ってるな、これ。

 何で俺は怒られているんだ。


 仕方ないので俺は事実を口にする。


「決めてないが。それがどうした」

「どうしたじゃないでしょ。……まー君、そんなに会話下手だった?」

「下手とは何だ」

「じゃなくて、決まってないんでしょ?私と組むかなぁ〜と思って誘いに来たの」


 余計なお世話だ。

 そもそも、関わるなと言った相手となぜ遠足の行動を共にしなければならない。


 というか、こいつと同じ班になると凄く疲れる未来が見える。

 それは勘弁して欲しい。


 どうにかして断る言い訳を考える。

 しかし、由衣は待たずに畳み掛けてくる。


「私と組むのが嫌なら、他の人と組む?

 でもまー君、相手が私だからいいけど、他の人だとその態度はダメだと思うよ?」


 それはそれで嫌だな。しかし事実であることは間違いない。

 つまり今の俺はこいつと同じ班になるか、赤の他人と同じ班になるかを選ばなければならない。


 ……どっちも嫌だな。


 どうにかならないか考える。


 そしてすぐに3つ目の選択肢を思いついた。

 これなら両方とも避けられる。


 しかし、その考えを口にするよりも先に由衣が口を開いた。


「あ、遠足休むのはなしだよ?別に休んでも私はいいけど……多分理由を聞いたら先生に怒られるよ?」


 ……何なんだ今日のこいつは。何でこんなに強気なんだ。


 3つ目の選択肢を潰された以上、どちらかを選ばなければならない。

 俺は仕方なく、まだマシな方を選ぶことにした。


「……お前と班を組めばいいんだろ」

「言ったね〜?じゃあ、決まりね!」


 そう言うと由衣は俺の席から離れて黒板前で椅子に座ってる担任のところへ行く。

 嵐は去った。俺はもう1度目を閉じる。


 本当は行きたくないし、由衣と行動するのもあまり気が進まないが仕方ない。


 というか、遠足先には澱みも堕ち星も出ないだろう。

 そう考えると少しだけ気が楽になった。



 しかし、数分経っても由衣が帰ってこない。

 教室の中は、生徒が盛り上がる声が響いて由衣の声はかき消されている。


 少し気になって目を開けると黒板前でまだ先生と話してる姿が見えた。

 ……面倒事の予感がする。


 だが放置するのもあれなので、自分の席から立ち上がって黒板前に移動する。

 そして、由衣の背中に「何してるんだ」と言葉を投げる。


「あ、まー君。いやね、2人しかいないのは流石に駄目なんだって」

「2人?……お前、他には友達いないのか?」

「いますけど〜!?」

「じゃあ、なんで2人だけなんだよ」

「いやそれは……」


 由衣は口ごもる。

 さてはこいつ俺と班を組むことに集中していて、他のことは何も考えていなかったな?


 俺はため息をつきながら、由衣に質問する。


「じゃあ、どうすんだよ」

「だから……どうしよかな……って……」

「お前本当に何も考えなかったのかよ」

「いやだってぇ……」

「私、余ってる」


 そこに話しかけてきたのは1人の女子生徒だった。


「えっと……智陽ちゃん、だよね?いいの?」

「うん。余ってるから」


 その会話の後、由衣は「タムセン!」と叫んでからまた担任と話を始めた。

 そして女子生徒の名前は華山はなやま 智陽ちはるというらしい。


 しかし、担任と由衣の話を聞いているとまだ駄目らしい。


「つまり、4人だったらいいんだけど、3人だったら1人ずつ別の班に入って欲しいんだって〜。……どうする?」

「どっちでも」

「お前が決めろ」

「ん〜……。4人にするならどこかの班から1人引き抜いて来たらいいって言われたけど……」

「じゃ、私が入ったら解決するよね?」


 そこに話しかけてきたのは、また女子生徒だった。

 ……女子ばっかだな。まぁ別に何でもいいが。


 そんな彼女に、由衣が「麻優ちゃん!?」と言葉を返した。


「え、でも桜子ようこちゃん達と一緒の班じゃなくいていいの?」

「いやぁ……男子3で女子4だからさ。由衣ちゃんの班に入った方が良いかなって」

「麻優ちゃん……ありがと~~~!!!

 タムセン!それならいいですよね!!」


 由衣はそう言いながら、麻優と呼ばれている女子生徒を連れて、担任と会話を再開した。


 女子生徒の名前は長沢ながさわ 麻優まゆというらしい。

 どうやら由衣と仲はいいようだ。


「これで4人になったから、問題はないよね?」

「うん!麻優ちゃん、本当にありがと〜!」


 そんな2人の言葉が聞こえてくる。

 すると、華山が口を開いた。

 

「ねぇ、あの2人って陽キャ?」

「……長沢 麻優は知らないが、白上 由衣は少なくともうるさいタイプだ」


 俺の言葉を聞いた彼女がため息をついた。

 恐らく、俺と考えていることは同じだろう。


 「《《賑やかな》》遠足になりそうだ」と。


☆☆☆


 終礼が終わり、俺は足早に教室を出る。

 今日は特に由衣に絡まれる気がしたから。


 すると、下駄箱で靴を履き替えるときに「凄く急いで帰ろうとするね」と1人の女子生徒が話しかけてきた。


「お前……」

「長沢 麻優。さっきは話せなかったからさ。せっかく同じ班になったから少しだけお話したいなぁ〜って」


 やっぱりこいつも由衣と同じタイプの人間か。


 面倒に感じた俺は言葉を返さずに、靴を履き立ち去ろうと歩き出す。

 こういうタイプのやつとは関わらない方が時間の無駄にならない。


 しかし、彼女もまた諦めが悪い人間のようだった。


「ちょっと~?陰星(いんせい)君~?無視は酷くない?」


 そんな言葉を投げながら、立ち去る俺を追いかけてきている。

 校門を抜けてもまだついてきている。


 ずっと付きまとわれても困るので、仕方なく「何のようだ」と言葉を返す。


「……誰にでもそんな態度なの?」

「だったら何だ」

「いやぁ〜。噂になってるよ?入学初日に同級生の女子生徒を泣かせた男子生徒がいるって」


 ……身に覚えしかないな。

 でも、俺には《《どうでもいいこと》》だ。


 ……しかし、こいつはそんなどうでもいいことを話すために来たのか?

 不審に思った俺は、探りの言葉を投げかえす。


「だったら何だ。何が言いたい?」

「由衣ちゃんはあなたの昔からの友達なんでしょ?仲良くしてあげなよ」


 飛んできたのは、耳にタコが出来そうなほど聞いた言葉。

 思わず、俺の口からため息が零れる。


 しかし、いくら面倒でも始めた会話は終わらせないといけない。


「お前には関係ないだろ。何だ、由衣に頼まれたのか?」

「それは違うよ。

 ただ、どれだけ仲のいい友達であってもある日突然、永遠に話せなくなる…ってこともあるからさ。後悔しないようにって思ってさ」


 その言葉には重みがあった。


 まるで自分に《《そういう経験》》があるかのように。


「お前、それは」

「話はこれだけ。付き合ってくれてありがとね。

 じゃあまた、学校でね〜」


 そう言い残して長沢は立ち去っていった。



 後悔。



 たくさんある。



 俺はもう、あのようなことはしたくない。



 だから俺はこれ以上増やさないために、2人と一緒にはいられない。

 これが2人にも俺にも最適な答えのはずだ。


 そう自分の中で再び結論付け、俺は長沢 麻優とは別方向に歩き出した。

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